FOB条件は貿易においてもっとも一般的な取引条件の一つで、販売する価格に、梱包費用、輸出港(輸出空港)までの輸送費用、集荷費用、輸出国側での通関費用などが織り込まれている価格となります。一見、明朗会計に見えなくもないですが、FOBコストの実態というのはかなり見えづらく、数量による変動も大きいため、算出には意外に手間がかかります。
また、はじめてFOB価格を算出する場合、「こんなにかかるのか」と驚かれる方も少なくありません。これは貨物量や荷姿、貨物の種類にもよるのですが、自分で箱詰めできるレベルの量で物流業者へ持ち込んだり、集荷してもらったりというものと、コンテナにバンニング(コンテナへ荷物をつめて固定し、封をする)するような貨物とでかなり金額に差が出てくることとも関係していみあす。
なお、FOBといった場合は費用に何が含まれているかが明確になるだけでなく、「危険負担」がどこで移転するかも決定付けることになります。
FOB費用は荷物の重量と容量によっても変わります。また、危険物や国内での出荷時に検査が要求されるような物品についてもそれらを費用に織り込む必要があります。
製品単価が高くない場合は、製品価格の合計よりもFOBコストのほうが上回る例もあります。
フォワーダー利用の場合のFOBコスト内訳
エアー輸送の場合の例:
- 通関料(大額と小額の2パターン)
- 陸送運賃(国内輸送費用)
- ピックアップ費用(依頼する場合)
- 倉庫費用(warehousing、入庫作業など)
- 梱包費用
- 爆発物検査料
- 取扱手数料
- 消費税(国内手数料や、爆発物検査料、ピックアップ費用等に対して)
- 保管料など
- 横持ち費用(集荷センターなどを利用したり、外部のパッキングや仕分け業者を用いるような大規模な物流システムが必要なケースではよく発生します。)
船便輸送の場合の例:
- 梱包費用
- 入庫・出庫料
- 輸出通関料
- 船積手数料
- Doc fee
- 書類作成料
- Terminal handling charge
- CFS charge(Container freight Station)
- FHD(Free House Delivery)charge
梱包材の費用も含まれるため、梱包費用がそれなりにかかります。またラベルなどを使うのであればその費用もかかり、危険物であればその分余分に費用がかかり、また梱包形態によりかなり上下することもあります。
基本的にFOBコストは、重量や容積(パレット数)によって上下するものと、申告金額により変わるもの(通関手数料)、固定でかかる費用等で成り立っています。
FOB係数を用いて、FOB価格を算出する方法
FOB価格だと輸出する製品の量、つまり貨物の量で変わってしまう部分があることから、大量の製品を毎年多く輸出する会社などの場合、輸送係数やFOBの係数を、前年度にかかったFOBコストから割り出して、金額をはじくさいには価格にそのFOB係数をかけてFOB価格を算出する会社もあります。この場合、厳密には前年度のFOB実績をもとに算出されるため、FOBにかかったコストは次年度にしか回収できないことになります。グループ会社間での生産財のやり取りなどでは、定期的に一定の物量が流れることからこうした手法が用いられることもあります。
また、FOB価格を出す際には数量条件についても明確に出しておく必要があります。たとえば、100個の売買で1箱におさまる荷量と、100万個の売買で1万箱になる場合とでは、製品1個あたりに乗せるべきFOBコストは全く違ったものになります。
数量条件を設定せずに、こちらが勝手に想定した物量で顧客にFOB価格を出してしまうと、発注量が減った際にFOBコストを回収できなく可能性が出てきます。
こうした数量条件が読みづらいような場合、EXW条件の価格にしておけば、FOBコストは毎度実費で請求できることになります。ただし、EXW価格の場合でも自社で梱包する費用は単価へ織り込んでおく必要は出てきます。