ベトナムのFTAとEPA

ベトナムは2007年にはWTOへの正式加盟が実現し(150番目の加盟国)、今まで個別協定を結んでいなかった国との取引においても最恵国待遇が約束されることとなり、市場アクセスも格段に向上しました。

ベトナムとの貿易では、条件を満たすことでASEANの締結しているFTA/EPA協定を使うことができます。また、ASEAN諸国としては3番目となるEUとの単独交渉も開始されました。これはEUがASEANとの交渉を諦め、ASEAN諸国とはそれぞれの国ごとに交渉を行う方針に切り替えたことと関係しています。
EUの他、直近では韓国、ロシア、EFTA、TPPと自由貿易協定締結に向けた動きが活発化しています。

ASEAN加盟国10カ国のうち、遅れて加盟したCLMV諸国と呼ばれる4カ国の中では経済的に進んでおり、日系企業も進出しています。ただ、ASEANが締結する協定を使う場合は、ASEAN諸国の中では、関税率の低減スケジュールが緩やかで、ASEAN6と同じ感覚で用いると、関税率がまだ高いことがあり、事前確認が必要です。ベトナムのASEAN内での譲許がこうした状況なため、協定を適用すると逆にMFN税率よりも高くなってしまう逆転現象や、適用してもあまりメリットがないことがあります。ASEANの協定でも2014年以降は、多くの工業品目で低減が進んでいくため、長期に取引が継続する場合はコストメリットが目に見えてあらわれてきます。

WTOに長らく加盟していなかった為、それ以前に締結した貿易協定は、例えば米国との通商協定のように、WTO加盟国と同等の関税率、つまりMFN税率を適用するというもの等、関税率を安くするといっても現在のEPAやFTAのような大幅な関税率低減を約束するものではありませんでした。90年代から2000年代初頭にかけて、各国と二国間の通商協定を結んできましたが、FTA協定への取り組みが本格化したのは、WTOに加盟してからです。

また、ベトナムの所得の関係で開発途上国に該当する為、ベトナムからGSP(一般特恵関税制度)のスキームを適用している国へ輸出する場合、その国で関税がかからない、もしくは非常に安く設定されていることがあります。

ベトナムのFTA締結国、交渉国

ベトナムのFTA締結国、交渉国の一覧
締結国、交渉国、協定対象国 状況
AFTA 1995年、7番目のメンバーとして加盟。1996年に発効され、ベトナム-ASEAN間の関税が0~5%に引き下げ。
ベトナム-日本(JVEPA) 2008年署名。2009年発効。ベトナム側は輸入額の88%を10年で関税ゼロに。
ベトナム-米国 2001年発効。ベトナムがWTO正式加盟前であったため、両国相互でMFN待遇、内国民待遇の適用が条項に含まれる。
ベトナム-チリ 2011年発効。WTOに通報なし。
ベトナム-EU 2012年10月交渉開始。2014年締結を目標に進められる予定。
ベトナム-EFTA 交渉中。2012年3月
TPP 2009年より交渉開始。WTOに通報なし。
ベトナム-スイス 共同研究中。2010年~
ベトナム-韓国 2012年から交渉開始
ベトナム-ロシア 2013年から交渉開始で合意。

ベトナムで適用可能なASEANとの締結国、協定内容

締結国、協定国、地域 状況
ASEAN自由貿易地域(AFTA) 1993年に共通効果特恵関税(CEPT)発効、2010年ASEAN物品協定(ATIGA)発効
ASEAN-日本 2008年発効(但しインドネシアは未発効。)
ASEAN-中国 2003年タイEH(アーリーハーベスト)発効、2005年関税引き下げ開始、関税撤廃はASEAN6で2010年、CLMVで2015年。2011年修正議定書発効。
ASEAN-韓国(AKFTA) 2010年先行加盟国で関税撤廃(ベトナムは2016年、カンボジア、ラオス、ミャンマーは2018年)
ASEAN-インド(AIFTA) 2010年にインド、タイ、マレーシア、シンガポール、ベトナム、ミャンマー、インドネシアで発効、2011年にブルネイ、フィリピンで発効。2013年末に関税撤廃予定(但しフィリピンとCLMV諸国は2016年末)
ASEAN-オーストラリア-ニュージーランド
(AANZFTA)
オーストラリア:2010年1月
ニュージーランド:2010年1月
ブルネイ:2010年1月
ミャンマー:2010年1月
マレーシア:2010年1月
フィリピン:2010年1月
シンガポール:2010年1月
ベトナム:2010年1月
タイ:2010年3月
ラオス:2011年1月
カンボジア:2011年1月
インドネシア:2012年1月

ベトナムに輸入時にかかる関税以外の諸税

VAT(付加価値税)10%、5%またはゼロ

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