TARIC

TARICとは欧州共同体統合関税率、もしくはEU統合関税率、EU共通関税率とも言われます。Integrated Tariff of the European Communitiesの頭文字をとり、略してTARICと呼ばれています。

EUは加盟国間の貿易では、関税は原則的に無税とし、EU圏外の国に対しては、共通の関税を設定する「関税同盟」の形を取っている為、通関行政などのルールで共通化している部分があります。

このTARICもその一つで、関税率決定の要となるHSコードについても、CNコードの名称で、EU域内で共通のものを用いています。

TARIC(EU共通関税)については、以下の欧州議会のサイト内のデータベースで検索することが出来ます。分かっているHSコードの桁数まで入力すると、あとの候補もあわせて検索結果に出してくれますので、必要な番号をクリックすると、関税率が表示されます。

EUのHSコードに相当するCNコードは、HSコードの6ケタに、下位部分2ケタを足した8ケタで構成されていますが、関税率が6ケタレベルで設定されていたり、製品分類そのものが8ケタではなく、6ケタのものもあります。

EUの関税減免ルールは、FTAやEPAといった協定によるもののほか、GSP(一般特恵関税制度)を利用したものがあります。これは開発途上国からEU域内に輸入される物品に対し、関税を減免する措置です。

TARICで関税率を確認する際には、EUへ輸入する物品の原産国にも留意する必要があります。

EUの統合関税率(TARIC)



BOI、拘束的原産地情報とは

BOIとはBinding Origin Informationの頭文字をとったもので、日本語では拘束的原産地情報と訳されています。

EUの関税法典施行の為の一般規定として定められたもので、FTAやEPA、特恵貿易など関税の減免を受けることが可能な貿易を行う場合、実際に申請書類一式をそろえて、いざ輸入通関に望んだ際、現地税関で異なる判断が下された場合、関税の減免を受けることができません。

また取引内容によっては、当局とどこが原産地なのかについての判断が異なることで、取引そのものが成立しなくなる可能性もあります。

EUは27カ国もの加盟国で構成される経済共同体でもありますが、通関行政について各国での判断が異なると、対EUとの貿易取引を行う上で種々の不都合が出てきます。

そこで、あらかじめEU圏内の通関行政ですべて有効となる証明書を取っておくことができます。拘束的関税情報についても、あらかじめ輸出入しようとする商品がどのHSコード(EUではCombined Nomenclature)に該当するか事前に判断を仰ぎ、それを実際の貿易の際に使うことができます。

この原産地情報版ともいえるのが、BOIになります。ただし、これがあるからといって、原産地証明書が免除されるわけではない点に注意が必要です。GSPを使うのであれば、GSP用の原産地証明書が、他国とのFTA協定やEPA協定を使うならそれに対応した原産地証明書が必要となります。



BTI、拘束的関税情報とは

BTIとは、Binding Tariff Informationの略で、日本語では拘束的関税情報と訳されています。
物品がどのHSコードに該当するかあらかじめ伺いを立てて、当局から保証してもらう仕組みのことです。EUのどの国で発行されたものであっても、EU諸国すべてに適用可能で、発効後、6年間有効となります。BTIといえば、一般にはEUのBTIのことを意味しています。

関税額の決定や輸出還付税、輸出入許可の取得有無など、その物品のHSコードが特定されることで事前に準備が可能となります。逆に言えば、税関での通関時点で想定されていたHSコードと全く違う番号として扱われたがために、想定していない関税額がかかったり、別途輸入許可が必要になったり、場合によっては物品の輸入そのものができなくなったということもあり得ます。

BTIを使うことで、こうしたリスクを事前に低減することができます。なお、EU圏内で発行されたBTIは、EUが運営するEBTIデータベースに登録されます。

BTIを発行してもらうのはEUのどの国であってもかまわないと述べましたが、各国ですべて同じ判断が出るわけではなく、例えばA国とB国とでは物品のHSコードへの関連付けが異なってくるケースがあります。ただし、一旦、BTIが発行されればその決定はEU圏内の通関行政に対し、強制力を持ちます。

Binding Tariff Information(欧州議会の拘束的関税情報のサイト)

European Binding Tariff Information (EBTI)
過去に発行されたBTIのデータベース。国別でも検索できる。



日本が関係するFTA、EPAに関わる原産地証明書の発行機関の一覧

FTAやEPAを活用して関税を減免して貿易を有利に進めようとする場合、輸入申告の際に原産地証明書の原紙が必須となりますが、日本から輸出するものについては「経済連携協定に基づく特定原産地証明書の発給等に関する法律」に基づき、日本商工会議所が発行します。但し、日シンガポール協定に用いるものだけは、各地の142の商工会議所が発給機関となっており、Web上にてオンラインで行う「特定原産地証明書発給システム」が使えません。日スイス協定、日ペルー協定では認定輸出者による「自己証明」も可能です(アメリカ式)。

日本からの輸出ではなく、日本へ輸入するする場合は、それぞれの国によって発行機関が異なります。貿易相手がこうした業務に不慣れな場合、発行機関をこちらから教えてあげる必要もあるかもしれません。先方から原産地証明書(CO)が発行されないことには、日本で輸入通関する際には関税の減免は受けることができませんので、注意が必要です。

なお、開発途上国からの輸入する際に特別に安い関税や関税の免除が受けられるGSPによる特恵関税を適用させたい場合は、相手国から、そのGSP専用の原産地証明書であるform Aを発給してもらう必要があります。

日本が関係するFTA、EPA協定国の原産地証明書の発行機関
原産地証明書の発行機関
シンガポール 税関
メキシコ 経済省
マレーシア 国際貿易産業省
チリ 製造業振興協会(SOFOFA)、チリ商工会議所
タイ 商務省
インドネシア 商業省
ブルネイ 外務貿易省
フィリピン 関税局
スイス スイス連邦関税管理局
ベトナム ベトナム商工省
インド インド商工省
ペルー 通商観光省


特恵基準のBとは

特恵基準とは、特定の国同士で協定を結び、関税の免除や削減などをはかるFTAやEPAなどを使う場合に、製品をカテゴライズするための基準です。

具体的には、原産地証明書の記載事項のなかに、特恵基準がAかBかを指定する欄があります。また適用しようとしている協定に規定がある場合は、この欄にはACU(累積)、DMI(デミニマス規定、僅少の非原産材料)といった救済規程を用いた場合、それぞれの記号も記載するルールになっています。

特恵基準のAとBの違いは次の通りです。

特恵基準のAとBの違い
A 完全生産品 原材料もすべて自国でまかなわれた物品のことで、例えば自国で獲れた魚や農産物、自国の鉱山で採取された鉱物などが相当します。
B 非原産材料を使用して自国で生産された品 ほとんどの物品、特に工業製品はこのBに相当します。部品の一部分だけを海外製のものを使った、原材料の一部を外国産で協定とは無関係のものを使っている等、様々なパターンが考えられますが、FTA協定やEPA協定とは、この非原産材料を如何にして原産材料にするのかという双方での取り決めともいえます。非原産材料と使っても、どのような場合に「原産性」が付与されるかを定めたルールを「原産地規則」といいます。

特恵基準のBはこの非原産材料を使用して自国で生産した製品のことを指しています。



FTAのデメリット

FTAは両国の貿易を促進させることを目的とするものであり、基本的にはFTA協定を結んだ国同士で関税をかけない、もしくは関税を減免するなどを主目的としています。

関税の減免というとピンとこないかもしれませんが、例えば、多数の部品を1000万円ほど輸出するとして、現地の税関にて関税が20%かけられると、この時点で1200万円となってしまいます。また、現地に入る品物には関税のほかにも、通常、付加価値税やその国が定める各種税がかけられるため、輸送費用も鑑みると、国内売りよりも価格競争力がなかなか出にくくなります。

FTAはこうした関税率をゼロもしくはそれに近づけようとするものであり、デメリットがなさそうですが、現状、多くの国では自国の特定の産業を保護する為に、外国からあまりに安いものが入ってこないよう、関税による障壁や関税以外の規制など(非関税障壁)を行っています。

FTAは双方の利益に資するべきものですが、仮に全品目についてすべて関税率をゼロにすると、貿易上大きな偏りが出てくることはもちろん、自国での特定産業の担い手がいなくなってしまったり、今後国の基幹産業となるべく育成していた産業が育たなくなったりといった問題も出てきます。

したがって、FTAのデメリットとは、協定内容によっては、今まで守られていた自国の産業が衰退する可能性やある分野では自国で特定の産業が育たなくなる可能性があるという点です。

手厚い保護なしでは存続し得ない産業を丸ごと切り捨て、国際的な競争力を維持できるものだけを優遇するという考え方もありますが、失業率の向上や国内産業の空洞化など弊害も多く、食糧の安全保障など一概に数値だけではかれない要素もあります。

また、自国の産業育成や保護のために関税以外にも、法令によって制限をかけることも行われており、FTAの上位版であるEPAとなると、これらの規制緩和や撤廃も含めて交渉を行うため、日本では参入が許可されていなかったり、非常に参入しにくい壁をつくって自国の会社に有利にしていた部分が一気に崩れ、産業によっては会社の倒産などにより、業界の構造が一変してしまう可能性もあります。

どの品物についての関税をどれだけ下げるのか、またどういうスケジュールで下げていくのか、品目によって保護が必要なのでこうした関税の免除の対象からは除外する品目はどれにするのか、といったことを交渉によって決めていきますが、この過程で、自国と相手国との間で様々な物品とその産業が天秤にかけられ、そのどれもについて利害関係者にとっては直接商売に影響する話となります。

日本の場合であれば農林水産省と経済産業省の提示する案が異なるのはこのためです。国によっては、例えば韓国などは農業ではなく、工業品の輸出でもっている国であり、国益の為、ある程度の犠牲もやむなしとの考えで強力にFTAを進めてきています。どちらがよいのか、というのは簡単に結論付けることができず、立場が違えばもう片方の立場を尊重することはできないという構図をしています。FTAの上位版であるEPAの一種であるTPPの議論が難航しているのもこうした背景によります。



FTAのメリット

FTAは、自由貿易協定の名が示すとおり、この協定を結んだ国同士の間で、品目によって関税をゼロにしたり、削減したりするための協定です。

また関税以外の貿易の障壁になるものの撤廃も含めて検討を行っていくのがEPA(経済連携協定)と呼ばれるもので、日本が締結するのはすべてこのEPAになります。

FTAのメリットは、なんと言っても「関税の減免」につきます。世界各国の関税率は、それぞれの国が独自に決めてよいことになっていますが、WTOに加盟する国は、MFN税率(WTO協定税率)といって、世界的に貿易を促進させる為、関税をなるべく低く抑えるというルールに則って参加することになります。

したがって、WTO加盟国の貿易では、もし両国間で特段の協定を結んでいなければ、このMFN税率(WTO協定税率)が適用されることになります。逆に言えば、WTO加盟国同士で特定の協定などを結ばずに、どこかの国にだけ税率を高くしたり、低くしたりということは原則的に許されていません。どこかの国に協定ぬきで低い関税率を設定した場合、他国に対しても同じようにその低い関税率を適用する必要があります。

ただ、MNF税率とはいっても、品目によっては20%を超えるものもあり、これらがゼロになる、ならないは時に大きな価格差となってきます。またボリュームの大きい貿易の場合は、数パーセントでも金額が大きくなる為、関税のあるなしはとても大きく影響します。

FTA協定を結んでいる場合、互いに特に保護が必要と認める品目以外は、交渉によって段階的に関税を削減していくことになりますので、上記で言えば、この20%が協定発効と同時にゼロとなるか、一定の年数をかけて段階的に削っていき、将来的にゼロか、非常に低い関税率になるといった恩恵を享受することが出来ます。



事前教示制度

製品・商品を実際に輸入した場合に、どれくらいの関税が課せられるのかは見積りをはじめ、製品価格決定のための重要な情報の一つです。関税のおおよその金額は、関税表やWorld Tariffなどのデータベースで調べることができますが、問題となるのは、その物品が「何か」という判断が、輸入者(輸出者)と現地税関とで異なってしまった場合です。

関税を決定する為に、ある物品が何であるのかという情報は物品と対応するHSコードを割り当てることで、ある部分までは世界共通で判断が可能ですが、輸出しようとしている物品のHSコードが何かという最終決定権をもつのは、現地の税関です。

FTA協定やEPA協定などを受けようとする場合などは、関税の大幅の減免を見込んで輸出入を行うため、現地税関とHSコードの判定が異なった場合は、協定そのものを適用させることができなくなります。

そうなると、発行済みの原産地証明書も使えない為、一旦、輸入通関で止まってしまうことになりますが、こうしたリスクを回避する為に、事前教示制度を利用する方法もあります。

これは書面によって、事前に税関に対し、輸入(輸出)しようとしている物品が何かの判断を仰ぐ為のもので、一度書面でもらえば、実際の通関の際もその判断が尊重されるため、輸出者(輸入者)と税関の判断が違ったというような危険性を減らすことが出来ます。

EUには拘束的関税分類情報(BTI)というものがあり、輸出(輸入)しようとしている物品がどのHSコードに該当するのか、あらかじめ当局の判断を仰ぎ、通関時に無用な混乱を避けることもできます。

EUの場合はどの国で発行されたBTIであってもEU圏内に対しては有効である為、ある国のHSコードの判断に不満の場合、別の国で判断を仰ぐことも可能です。



form Dの原産地証明書の取得方法

Form DはASEAN諸国間の物品の貿易に使う原産地証明書で、発行機関はASEAN各国にあり、国によって取得方法・申請方法に違いがあります。

現在はより利用しやすくするため、電子化が進んでおり、インターネットを通じてオンラインで発行できる国も増えつつあります。

以下はForm Dの国別の発行機関です。

ASEAN諸国のForm D(原産地証明書)の発行機関
発行機関、組織
インドネシア 各地方の商業省(Ministry of Commerce)地域事務所
タイ 商務省外国貿易局(Department of Foreign Trade, Ministry of Commerce)
ベトナム 商工省輸出入局(Export-Import Department, Ministry of Industry and Trade)
マレーシア 国際通商産業省(Ministry of International Trade and Industry)
フィリピン 関税局輸出調整部(Export Coordination Division, Bureau of Customs)
シンガポール シンガポール税関(Singapore Customs)

ATIGA(AFTA)によるフォームDを発行するASEAN諸国の特徴としては、日本と異なり、原産性輸出前検査がある点です。これは原産地証明書発行の1つ手前のステップで、事前にその商品に原産性があるかどうかを調べる為の予備検査で、国によってかかる日数に違いがあります。予備検査に通った旨の申請をし、正式な原産地証明書発行依頼をすることになります。

この予備検査は、実際には書類上の審査によって行われることが多く、例えば、材料表や製造原価明細、製造工程表、資材・原材料の購買伝票(インボイス)、材料の出所を証明する為のサプライヤーの申告状、工場ライセンス(要求された場合)などの書類です。またこれらの書類を精査した上で、実際に工場や会社へ訪問し、判定する場合もあります。

ただ、この予備検査ではあくまで「製造工程」と「原価構成」に主眼が置かれ、これによって自国の原産性を付与できるか、を判定しています。

なお、発行機関の一覧を見れば分かるとおり、ASEAN諸国の原産地証明書発行は、政府機関が行っています。日本や他の国で商工会議所や貿易協会のような非政府組織が行っているケースと違いがあります。

例:タイでフォームDの原産地証明書を取得する手順

発行機関は、商務省外国貿易局 (Department of Foreign Trade, Ministry of Commerce)で通称、DFTと呼ばれる部署です。

1.まずDFTのサイトで輸出者登録をします。ここでセントラルユーザー名を取得し(輸出入者カード:Exporter-Importer Cardを得る)、原産地証明書発行の手続きに入ります。
< http://reg-users.dft.go.th/>

2.原産性の輸出前検査を依頼
必要な書類を揃え、原産性の輸出前検査を申請します。
HSコードの類が1~24のものについては次のステップでの発行依頼の際にこの輸出前検査を行います。

3.輸出者が原産地証明書の発行を依頼
2の証明書を受け、これを提出することで原産地証明書の発行を依頼できます。

なお、原産地証明書を発行したら、必ず相手方、つまり送り先で輸入通関をするときに、関税の減免を受ける旨の手続きをして、原産地証明書と提出する必要があります。このオンラインで発行が済んだからといってそのまま原産地証明書が輸出先の国で適用されるわけではありません。

せっかくフォームDを取得していても、輸入通関時に原産地証明書が提示できなければ関税減免とはなりませんので注意が必要です。

なお、関税還付の制度を持つ国の場合、一定期間内であれば、原産地証明書を遡及発給してもらい、すでに払い込んだ関税を払い戻してもらう方法もありますが、国によってはこの手法が必ず使えるわけではなく、弊害も伴うことがあるため、関税還付申請せずともよいように輸出者と輸入者の間でフォームDをどのように申請・発行し、受け渡すのか打ち合わせておく必要があります。



原産地証明書と特定原産地証明書の違い

原産地証明書は海外ではCertificate of Origin、もしくは略して単にCO、COOといった言い方をされるため、要求があっても、日本のように特定なのか一般なのかわかりにくいケースもあります。したがって、COのうち、form Dが欲しい、あるいはform Aが欲しいといった言い方で、どの原産地証明書が必要かを特定する必要があります。なお、日本では協定適用のためではなく一般の原産地証明書は、form Bとも言われます。

原産地証明書 特定原産地証明書
Non Preferential COs Preferential COs
一般的な国際間の商取引で、輸入国の法律・規則に基づく要請があったり、契約やL/Cで提出が指定されていたりする場合に使う。日本では各地の商工会議所で発行してもらえる。 二国間や多国間・地域間で結ばれている自由貿易協定や特恵貿易協定、経済連携協定などの適用に使う専用の原産地証明書。協定ごとに種類が分かれている。日本では日本商工会議所のみで発給可能。他国では政府機関から発行されるケースが多い。