台湾のFTAとEPA

台湾は、国連ならびにその加盟国のほとんどから国家として認められておらず、外交関係を有する国も23カ国に止まるため、現在発効中のFTAやEPAは中国を除くと、台湾を国家として承認している国に限られています。ただ、FTA・EPAの締結が主権国家間でなくてはならないというルールはなく、台湾はWTOへも「地域」としての扱いで加盟を果たしており、台湾を国家とは認めていない各国とも国交を持っていることから、今後締結が進んでいく可能性が高いと考えられます。

実現を目指す具体的なFTA・EPA協定として、馬英九政権は、8年以内に環太平洋パートナーシップ(TPP)参加を目指す方針を出しています。二国間のものとしては、シンガポールとはすでに交渉に入っており、インドやフィリピンとも自由貿易協定締結に向けた検討を行うことへの合意が両国との間で行われています。

台湾の通商外交政策は、中国と同地域との政治的・経済的な関係が柱となっており、中国との関係が他の経済圏との関係にも強い影響を及ぼしています。  これは台湾にとって中国は最大の貿易国でありながら、世界各国を巻き込んで、どちらが「中国」なのか長らく争ってきた歴史とも関係があります。

台湾の前政権や現野党の民進党などの立場は、「台湾は中国の一部ではない」「台湾は既に独立国である」との姿勢を貫き、一方で中国側は「中国とは中華人民共和国のことである」「中国は一つ」と主張、台湾の独立に反対しており、もし独立するようなことがあれば武力行使も厭わない姿勢を通してきました。こうした背景により中台関係、いわゆる両岸関係の進展は難航し、台湾と中国との間で他国からの外交承認の争奪戦も行われてきました。
中華人民共和国政府は「一つの中国」原則を主張し、二重承認を絶対に認めない立場を取っているため、台湾を外交承認した国とは国交を結ばないため、台湾を国と認める主要国はないものの、わずかでも外交承認を行ってくれる国を作っていくことが重要であると考えた台湾と中国は、経済援助が欲しい国々を巻き込んで争っていました。
このような状況下、現政権の馬英九総統は「一つの中国(ただし中華人民共和国ではなく、中華民国)」を認めた上で「統一せず、独立せず、武力行使せず」の「3つのノー」を掲げ、経済・文化面から両岸交流の拡大を推進してきました。10年ぶりに再開された両岸対話等を通じ、実務交流・協力が急速に進展し、一つの成果として中国との間に自由貿易協定の一つであるECFA(海峡両岸経済協力枠組協定)の締結が実現しました。

馬英九政権の手がけたECFAが台湾経済にもたらした影響は大きく、この協定により、中国-台湾間で関税の段階的引下げ、投資保護、紛争解決等を含む、中台間の包括的経済連携推進の枠組みを定め、「中台FTA」の骨格となるものが出来上がりました。
馬英九政権の対外政策の柱となっているのは「両岸関係の緩和と国際社会との関係発展を同時並行で進める」というものです。陳水扁時代から大きく方向転換した馬政権は対中、対米関係の改善に腐心し、通商政策としては「輸出競争力の強化」「対中投資の優遇条件の確保」「他国とのFTA、EPA」を進めてきました。

 貿易への依存度が高い台湾は、周辺国のFTA・EPAの交渉状況にも注視しています。特に、韓国の全方位的なEPA・FTA外交に対して、日本以上に危機感を持っており、同政府メディアの発信する情報から「米韓FTAが台湾にもたらす経済的損失について最悪の場合60億米ドル(約4600億円)に達する」との見解や、中韓関係の進展にも大きな危機感を持っていることが伺えます。

世界貿易機関 (WTO) に関しては、Separate Customs Territory of Taiwan, Penghu, Kinmen and Matsu(台湾・澎湖・金門・馬祖個別関税領域)という名称で加盟しています。WTO加盟当初の関税引下げ目標は以下の予定通り達成しており、この加盟によりWTO協定税率(MFN税率)の適用という恩恵を受けることが可能になりました。

台湾のFTAとEPAの一覧

締結国、協定交渉国 状況
海峡両岸経済協力枠組協定(ECFA) 中国と締結。2010年9月発効。中国-台湾間ではECFAほか16の協定を締結。
台湾の締結する経済協定としては最も大きなもので、経済的な意味だけでなく、政治的にも大きな意味を持つ協定。関税の段階的引下げ、投資保護、紛争解決等を含む、中台間の包括的経済連携推進の枠組みを定めたもので、「中台FTA」の骨格となるもの。
台湾・エルサルバドル・ホンジュラス自由貿易協定 2008年1月発効(台湾)、2008年3月発効(エルサルバドル)、2008年7月発効(ホンジュラス)
台湾・グアテマラ自由貿易協定 2005年3月交渉開始、2005年9月署名、2006年7月発効
台湾・ニカラグア自由貿易協定 2006年6月署名、2008年1月発効
台湾・パナマ自由貿易協定 2002年10月交渉開始、2003年8月署名、2004年1月発効
台湾・ドミニカ自由貿易協定 2006年から交渉開始、2012年2月時点では未締結。経過不明。
台湾―シンガポール 交渉することに合意。
台湾―インド 検討を行うことの合意のみ。
台湾―フィリピン 検討を行うことの合意のみ。交渉の前段階
TPP 参加を政府方針として掲げるが、現在のところ交渉参加は実現していない。

台湾に輸入時にかかる関税以外の税金の情報

輸入時には関税のほかにVAT(付加価値税)として5%。
Commodity tax(消費税、物品税):
ゴムタイヤ、セメント、飲み物、板ガラス、オイル、ガス、乗り物、電化製品
Commodity taxがかからないもの:
輸出品、上記課税対象を製造する際の原材料
Trade service fee 0.04%
Harbor Feeなど

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