返信先: EPAはどの部署が行うべき業務でしょうか


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キーマスター

これは本当に会社によりまちまちです。
専任の担当者を置いている例というのは、貿易の金額や品種が大きく、数多くのEPAの判定申請を行う必要があるようなケースかと思います。

EPAやFTAの貿易協定の実務はやってみないと分からない、というようなことが意外に多いため、おっしゃるとおり、どこかの部署でまとめて行うと、ノウハウが蓄積されて社内での相談窓口にもなることができると思います。

部署ごとに輸出を別個に行っているような場合、EPAの判定依頼の数も限られてくるため、こういう場合にどうしたらよいのか、というような知恵や知識がなかなか蓄積されないという問題もあります。

いったん、判定申請が通ったものについては、インボイスの発行担当が発給申請を行うが業務上はスムーズです。B/Lやインボイスを入手できる立場でないと、発行の際は手続きがスムーズに行きません。したがって、発給は輸出を実際に行う部門、インボイスを発行する部門が行うほうが都合がよいといえます。

会社によっては財務や経理といった部門が原価低減などの目的で全社的に導入支援している礼もあれば、グローバルに展開している企業などでは本社にてFTAやEPAに関する情報や適用支援を一元管理する部署を持っているところもあります。あるいは物流部門や貿易部門、輸出入部門が各個に実際に取り扱っている物品に対して適用を行っている、という例も聞きます。

どちらもメリット、デメリット等ありますが、貴社がこの先のTPPや日EU協定な
どの大型の協定交渉も踏まえ、どのように貿易協定を活用していくのかというスタンスによって部署も決めるのがよいのではないでしょうか。

グループ会社が世界各国に散らばっており、それぞれの間で物流を最適化しているような場合は、関税についても最適化していく必要がありますが、各企業にそれをまかせるのか、全社を一括して見ることでグループとしての相乗効果を見込んだ無駄のない関税最適化を行うのかといったようなスタンスの問題です。現地のことは現地に、というのがほとんどの企業のスタンスですが、貿易協定の難しい点の一つは、輸入する側が恩恵を受けることであっても、輸出側の労力によってはじめてそれが達成される、という点です。どの国でも協定用の原産地証明書の取得には事務工数がかかりますし、それを行う人材がいないこともあります。グループ会社間の取引で自由にまかせていると、輸出側からしてみれば、なぜ自分たちの経費をつかって輸入側企業のために原産地証明書を発行しなければならないのか、ということにもなりかねません。こうした意味で、本社での一元管理というのはひとつの意味があります。

いっぽうで、グループ会社間の物量や、支払っている関税額などについての情報を集約できないような環境の場合は、各社の裁量にまかせねば進まないようなこともあります。

かくいう当社も、複数の国でFTAをはじめとする貿易協定を使っていますが、同じ国でも、経営者が違えば、その関心度や注力度はまったく違うため、ある国のA会社では盛んに活用されているが、B社ではほとんど使われていない、といったことがおきています。

1船で、数百万の関税を支払うことも珍しくないため、これが毎回0になっている会社と、そうではない会社とでは、当然差が出てきます。コスト削減は関税の話だけではないですが、この部分が見えづらいため、見過ごされがちというのが現実です。本社からの指令という形で、グループ間の取引にはFTAやEPAを用いて関税を減免するように、との話であれば適用がスムーズに進むと思われる状況もあります。