日本のFTA、EPA

日本のFTA、EPAの概要

日本は隣国の韓国に比べ、EPA(経済連携協定)、FTA(自由貿易協定)交渉の遅れが指摘されていましたが、2013年にはTPP、RCEP、EUといった大きな貿易圏、経済圏との交渉がスタートしました。既に発行済みの協定内容について、日本-インド、韓国-インド間の経済連携協定を比較しても、関税撤廃のスケジュールで日本が不利な品目が目立ち、交渉力の弱さも指摘されていますが、日本はもともと工業製品の多くについて輸入関税を撤廃しているため、品目ごとに進めていく関税撤廃・減免の交渉においては、有力な交渉カードが農産物を除くとあまりないという現状があります。

一方で、ASEAN、タイ、インドネシアなど日系企業の進出が進むアジア諸国との間ではすでにEPAが発効されており、多くの品目で関税の減免を受けることが可能です。

日本企業の多くが、海外に量産拠点を移した為、量産の輸出そのものが日本からではなく、現地量産生産工場から行われていることもあり、日本が経済連携協定を結んでいなくても取引国間でFTAやEPAの恩恵を受けることが出来るのであれば、コスト削減効果をもたらします。

例えば、ASEAN諸国間の取引では基本的に関税を考慮せずに価格設定を行うことが多いですが、実際にASEAN間の関税減免のためのスキームである「ATIGA」を使わなかった場合は、10数パーセント前後かかる品目が多いことから、年間1億円の取引をしているのであれば、ざっと1000万円以上は関税として支払う計算になります。FTA、EPAの活用が時にビジネスの成否を分けることすらあります。

日本のEPAを取り巻く環境としては、2012年末に交渉開始が宣言された日中韓のEPAや、2013年交渉参加後もその是非が問われているTPP、2013年に交渉開始をはじめ早期締結を目指す日本-EUとの経済連携協定、同じく2013年に交渉開始したアジア圏の大貿易圏となる多国間のRCEP(ASEAN、日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドの16カ国)など、ここ1年で特に活発な動きが出てきており、日本の自由貿易協定、経済連携協定の歴史の中では大きな節目とも言えます。

日本側は複数の利害関係国と同時に交渉を行うことで、自国の交渉を有利に進めるという狙いがありますが、これには賛否両論あります。

韓国もEUとの交渉の際、米国との交渉をちらつかせ、EU側の危機感を煽ったとも言われていますが、交渉方針がかなり明確であったという違いがあります。また、内需が日本に比べて極端に少ない韓国とは比較にならないという意見もありますが、同国のように捨てるものと守るものを明確にして強く交渉することがよいかどうかは今後も議論の余地がありそうです。

なお、日本では貿易自由化に関わる協定はFTAではなく、すべてEPAとなります。関税の自由化にとどまらないより包括的な内容で二国間もしくは多国間で具体的な数字として見えてくる経済的な結びつきを強めるというものになります。

日本の協定締結状況

日本では2013年12月現在、13のEPA協定が発効済となっており、交渉段階の協定は8つになります(日中韓、日本-EU、RCEPを入れた場合)。利用頻度が多い協定といえば、日本-ASEANや日本-タイなどが上げられます。

参考:日本の特定原産地証明書の発給件数(経済産業省、PDF)

経済連携協定は、発効済の全協定をあわせておおむね月間12000件から16000件の利用状況です。多い順に見ると、タイ、インドネシア、インド、マレーシアと続き、一番少ないものがブルネイ(毎月1桁台)です。適用を受けるための専用の証明書となる特定原産地証明書は、インボイスの記載単位にあわせて発行することが多いため、一通に複数品目の適用を行うことが多いです。したがって、これは貿易の回数と考えたほうが近いかもしれません。

日本で発効済のFTA、EPA協定一覧

  • 日本・シンガポール JSEPA 2002年11月発効、2007年9月改正議定書発効)
  • 日本・インド JICEPA (2011年8月発効)
  • 日本・インドネシア JIEPA (2008年7月発効)
  • 日本・スイス JSFTEPA (2009年9月発効)
  • 日本・タイ JTEPA (2007年11月発効)
  • 日本・チリ (2007年9月発効)
  • 日本・フィリピン JPEPA、(2008年12月発効)
  • 日本・ブルネイ JBEPA (2008年7月発効)
  • 日本・ベトナム JVEPA (2009年10月発効)
  • 日本・ペルー - (2012年3月発効)
  • 日本・マレーシア JMEPA (2006年7月発効)
  • 日本・メキシコ- (2005年4月発効、2007年4月追加議定書発効、2012年4月改正議定書発効)
  • 日本・ASEAN AJCEP (平成20年12月1日(日本、シンガポール、ラオス、ベトナム、ミャンマー)、平成21年1月1日(ブルネイ)、同年2月1日(マレーシア)、同年6月1日(タイ)、同年12月1日(カンボジア)、平成22年7月1日(フィリピン)発効)

日本が交渉中もしくは調整、研究中の協定

TPP(環太平洋パートナーシップ)
日本は2013年7月から交渉に参加。もともとはシンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイによるP4からはじまり、これに米国、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアが参加して9カ国の交渉となる。その後、メキシコ、カナダが加わり11カ国となり、日本が加わったことで、12カ国の多国間交渉となった。
交渉内容が非公開になっている為、各国の主張などの詳細までは明らかになっていない。
実現した場合、全世界のGDPの3割強~4割近くをカバーする巨大な経済圏となる。
日本・トルコ
2013年7月、共同研究発表。2014年春に交渉開始で合意。
日本・韓国
2003年12月にEPA交渉を開始。2004年11月以降事実上、交渉中断中。平成23年5月、交渉再開に向けた事前協議を継続。二国間では進展が無いが、日本-韓国の関係する協定としてはRCEP(アジア圏16カ国)の交渉が開始された。
日本・GCC
交渉継続中。(2006年正式交渉の開始に向けた準備会合を開始。交渉継続中だが、2007年以降、進展はない)※バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦の6ヵ国から成るGCC(湾岸協力理事会)諸国とのFTA構想。
日本・オーストラリア
交渉継続中。2007年から交渉開始。直近では2012年6月に第16回目の会合。
日本・モンゴル
交渉継続中。平成24年6月、第1回会合実施。2013年12月現在で第5回まで交渉会合実施。
日本・コロンビア
交渉中。2011年EPA共同研究を早期に進めることで一致。その後、2012年12月に交渉会合第1回目が実施され、2013年11月時点で第3回交渉会合が実施。
日中韓
2012年11月20日、交渉開始。2009年10月の日中韓サミットにて,産官学共同研究の立ち上げを目指す合意。共同研究終了。2012年、日中韓FTAの年内の交渉開始につき一致。
日本・カナダ
交渉中。2011年2月、共同研究を開始することで一致。2012年3月共同研究終了。2012年11月26日~30日、第1回交渉実施。2013年11月時点で、第4回交渉実施。
日本・EU
交渉中。欧州議会は、2012年10月25日交渉開始を決める決議。※EUが日本とEPA交渉を開始するには、加盟27カ国すべての承認が必要。
東アジア地域包括的経済連携(RCEP)
交渉中。2013年9月に第2回目となる交渉が実施された。直近では、2012年8月,ASEAN+FTAパートナー国経済大臣会合にて本年11月に交渉を立ち上げるために必要な作業等について議論された。2005年4月,中国の提案により,東アジア自由貿易圏構想(EAFTA「イーフタ」,ASEAN+3)の民間研究開始。2007年6月,日本の提案により,東アジア包括的経済連携構想(CEPEA「セピア」,ASEAN+6)の民間研究開始。両パターンでの包括的経済連携の可能性を模索。2012年11月20日、交渉の立ち上げを宣言。これによると、2013年早期に交渉を開始し、2015年末までに交渉完了を目指す。
ASEAN諸国、日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インドの合計16カ国。TPPには参加していない中国や韓国、インド、一部のASEAN諸国にとっては大型の多国間交渉となる。

輸入時にかかる税金や関税以外の税制

輸入時には関税のほかに消費税5%。

日本のFTA、EPAに関わる情報ソース

外務省‐経済連携協定(EPA)/自由貿易協定(FTA)

日本からの輸出でEPA/FTAを利用する(経済産業省)

FTA/EPA、WTO(JETRO海外ビジネス情報)

特定原産地証明書発給申請の手引き(日本商工会議所)

EPAに基づく特定原産地証明書発給事業(日本商工会議所)