FTA、EPAに関連した情報を発信しているサイトです

このサイトは、世界各国のFTA(自由貿易協定)、EPA(経済連携協定)、PTA(特恵貿易協定)、CU(関税同盟)といった通商協定や貿易協定の情報をまとめた専門サイトです。なお、日本が現在締結している協定で関税減免が盛り込まれているものは、FTAの上位版ともいえるEPAとなります。国によってはFTAを日本のEPAと同様のレベルで捉えていることもあるため、両者の境界は曖昧です。

FTAやEPAは関税の全面的な撤廃や品目ごとの撤廃、減免、削減などが盛り込まれている協定ですが、世界の各国間で締結されている協定の中には、これら以外にも関税の減免や協定国間での貿易促進を狙った協定も存在します。ここでは広い意味での貿易自由化や貿易促進に寄与するタイプの協定の情報を国や地域ごと、協定ごとに紹介していきます。また、関税についての基礎知識もまとめています。

TPPをはじめとする経済連携協定や自由貿易協定が国益に寄与するのか、食料の安全保障上の視点、国内産業保護の視点など多様な見方があります。当サイトでは貿易にたずさわる実務担当者の視点にて、実際に協定の適用を行う場合に焦点をあわせて情報発信しています。

こうした協定は、関税の削減、低減などを輸出入を行う企業や個人にとって価格決定やコスト削減、より直接的な利益につながる要素ですが、多くの取引ではこうした協定が必ずしも活用されているわけではありません。実際のところ、こうした協定の存在が知られていないこともあります。日本では締結済みのすべての経済連携協定の利用は月間15000件前後の申請がありますが、貿易件数から比べるともっとあってもおかしくない数字です。

せっかく協定が結ばれても、協定専用の原産地証明書を輸入通関の際の提示できなければ、通常のMFN税率を支払うことになります。
TPPやRCEP、日EUをはじめとする大型の経済連携協定の交渉が開始されましたが、物品の貿易でこれらが使えるものになるかどうかは、タリフラインごとの関税率の譲許もさることながら(どの品目の関税率をどういうスケジュールでどこまで下げるのか、ということ)、どのような原産地規則が採用されるのか、という点に尽きます。貿易協定による特恵税率を受けようとする場合、それ専用の原産地証明書が必要になりますが、どれも協定で取り決めた「原産地規則」を満たした物品にのみ発行されるものです(満たしているかどうかは基本、自己申告ですが、あとで検認と呼ばれる監査のようなものがあるケースもあります。)。

FTA、EPAの判定申請を実務でやっている方ならお分かりかと思いますが、日インド経済連携協定や日メキシコ経済連携協定のように、CTC基準VA基準の双方を原産地規則に盛り込まれると、適用する上でのハードルがぐっと上がります。実務上、VA基準の計算書を作る場合、原価計算書などの原価構成がわかるものが必要ですが、この中で使われている原産性の割合を見ていくことになります。「原産性がある」として計算していく材料や部品にはすべてそのエビデンスが必要になるため、エビデンスがないものは逆に非原産部材扱いになり、計算上、基準を満たすことができなくなります。

工業製品の多くは、一次サプライヤーだけでなく、二次サプライヤー、三次サプライヤーと、五月雨式に多くの部材メーカーの協力で製品が仕上がっています。購入部品が日本製であるという証明も、部品メーカーに依頼してもなかなか一筆もらうことが難しい、というケースが多々あります。この場合も100%日本で製造しているのに、ある部品について日本製であるという証明がないため、基準値を満たすことができなくなり、原産地証明書の判定依頼ができないということになります。

実際に使う場合に時としてハードルとなるこうした問題はあるにしても、関税減免で受けることができる恩恵は非常に大きいものとなります。

例えば現地港までの輸送費と保険費用込みで1000万円の機械を海外に輸出することが決まり、この機械がある国では20%の関税をかけられている場合、現地側で受け取る際には、単純に1200万円となってしまいます。通常はこれらに付加価値税(VAT)やその国の税制によるその他の諸税がかけられるため、輸送費を差し引いても、よほど技術的な優位性があるか、輸出先の国では製造不可能であり他国からも入ってこない物品であるか、原価が安いか等の理由がなければ、各国の企業と競争していくのは難しくなってきます。

ところが、ここで輸出先の国との間にFTAを締結しており、その機械については今年度から関税が撤廃となる、ということであれば価格の20%分である200万円が浮くことになります。こうした恩恵があれば、今まで価格的な理由から輸出が難しいとされていた製品も輸出販売の活路が見出せるかもしれません。

関税は、企業の売り上げや利益に関係なく、物品が国境をまたいで動くたびに掛かってくる間接税です。このため、思うように利益が出ていないときほど、企業利益を圧迫します。とくに同一国内での現地調達が難しい量産生産拠点は、毎月、その材料や部品の多くを輸入に頼らざるを得なくなるため、気づかないうちに輸送費とは比較にならないほど大きな費用を支払っていることになります。

ASEAN域内に製造拠点をつくり、ASEAN域内のサプライチェーンを利用してほとんどの材料と部品をASEAN諸国から調達しているにも関わらず、フォームDの存在を知らず、毎月600万円もの関税を支払っていた、なんていう笑えない話もあります。ただし、この例のように、日系企業でも海外に多くの製造拠点を設立してグローバルなサプライチェーン網を構築しているようなケースでは、日本から輸出する材料や部品よりも、海外の企業間・拠点間でやり取りされる物量のほうがはるかに多くなります。

基本、海外に製造拠点をつくる日系メーカーにとっては、製造に使う多くの物品がどれだけ現地調達化できるか(製造コストの低減)、という点と完成した製品の輸出先で関税がかからないか(間接費の削減)、という点です。業界・業種によってこの日本-海外、海外-日本、海外-海外における部品や製品のやり取りはかなり異なり、容易に説明できないほどに複雑化していますが、日本市場を主戦場とし、海外で物品を製造するというような業種以外は、日本を「基点」と考えた貿易協定だけでは企業内のコスト削減、価格競争力の獲得にはつながりません。

このサイトではこうした協定の情報のほか、可能な限り、実際の協定を活用するための情報も公開していきます。FTAやEPA活用のネックの一つとなっているのが、その手続きや実務がよくわかりにくいという点です。仕組みは決して難しいものではないのですが、専門用語や独特の考え方、協定独自のルールや協定外のルールに影響を受ける場合もあり、幅広く情報収集を行う必要があります。各記事にはなるべく英語か日本語で読める参考サイトや情報元になったサイトも紹介していきます。