スタンドスティル条項|stand still

貿易協定や関税分野で使われるスタンドスティルとは、関税を現在の率から上げないことを約束するためのもので、自由貿易協定や特恵貿易協定の条文の中に設けられることがあります。stand still条項とも表記されます。

関税を下げる約束ではなく、これ以上は上げない約束というと一見奇異に感じますが、これには以下のような背景があります。

一般に、関税は各国で自由に設定することができる建前ですが、世界貿易機関(WTO)に加盟する160カ国の間では、WTOで合意されている上限関税率の範囲内ということになっています。もちろん、関税率をゼロにすることは自由ですが、一旦下げた関税率であっても、これらを拘束する条約などを結んでいない場合、その国にて上限関税率の範囲内で再度上げることも可能です。

これは自由貿易協定を結んでいる国であっても例外ではないため、一旦条約で関税を下げる取り決めをした場合、互いに再度その関税率を上げることができないように、協定条文の中にこのスタンドスティル条項を盛り込みます。また、これに関連し、MFN税率が貿易協定等の税率が安い場合、MFN税率を適用させる等の取り決めを結ぶ場合もあります。

特恵貿易や自由貿易協定などは基本的に通常の関税率となるMFN税率よりも安い税率にすることで貿易を活発化させようとする狙いがありますが、各国にとって保護したい品目もあり、そうした品目については関税率が下がるばかりではなく、状況によってあがる場合があります。こうした場合の防波堤の役割を果たすのがスタンドスティル条項というわけです。