互恵関税率は英語ではRTR、The Reciprocal Tariff Rateともいいます。原産地証明書の名称からフォームE(form E)とも呼ばれる中国とASEAN間で締結されているFTAであるACFTAで見られる関税率で、端的に言えば、自国側で関税を大幅に下げる約束をしている品目であっても、相手側で関税を下げないなどの措置がとられていたり、低減の約束をしていなかったりする場合、タリフスケジュール(関税をどのようなスケジュールで低減するかを書いた表)に記載されている自国側の安い関税率を適用しなくてもよいという規定です。
実務上、すべての交渉項目で妥結に至らなくとも(特に交渉が難航しそうな物品などについて)、こうした互恵関税率を設けることで、双方で主張する低減スケジュールが異なるなどの意見の不一致があっても、すぐにでも運用開始が可能となります。
同様に、枠組み協定や暫定協定などもすべての交渉内容で合意がなくとも、合意ができた部分から運用していくという実利を取った仕組みです。