累積(Accumulation, ACU)に関する規程は多くのEPA協定やFTAに見られますが、これも原産地規則として単独で使われるルールではなく、「関税分類番号変更基準(CTCルール)」や「付加価値基準(VAルール)」に対して補足的に使われたり、条件を満たすことが出来ない場合に使われる救済規程の一つです。
端的にいえば、協定を結んだ国同士であれば相手国の原産品も自国の原産品扱いに出来るというものです。これを使うと、例えば部品と完成品が同じHSコードになってしまう物品でも、相手国から調達した部品を使うことで、CTCルールの条件を満たすといったことも可能となります。
但し、多国間協定の場合にこの救済規定を使う場合は注意を要します。例えば、日本とASEANとの間で締結されている日アセアン協定の場合で付加価値基準の補足として累積を使う場合で、ASEAN諸国の複数国から部材を調達して物品を製造する場合、「原産」なのか「非原産」なのかは、各国ごとに行います(※ASEAN諸国内の付加価値だけをまとめて計上するわけではありません)。
仮に日本国内で製造する場合、調達部材がそれぞれASEAN諸国の原産資格を得たものならば、それらもすべて原産品として扱うことが出来ます。生産拠点が複数国にあったり、製品と部品を往復するような貿易をしている倍には特に重宝します。
なお、この規定を使う場合は、相手国の原産品であることを証明するため、相手国発給の特定原産地証明書のコピーなどを証拠書類として入手しておく必要があります。
自由貿易協定や経済連携協定のほとんどにはこの累積についての規定が設けられていますが、適用の為のルールは協定ごとに定められている為、協定の該当箇所を確認して活用する必要があります。
累積の種類
モノの累積(相手国で作ったものを自国で作ったものとみなす)と、生産行為の累積(他の生産者が行った生産を自分で行った生産とみなす)があります。
累積基準には、概ね次の「部分累積」、「完全累積」、「純粋累積」の3つがあります。
部分累積:中間財の特恵原産の有無にロールアップかロールダウンテストを採用する方式。
完全累積:中間財の特恵原産の有無に、ロールアップ・救済テストを採用する方式。
純粋累積:FTA域内付加価値のより正確な算定に役立つ方式だが、企業側に過大なコスト負担を強いるデメリットがある。例:NAFTAの自動車北米コンテントのトレーシング方式。
完全累積が救済措置としては最も有利なルールとなります。