輸入完了後にEPAを適用させて関税還付することはできるか

関税還付とは、輸入・納税申告して関税を支払った後に、何らかの事情でその関税を返してもらうことをいいます。課税評価額を過大申告してしまう等過払いのケースや、本来は関税の減免ができたものの、対応する原産地証明書がなかったり不備があったりしたために関税の減免を受けられず、あとからそれらの特恵関税を適用させて、差額分を返してもらうといった場合が考えられます。

協定本文や施行規則等で関税還付が可能なことを明記している協定もありますが、国によっては事実上、還付は不可能となっていることもあるため、これをあてに先行で輸入手続を完了させて、あとからEPA適用を行おうとしてもできないことがありますので要注意です。

納期が許されるのであれば、輸入申告(納税申告)を保留にし、特定原産地証明書の判定申請に必要な情報を急いで集め、この証明書を現地の通関業者へ直送し、これが届いてからの通関としてもらったほうが関税の減免という側面からは確実といえます。関税還付がうまくいったという例もありますが、国や場合によっては税関やその担当者によって扱いも異なることがあります。

国によっては、関税還付の申請を行ったところ、会社に税務調査が入り、「あらさがし」のような難癖をつけられた挙句に、別件で追徴課税をとられ、関税の還付もできなくなったというようなこともあり、対応には現地の事情をよく確認したうえで細心の注意を払う必要があります。

したがって、また輸入申告が完了していないのであればEPAの適用をまず考え、現地で輸入手続きがすべて完了してしまっている場合には、現地の税務問題に精通した現地スタッフやコンサル、通関業者を通じて、関税還付手続きの可能性について模索していくとよいでしょう。

なお、過去に輸出した分の特定原産地証明書をさかのぼって発行する「遡及発給」については日本が締結しているEPAについては行うことができますので、この点では問題はありません。