インドのFTAとEPA

インドは各国とのFTAやPTAの締結に積極的で、日本との間にも2011年にEPAが発効しています。地理的に近いスリランカやネパール、ブータン、バングラデシュなどの南アジア諸国と経済的にも強い結びつきがあります。多国間協定としては、ASEANやメルコスール等との間でEPA協定を持つ他、EUとの交渉も進行中です。

協定としては、包括的な経済連携協定であるCEPAを好んで締結する傾向があります。

インドのFTA締結国、交渉国

締結国、協定国 状況
インド-スリランカFTA 2000年3月1日発効。
インド-タイFTA 2003年10月に署名。アーリーハーベストにより指定した品目について先行して関税を引き下げ、撤廃。2012年中の交渉妥結を期待されていたが交渉継続の見込み。
フィンランド
インド-チリPTA 2007年8月発効。
インド-シンガポールCECA 2005年8月1日発効。
インド-ネパール貿易協定 1991年貿易協定を締結、発効。
インド-韓国CEPA 2010年1月に発効。
インド-ブータン貿易協定 2006年7月に貿易協定に署名、発効
インド-バングラデシュ貿易協定 2006年4月1日に署名、発効
インド-マレーシアCECA 2011年2月に署名。2011年7月から発効
インド-日本CEPA 2011年2月署名、同年8月1日から発効。
インド-アフガニスタンPTA 2003年5月発効。
インド-ASEAN(FTA) 2003年10月に包括的経済協力枠組み協定を締結。その後、ASEAN各国ごとに批准され、2011年にフィリピン、カンボジアが最後の批准を済ませたことで、10カ国全ての国と発効に至る。
インド-メルコスールPTA 2004年1月特恵関税枠組み協定を締結。詳細ルールを定めた本協定を2005年3月に締結。2009年6月1日より発効。
SAFTA(南アジア自由貿易地域) 2006年1月にSARRC諸国内で発効。
アジア太平洋貿易協定(バンコク協定) 1975年締結。現在は、バングラデシュ、インド、中国、韓国、スリランカの5カ国間に適用。
インド-GCC(経済関係強化のための枠組み協定) 2004年8月に経済関係強化のための枠組み協定を締結。交渉難航中。
SACU インド-南部アフリカ関税同盟PTAに向けた枠組み協定。2004年9月に特恵貿易締結に向けた枠組みが共同作業グループにて合意。交渉継続中。
インド-EU(CECA) 2005年9月に経済連携協定の効果を検討する合同通商委員会を設立。2012年大詰めを迎えており、年内締結は難しいとされるが妥結に近づいている。
インド-EFTA インドとヨーロッパのEU加盟国以外との研究。2008年10月に第一回目の会合。共同研究中。
インド-中国 2003年共同研究実施のみ。インド側は中国製品の輸入量増加に警戒感を持ち、以後進んでいない。
インド-オーストラリアFTA 2011年5月に交渉開始で合意。
インド-ロシアCECA 2006年2月に包括的経済連携協定(CECA)の締結可能性を検討する共同研究グループを設立した。共同研究中。
インド-イスラエルFTA 2004年12月に両国間の貿易協定締結に向けた交渉が開始され、共同研究グループ立ち上げ。交渉継続中。
インド-ペルーFTA FTA締結の提案がなされた。政府間の交渉などは未だ行われていない。
インド-ニュージーランドCEPA/FTA 2007年4月、両国の商工大臣が出席する会合にて、CEPA/FTA締結の可能性を探るための共同研究グループ(JSG)の立ち上げ。
インド-インドネシアCECA 2005年11月に、両国間でのCEPA締結に向けた共同研究グループ(JSG)の立ち上げに向けた覚書。
インド-カナダCEPA 2009年11月、両国間でのCEPA締結に向けた共同研究グループ(JSG)の立ち上げが合意。2013年中の締結を目指す。

インドへ輸入する際にかかる関税以外の諸税

教育目的税3%(Education Cess 2%、Secondary and Higher Edu. Cess 1%)

Countervailing Duty (CVD) 12%:相殺追加関税

Additional CVD 4% 特別追加関税

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ベトナムのFTAとEPA

ベトナムは2007年にはWTOへの正式加盟が実現し(150番目の加盟国)、今まで個別協定を結んでいなかった国との取引においても最恵国待遇が約束されることとなり、市場アクセスも格段に向上しました。

ベトナムとの貿易では、条件を満たすことでASEANの締結しているFTA/EPA協定を使うことができます。また、ASEAN諸国としては3番目となるEUとの単独交渉も開始されました。これはEUがASEANとの交渉を諦め、ASEAN諸国とはそれぞれの国ごとに交渉を行う方針に切り替えたことと関係しています。
EUの他、直近では韓国、ロシア、EFTA、TPPと自由貿易協定締結に向けた動きが活発化しています。

ASEAN加盟国10カ国のうち、遅れて加盟したCLMV諸国と呼ばれる4カ国の中では経済的に進んでおり、日系企業も進出しています。ただ、ASEANが締結する協定を使う場合は、ASEAN諸国の中では、関税率の低減スケジュールが緩やかで、ASEAN6と同じ感覚で用いると、関税率がまだ高いことがあり、事前確認が必要です。ベトナムのASEAN内での譲許がこうした状況なため、協定を適用すると逆にMFN税率よりも高くなってしまう逆転現象や、適用してもあまりメリットがないことがあります。ASEANの協定でも2014年以降は、多くの工業品目で低減が進んでいくため、長期に取引が継続する場合はコストメリットが目に見えてあらわれてきます。

WTOに長らく加盟していなかった為、それ以前に締結した貿易協定は、例えば米国との通商協定のように、WTO加盟国と同等の関税率、つまりMFN税率を適用するというもの等、関税率を安くするといっても現在のEPAやFTAのような大幅な関税率低減を約束するものではありませんでした。90年代から2000年代初頭にかけて、各国と二国間の通商協定を結んできましたが、FTA協定への取り組みが本格化したのは、WTOに加盟してからです。

また、ベトナムの所得の関係で開発途上国に該当する為、ベトナムからGSP(一般特恵関税制度)のスキームを適用している国へ輸出する場合、その国で関税がかからない、もしくは非常に安く設定されていることがあります。

ベトナムのFTA締結国、交渉国

ベトナムのFTA締結国、交渉国の一覧
締結国、交渉国、協定対象国 状況
AFTA 1995年、7番目のメンバーとして加盟。1996年に発効され、ベトナム-ASEAN間の関税が0~5%に引き下げ。
ベトナム-日本(JVEPA) 2008年署名。2009年発効。ベトナム側は輸入額の88%を10年で関税ゼロに。
ベトナム-米国 2001年発効。ベトナムがWTO正式加盟前であったため、両国相互でMFN待遇、内国民待遇の適用が条項に含まれる。
ベトナム-チリ 2011年発効。WTOに通報なし。
ベトナム-EU 2012年10月交渉開始。2014年締結を目標に進められる予定。
ベトナム-EFTA 交渉中。2012年3月
TPP 2009年より交渉開始。WTOに通報なし。
ベトナム-スイス 共同研究中。2010年~
ベトナム-韓国 2012年から交渉開始
ベトナム-ロシア 2013年から交渉開始で合意。

ベトナムで適用可能なASEANとの締結国、協定内容

締結国、協定国、地域 状況
ASEAN自由貿易地域(AFTA) 1993年に共通効果特恵関税(CEPT)発効、2010年ASEAN物品協定(ATIGA)発効
ASEAN-日本 2008年発効(但しインドネシアは未発効。)
ASEAN-中国 2003年タイEH(アーリーハーベスト)発効、2005年関税引き下げ開始、関税撤廃はASEAN6で2010年、CLMVで2015年。2011年修正議定書発効。
ASEAN-韓国(AKFTA) 2010年先行加盟国で関税撤廃(ベトナムは2016年、カンボジア、ラオス、ミャンマーは2018年)
ASEAN-インド(AIFTA) 2010年にインド、タイ、マレーシア、シンガポール、ベトナム、ミャンマー、インドネシアで発効、2011年にブルネイ、フィリピンで発効。2013年末に関税撤廃予定(但しフィリピンとCLMV諸国は2016年末)
ASEAN-オーストラリア-ニュージーランド
(AANZFTA)
オーストラリア:2010年1月
ニュージーランド:2010年1月
ブルネイ:2010年1月
ミャンマー:2010年1月
マレーシア:2010年1月
フィリピン:2010年1月
シンガポール:2010年1月
ベトナム:2010年1月
タイ:2010年3月
ラオス:2011年1月
カンボジア:2011年1月
インドネシア:2012年1月

ベトナムに輸入時にかかる関税以外の諸税

VAT(付加価値税)10%、5%またはゼロ

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ブラジルのFTAとEPA

関税コスト低減に関わる協定として、ブラジル単独ではFTA・EPAの名称で協定は締結しておらず、ほとんどがメルコスールのメンバーとして、あるいはラテンアメリカ統合連合(ALADI)域内の国と結んでいる経済補完協定(ACE)が中心となっています。

自動車や自動車部品に関するACEが個別に締結されている背景には、メルコスール内の域内関税が原則撤廃される中、自動車・自動車部品が例外に指定されている事情があります。また域内であっても保護品目は国ごとに認められています。

ブラジルが加盟する「メルコスール」は域内の加盟国間で関税を撤廃するFTAの側面を持つ他、対外的に共通の関税や貿易政策を設定することができる「関税同盟」に相当する協定です。

ブラジルのFTAもしくはそれに相当する協定の締結国

ブラジルのFTA締結国、協定国、交渉国 状況
メルコスール(MERCOSUR) 1991年締結。アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、ベネズエラの5ヵ国による「関税同盟」。準加盟国はチリ、ボリビア、ペルー、エクアドル、コロンビア。(※パラグアイは現在メルコスールへの参加権停止中)域内の貿易障壁の撤廃だけでなく、域外に対し、共通の関税を設定したり、共通の貿易政策を実施したりするFTAの上位版。
メルコスール-イスラエル 2007年署名、いわゆるFTA
メルコスール-ボリビア(ACE36) 1996、いわゆるFTA
メルコスール-チリ(ACE35) 1996、いわゆるFTA
メルコスール-ペルー(ACE 58):枠組み協定 2005。FTAとして機能しているACE。
メルコスール-コロンビア、エクアドル、ベネズエラ(ACE 59):枠組み協定 2004
メルコスール-インド:枠組み協定 2004
メルコスール-アンデス共同体(ACE 56):枠組み協定 2002
メルコスール-メキシコ(ACE 54):枠組み協定 2002
メルコスール-SACU(南部アフリカ関税同盟):枠組み協定 SACU加盟国:ボツワナ、レソト、ナミビア、南アフリカ共和国、スワジランド
2000
スリナム(部分的特恵協定) 2005
メルコスール-メキシコ(Auto Sector)ACE 55(部分的特恵協定) 2002 自動車協定
メキシコ(部分的特恵協定) 2002
ガイアナ(部分的特恵協定) 2001
コロンビア、エクアドル、ペルー、ベネズエラ(ACE 39)(部分的特恵協定) 1999
ブラジル-アルゼンチン ACE 14(部分的特恵協定) 自動車貿易協定1990
ウルグアイ(ACE 2)(部分的特恵協定) 1986
メルコスール-EU EU諸国との交渉で、南米共同市場側はパラグアイを除く、アルゼンチン、ウルグアイ、ブラジル、ベネズエラが当事国。交渉そのものは難航中。

ブラジルへの輸入時にかかる関税以外の諸税

I.I(輸入税)、IPI(工業製品税)、COFINS(社会保険融資負担金)、PIS(社会統合基金)、ICMS(商品流通サービス税)、SISCOMEX 使用料、AFRMM (商船更新追加税)※海上貨物のみ必要、等。

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ASEANのFTAとEPA

ASEAN加盟国はブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの10カ国ですが、協定によっては発効日や条件、タリフスケジュールなどが国ごとに異なることがあります。

ASEANは便宜上、ASEAN6(ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ)とCLMV(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)とに分けられて条件が設定されることもあります。

ASEAN諸国はここ最近、活発にFTA協定やEPA協定の締結を各国と模索しており、ASEANそのものでの締結が難しいEU等の相手には国ごとに交渉を行っています。

基本的にASEAN諸国間ではAFTAと呼ばれる自由貿易協定圏を構築しているため、ほとんどの品目で関税がかかりません。この適用にはフォームD(form D)と呼ばれる原産地証明書を用います。一旦ASEAN圏内に入れば、関税なしで物品の移動が可能となるため、シンガポールなどFTA交渉を盛んに行っている国を経由した貿易も行われています。

日本もそうですが、ASEANと協定を結びつつも、それぞれのASEAN加盟国とも協定を結ぶ国もあります。こうした場合は、より有利な協定を輸出入を行う者が決めることができ、対応する原産地証明をはじめとする書類を入手し、認められれば、有利なほうの協定での関税減免が受けられます。

ASEANのFTAの一覧表(交渉中、研究中、締結済み)
締結国、協定国、協定名称 状況
ASEAN自由貿易地域(AFTA) 1993年に共通効果特恵関税(CEPT)発効、2010年ASEAN物品協定(ATIGA)発効。ATIGAがCEPTに取って代わる。
ASEAN-日本 2008年発効(但しインドネシアは未発効。)
ASEAN-中国 2003年タイEH(アーリーハーベスト)発効、2005年関税引き下げ開始、関税撤廃はASEAN6で2010年、CLMVで2015年。2011年修正議定書発効。
ASEAN-韓国(AKFTA) 2010年先行加盟国で関税撤廃(ベトナムは2016年、カンボジア、ラオス、ミャンマーは2018年)
ASEAN-インド(AIFTA) 2010年にインド、タイ、マレーシア、シンガポール、ベトナム、ミャンマー、インドネシアで発効、2011年にブルネイ、フィリピンで発効。2013年末に関税撤廃予定(但しフィリピンとCLMV諸国は2016年末)
ASEAN-オーストラリア-ニュージーランド
(AANZFTA)
以下のスケジュールで発効
オーストラリア:2010年1月
ニュージーランド:2010年1月
ブルネイ:2010年1月
ミャンマー:2010年1月
マレーシア:2010年1月
フィリピン:2010年1月
シンガポール:2010年1月
ベトナム:2010年1月
タイ:2010年3月
ラオス:2011年1月
カンボジア:2011年1月
インドネシア:2012年1月
EAFTA(イーフタ) ASEAN+3:ASEAN+日本、中国、韓国による自由貿易経済圏の構想。中国が提案。現在はRCEPが交渉開始合意となっており、より大きなRCEPでの実現の可能性。
CEPEA(セピア) ASEAN+6:ASEAN+日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インドによる自由貿易圏構想。日本が提案。現在、交渉合意となったRCEPの原型。
ASEAN-GCC 2009年6月に共同研究を開始することに合意。
ASEAN-パキスタン 2008年10月、FTA研究終了
ASEAN-EU 交渉中断。EU側が二国間交渉へ方針転換。ASEANそのものとは交渉を行わず、タイやシンガポール、マレーシア、ベトナムなどと既に個別に交渉。

ASEANに輸入時にかかる関税以外の諸税

関税以外の諸税等は加盟国の税制により異なります。

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EUのFTAとEPA

EU加盟国は2014年現在、次の28カ国となります(ベルギー、ドイツ、フランス、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、デンマーク、アイルランド、イギリス、ギリシャ、ポルトガル、スペイン、オーストリア、フィンランド、スウェーデン、キプロス、チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、マルタ、ポーランド、スロバキア、スロベニア、ブルガリア、ルーマニア、クロアチア)。

原則として、協定発効には、欧州議会の同意が必要となるため、協定実現には全加盟国(28カ国)が賛成する必要があります。

EUはFTA・EPAをはじめとする通商協定の締結主体として、複数の国・地域との間で協定を結んでいます。EUが締結もしくは交渉中の通商協定には、以下のようなタイプがあります。

EUの締結する通商協定、FTA、EPA、貿易協定の種類
協定の種類 協定概要
安定化・連合協定(SAA)
Stabilisation and Association Agreement
EU加盟を希望する国との間で締結され、EU加盟の公式の候補国での経済、政治、人権、貿易などの改革をはかるもので、部分的・全面的な関税減免措置も含まれる。
連合協定(AA)
Association Agreement
EUと非EU諸国との間で結ばれるもので、政治、貿易、社会、文化、安全保障上の結びつきを強める為のもの。
自由貿易協定(FTA)
Free Trade Agreement
原則、協定国間で関税の撤廃・減免を目的とした貿易協定。
包括的自由貿易協定(DCFTA) 連合協定の一環として締結されることもある自由貿易協定。物品に関する関税の減免だけでなく、政治・経済・安全保障上の結びつきを強化する意図がある。ただ、FTAと呼ぶには協定内容が若干広い範囲に及ぶ場合や他国ではEPAに相当する協定にもDCFTA(Deep and Comprehensive Free Trade Agreemen)の名称を使う場合がある。
経済連携協定(EPA)
Economic Partnership
FTAでの関税減免に加えて、投資規制をはじめとする非関税障壁の撤廃、人的交流の拡大、各分野の協力、知的財産制度や競争政策の調和なども含んだ包括的な連携協定。
暫定経済連携協定(暫定EPA)
Interim Economic Partnership Agreement
合意できる事項についてのみ先行して締結し、両国間での物品の貿易取引の障害にならないようすぐに運用を開始することに主眼を置いたEPA。EUの場合、ACP諸国との間でこのタイプのEPAを先行して締結している。
関税同盟(CU)
Customs Union
同盟国間では、関税を減免する貿易圏を構築し、域外に対しては共通の関税を設定するもの。

安定化・連合協定は、EU加盟を希望する国との間で締結されるもので、その国における経済、政治、人権、貿易などの改革をはかるためのものとされます。このため、締結国とEUとの間では部分的もしくは全面的な関税撤廃が適用されることがあります。また、連合協定についても同様で、FTAの恩恵を得る代わりに、当該国での上記改革を行うことが条件となっている場合があります。

これらは元来、強い政治的な意味があり、ENP(欧州近隣政策)と呼ばれる政策に基づいて行われている協定で、端的に言えば、欧州連合の拡大による利益を近隣諸国と共有することを主目的としています。EU勢力圏の拡大、と言い換えてもよいかもしれません。一旦、連合協定を結ぶと、EU側から相手国に対して政治・経済・通商・人権などの政策転換を要求する代わりに、関税の減免などによりEU市場へのアクセスの便宜をはかるという内容になっています。

EUは3つの関税同盟を締結していますが、これはFTAのように同盟間での関税削減に加えて、域外に対する関税についてもグループ内で税率の足並みを揃える枠組みです。EUそのものもこの関税同盟としての性質を持ち合わせています。

また、北アフリカに位置するマグレブ諸国や中東(シリア、リビアを除く)とも個別に協定を締結していますが、これら諸国とは物品の貿易に限定された協定を結んでいます。

EUの協定数が多いのは、各々が長い歴史を持つ27カ国もの集まりであるということに加え、関税や非関税障壁の撤廃に関わる協定が単に貿易上の協定や経済連携の話だけではなく、政治的な内容を大きく絡めてくることも、協定数が多いことと無関係ではありません。実際のところ、全体的に見ると、モノの輸出入による関税を撤廃して双方の利益になるように、という目的だけで締結されている協定は少なく、其の先を想定して、関税や貿易自由化も、というのがEUのFTAのスタイルともいえます。

2006年、EU欧州委員会が新しい通商戦略である「グローバル・ヨーロッパ」を発表し、これまでFTAには消極的だった方針を大きく変え、アジア圏(韓国、東南アジア諸国、インド等)とのFTA交渉が活発化しています。ASEANに関しては、加盟国と個別に交渉する方向へ方針転換し、シンガポール、マレーシア、タイ等と締結・交渉・準備を行っています。

また、2013年に入ると、EU-米国との経済連携協定の交渉開始に合意。実現すれば世界最大の自由貿易圏となります。ここ数年でFTA、EPA協定の締結交渉が特に盛んになっている地域です。

EUが締結、交渉している主なFTAの一覧
協定対象国・協定名 締結年、発効年 協定内容
欧州経済領域(EEA) 1994年発効 EFTA加盟国がEUに加盟しなくともEUの単一市場に参加できるようにした枠組み。EFTA、EU間の協定。(具体的にはEU諸国と、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェーとの協定)
フェロー諸島(デンマーク自治) 1997年1月発効
スイス 1973年発効
ノルウェー 1973年発効
アイスランド 1973年発効
マケドニア 2004年発効 安定化・連合協定
クロアチア 2005年発効 安定化・連合協定
アルバニア 2009年発効 安定化・連合協定
モンテネグロ 2010年発効 安定化・連合協定
ボスニア・ヘルツェゴビナ 2008年7月発効 暫定通商協定
セルビア 2010年2月発効 暫定通商協定
アルジェリア 2005年9月発効 連合協定
エジプト 2004年6月発効 連合協定
イスラエル 2000年6月発効 連合協定。他にACAA(Conformity Assessment and Acceptance of Industrial Products)と呼ばれる協定を医薬分野での協定も締結。
ヨルダン 2002年5月発効 連合協定
レバノン 2003年3月発効 暫定協定
モロッコ 2000年3月発効 連合協定
パレスチナ 1997年7月発効 連合協定
シリア 交渉は2004年に妥結したが、政治的な理由で署名に至っていない。1977年の連携協定も一次停止。EU側は事実上の経済制裁を行っている。 連携協定
チュニジア 1998年3月発効 連合協定。包括的FTAについては現在も進行中。
リビア 2008年から交渉。EU側は2011年に交渉停止を決断。 FTA
GCC 中断。次回交渉は未定。非公式のやり取りを継続中。
チリ 2005年3月発効 連合協定
メキシコ 2000年7月発効 経済パートナーシップ協定
南アフリカ 2000年1月発効 貿易・開発協定
CARIFORUM(カリブ諸国15カ国) 暫定適用 暫定EPA適用
コートジボワール 2008年締結、未発効 暫定EPA
カメルーン 2009年署名・未発効 暫定EPA
東南アフリカ(モーリシャス、セーシェル、ジンバブエ、マダガスカル) 2009年に暫定EPAに署名。2012年より暫定適用。
韓国 2010年10月調印、2011年7月から暫定適用 FTA、EPA
中央アメリカ 2011年3月仮調印、2012年調印、発効待ち 連合協定
ペルー、コロンビア 2011年3月仮調印 FTA
アンドラ 1991年7月 関税同盟
トルコ 1995年12月 関税同盟
サンマリノ 1992年12月 関税同盟
アルメニア(AA、DCFTA) 2012年、連合協定の一部として、包括的FTAの実施をEUが承認。交渉開始。 包括的FTA
モルドバ 2012年交渉開始。交渉終盤。
アゼルバイジャン(AA) 2010年、EU側にて交渉することが可決。 連合協定、PCA(パートナーシップ協力協定)。FTAについての交渉はなし。
インド 2007年に交渉開始し、妥結に向けて継続中。当初は2012年締結の話もあったが、予定にはあわず。 FTA(EPA)
シンガポール 2012年12月合意。2014年発効目指す。関税撤廃に止まらない内容の包括的FTAで、両国でサービス市場への相互参入の拡大でも合意。環境サービス、専門職・ビジネスサービス、金融サービス、海上輸送など。 FTA、包括的FTA
マレーシア 2010年交渉開始。継続中。 FTA
カナダ 2009年交渉開始。交渉継続中。交渉は最終段階に入っており、締結間近。 CETA(包括的経済貿易協定):Comprehensive Economic and Trade Agreement
メルコスール、南米共同市場(アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、ブラジル、ベネズエラ)※パラグアイは現在メルコスールへの参加権が停止(2012年) 交渉難航中。 連合協定
サウジアラビア(FTA) 交渉中 自由貿易協定
シリア(AA) 交渉中 連合協定
ウクライナ(AA、DCFTA) EU-ウクライナ間の連合協定の一部として、包括的FTAについて交渉。2011に妥結。2012年仮調印。 連合協定、包括的FTA
グルジア共和国 5回目の交渉が完了。次回は2013年3月に実施予定。 包括的FTA
ベラルーシ 二国間協定が2009年に切れる。ロシア、カザフスタン、ベラルーシとの間で関税同盟を結んでおり、延長の予定なし。 繊維製品に関する協定
中国 2011年以降交渉なし。貿易、投資分野含めた両国の連携を目指した協定。EU側では2005年に交渉開始が承認された。 Partnership and Cooperation Agreement(PCA)
イラン 2002年から交渉。政治的な理由により中断。2005年までは交渉があった。経済制裁。 貿易に関する協力協定
イラク 2006年から交渉。 貿易と協力のための協定。Partnership and Cooperation Agreement(PCA)
カザフスタン 鉄鋼製品につき、EC-カザフスタンの協定を更新することをEU側が求める。2012年には3回目の交渉。 FTA交渉ではなく、強化されたPCAにつき話し合い。
ロシア 現行のEU-ロシア間のPCAを更新・拡大するために交渉。貿易と投資分野を含め、現行のPCA置き換えのための交渉を行うが、FTA交渉は進まず。 Partnership and Cooperation Agreement(PCA)
ASEAN-EU 交渉中断。EU側はASEANに加盟する国と二国間交渉へ方針転換。 自由貿易
日本-EU 欧州議会は2012年10月25日交渉開始を決める決議。交渉開始に向けて調整中。2013年春に交渉開始予定。なお、EUが日本とEPA交渉を開始するには、加盟27カ国すべての承認が必要。 EU側の提示条件:
・自動車分野を含めた日本側の非関税障壁の撤廃と並行してEU側の関税引き下げを実施するため、日本側が具体的な成果を出すまでEU側は関税を引き下げない。
・交渉開始から1年後に日本と合意しているロードマップで示された非関税障壁の撤廃や鉄道・都市内交通の公共調達で進展が不十分な場合は、交渉を中止する。
EU-米国 2013年2月、交渉開始に合意。2013年半ばに交渉開始予定。 環大西洋自由貿易協定も視野に。これは米国-EUだけでなく、NAFTA、EFTAも巻き込んだ巨大貿易圏の構想。
ベトナム 2012年交渉開始。交渉継続中。 EPA、FTA(DCFTA:包括的自由貿易協定)
アンデス共同体(ボリビア,コロンビア,エクアドル,ペルー) 2009年発効 現時点で、GSP対象国でもある。ボリビア以外は経済連携協定(EPA)を締結。なお、ペルー、コロンビアとのFTAは仮調印済。
中央アメリカ 2010年交渉が完了し、2012年に締結。 コスタリカ、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア、パナマとの間で連合協定が成立。2012年12月に欧州議会で批准。2013年半ばには暫定適用の可能性。
メルコスール 2010年に再交渉開始。交渉は8回まで実施されている。工業分野での貿易だけでなく、政府調達、知的財産権、技術上の障壁の撤廃を目指す。2013年第四半期には双方で市場アクセスへの案を提示予定。 包括的FTA

EUに輸入する際、関税以外にかかる諸税について

輸入時に関税のほかにかかる税金については各国の税制による。

EUの通商政策、関税、FTA、EPAの関連リンク



中国のFTAとEPA

2001年、WTOに正式加盟してからは特に、各国・地域とのFTA・EPA協定交渉を積極的に進めています。

中国が締結・交渉するFTAの中には、枠組み協定に相当する内容で関税譲許を先行して行うものが見受けられます。これらは本妥結には至っていませんが、まずは両国で品目を決めて関税の低減を実施しながら交渉を継続する形をとった協定です。地域間としては、中国-ASEANとの自由貿易協定である通商ACFTAが良く知られ、これに使う原産地証明書のフォームEも耳にすることがあるかもしれません。2012年末には、日中韓FTAやRCEPでの交渉開始に合意し、着実に自由貿易圏を拡大しつつあります。

ただし、対中貿易で赤字の進む米国やEUとは非常の多くの貿易があるものの、協定云々の話にはならず、両者とも中国を締め出す形の貿易圏を構築しているのが現状です。

締結国、協定国 状況
アジア太平洋貿易協定
Asia Pacific Trade Agreement (APTA) – Accession of China
既存加盟国と新たに加盟した中国との協定は2002年に発効。特恵貿易協定に相当。中国、韓国、インド、スリランカ、バングラデシュ、ラオス6国が加盟国。
中国と香港の経済・貿易関係緊密化協定(CEPA) 2004年より実施。継続的に補充協定を締結しており、最新のものは2012年6月に調印された補充協定9。いわゆる地域間FTAの位置付け。
中国とマカオの経済・貿易関係緊密化協定(CEPA) 香港同様、2004年から実施。補充協定の締結を継続しており、2012年7月に補充協定9に調印。
中国と台湾の海峡両岸経済協力枠組協定(ECFA) 2010年から発効。アーリーはベスト対象品目については関税引き下げ実施済み。
中国-ASEAN(ACFTA) 2003年タイEH発効、2005年関税引き下げ開始、関税撤廃はASEAN6で2010年、CLMVで2015年。2011年修正議定書発効。発効後、中国とASEAN6カ国(ブルネイ、フィリピン、インドネシア、マレーシア、タイ、シンガポール)の間で90%以上の製品はゼロ関税。
中国-チリFTA 2006年7月1日より関税譲許が開始し、10年以内に97%の製品でゼロ関税にすることに合意。
中国-パキスタンFTA 2005年から交渉開始。2006年から関税の引き下げを開始し、2008年までにゼロ関税に。
中国-ニュージーランドFTA 2004年交渉開始、2008年締結。
中国-シンガポール 2008年調印。2010年1月までにシンガポールからの輸入製品の97.1%の関税をゼロにすることで合意。
中国-ペルー 2007年交渉開始。2009年調印。双方90%以上の品目で段階的にゼロ関税へ。
中国-コスタリカ 2011年発効。
中国、香港-EFTA 2012年10月発効。
中国-韓国FTA 2006年共同研究開始。2012年5月から正式に交渉を開始。交渉継続中。
日中韓FTA 2010年に共同研究を開始。2012年11月には交渉開始を宣言。
東アジア地域包括的経済連携(RCEP) 2012年11月20日、交渉の立ち上げを宣言。2013年早期に交渉を開始し、2015年末までに交渉完了を目指す。ASEAN諸国、日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インドの合計16カ国を含む連携構想。
中国-オーストラリア 2005年交渉開始。現在も交渉継続中。
中国-スイス 2010年共同研究終了。2011年交渉開始。交渉継続中。
中国-ノルウェー 2008年交渉開始。交渉継続中。
中国-コロンビア 2007年交渉開始。
中国-アイスランド 2007年交渉開始。交渉継続中。
中国-GCC(湾岸協力理事会)FTA 2004年交渉開始。現在までに5回実施。継続中。
中国-SACU(南部アフリカ関税同盟)FTA 2004年に交渉開始することで合意。

中国に輸入時にかかる関税、諸税

輸入増値税(基本税率17%)、消費税、船舶トン税
輸入許可証取得費用、保税区使用料。

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台湾のFTAとEPA

台湾は、国連ならびにその加盟国のほとんどから国家として認められておらず、外交関係を有する国も23カ国に止まるため、現在発効中のFTAやEPAは中国を除くと、台湾を国家として承認している国に限られています。ただ、FTA・EPAの締結が主権国家間でなくてはならないというルールはなく、台湾はWTOへも「地域」としての扱いで加盟を果たしており、台湾を国家とは認めていない各国とも国交を持っていることから、今後締結が進んでいく可能性が高いと考えられます。

実現を目指す具体的なFTA・EPA協定として、馬英九政権は、8年以内に環太平洋パートナーシップ(TPP)参加を目指す方針を出しています。二国間のものとしては、シンガポールとはすでに交渉に入っており、インドやフィリピンとも自由貿易協定締結に向けた検討を行うことへの合意が両国との間で行われています。

台湾の通商外交政策は、中国と同地域との政治的・経済的な関係が柱となっており、中国との関係が他の経済圏との関係にも強い影響を及ぼしています。  これは台湾にとって中国は最大の貿易国でありながら、世界各国を巻き込んで、どちらが「中国」なのか長らく争ってきた歴史とも関係があります。

台湾の前政権や現野党の民進党などの立場は、「台湾は中国の一部ではない」「台湾は既に独立国である」との姿勢を貫き、一方で中国側は「中国とは中華人民共和国のことである」「中国は一つ」と主張、台湾の独立に反対しており、もし独立するようなことがあれば武力行使も厭わない姿勢を通してきました。こうした背景により中台関係、いわゆる両岸関係の進展は難航し、台湾と中国との間で他国からの外交承認の争奪戦も行われてきました。
中華人民共和国政府は「一つの中国」原則を主張し、二重承認を絶対に認めない立場を取っているため、台湾を外交承認した国とは国交を結ばないため、台湾を国と認める主要国はないものの、わずかでも外交承認を行ってくれる国を作っていくことが重要であると考えた台湾と中国は、経済援助が欲しい国々を巻き込んで争っていました。
このような状況下、現政権の馬英九総統は「一つの中国(ただし中華人民共和国ではなく、中華民国)」を認めた上で「統一せず、独立せず、武力行使せず」の「3つのノー」を掲げ、経済・文化面から両岸交流の拡大を推進してきました。10年ぶりに再開された両岸対話等を通じ、実務交流・協力が急速に進展し、一つの成果として中国との間に自由貿易協定の一つであるECFA(海峡両岸経済協力枠組協定)の締結が実現しました。

馬英九政権の手がけたECFAが台湾経済にもたらした影響は大きく、この協定により、中国-台湾間で関税の段階的引下げ、投資保護、紛争解決等を含む、中台間の包括的経済連携推進の枠組みを定め、「中台FTA」の骨格となるものが出来上がりました。
馬英九政権の対外政策の柱となっているのは「両岸関係の緩和と国際社会との関係発展を同時並行で進める」というものです。陳水扁時代から大きく方向転換した馬政権は対中、対米関係の改善に腐心し、通商政策としては「輸出競争力の強化」「対中投資の優遇条件の確保」「他国とのFTA、EPA」を進めてきました。

 貿易への依存度が高い台湾は、周辺国のFTA・EPAの交渉状況にも注視しています。特に、韓国の全方位的なEPA・FTA外交に対して、日本以上に危機感を持っており、同政府メディアの発信する情報から「米韓FTAが台湾にもたらす経済的損失について最悪の場合60億米ドル(約4600億円)に達する」との見解や、中韓関係の進展にも大きな危機感を持っていることが伺えます。

世界貿易機関 (WTO) に関しては、Separate Customs Territory of Taiwan, Penghu, Kinmen and Matsu(台湾・澎湖・金門・馬祖個別関税領域)という名称で加盟しています。WTO加盟当初の関税引下げ目標は以下の予定通り達成しており、この加盟によりWTO協定税率(MFN税率)の適用という恩恵を受けることが可能になりました。

台湾のFTAとEPAの一覧

締結国、協定交渉国 状況
海峡両岸経済協力枠組協定(ECFA) 中国と締結。2010年9月発効。中国-台湾間ではECFAほか16の協定を締結。
台湾の締結する経済協定としては最も大きなもので、経済的な意味だけでなく、政治的にも大きな意味を持つ協定。関税の段階的引下げ、投資保護、紛争解決等を含む、中台間の包括的経済連携推進の枠組みを定めたもので、「中台FTA」の骨格となるもの。
台湾・エルサルバドル・ホンジュラス自由貿易協定 2008年1月発効(台湾)、2008年3月発効(エルサルバドル)、2008年7月発効(ホンジュラス)
台湾・グアテマラ自由貿易協定 2005年3月交渉開始、2005年9月署名、2006年7月発効
台湾・ニカラグア自由貿易協定 2006年6月署名、2008年1月発効
台湾・パナマ自由貿易協定 2002年10月交渉開始、2003年8月署名、2004年1月発効
台湾・ドミニカ自由貿易協定 2006年から交渉開始、2012年2月時点では未締結。経過不明。
台湾―シンガポール 交渉することに合意。
台湾―インド 検討を行うことの合意のみ。
台湾―フィリピン 検討を行うことの合意のみ。交渉の前段階
TPP 参加を政府方針として掲げるが、現在のところ交渉参加は実現していない。

台湾に輸入時にかかる関税以外の税金の情報

輸入時には関税のほかにVAT(付加価値税)として5%。
Commodity tax(消費税、物品税):
ゴムタイヤ、セメント、飲み物、板ガラス、オイル、ガス、乗り物、電化製品
Commodity taxがかからないもの:
輸出品、上記課税対象を製造する際の原材料
Trade service fee 0.04%
Harbor Feeなど

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枠組み協定とは

「枠組み協定」とは正式な協定を結ぶ前にルールを定めるものです。国によっては暫定FTAや暫定EPAといった形で、枠組み協定によるFTA、EPAと同じような協定を意味する場合もあります。

貿易協定や通商協定は、通常、正式な協定を結ぶまでの協議や交渉には時間がかかります。というのも、双方ともに譲りたくない部分や譲歩することで国益にならない部分が必ずあり、単純にトレードオフによって交渉が成立しないからです。一般には早くても2年程度、5年以上交渉しているケースも珍しくなく、政治的な理由で中断してしまうことすらあります。

そこで実際の貿易上の需要を考慮し、先に「枠組み」協定を締結することにより、双方が最も切迫していたり、双方のコンセンサスが得られている工業品項目の関税減免などについて部分的なものから協定を結ぶことで、「早期収穫」(Early Harvest)できるようにしたものが、この枠組み協定の本質です。アーリーハーベストは枠組み協定以外でも使う手法ですが、とにかく両国での貿易増進によって利益をもたらすために先に締結しておき、交渉が難航する部分についてはじっくりと時間をかけて行っていくということが可能になります。

こうした背景があるため、基本的には「枠組み協定」は正式な協定が締結されるまでの過渡的な存在でもあります。いずれ条件が整い、交渉が成立すれば枠組み協定から正式な協定となりますが、中にはもう長いこと枠組み協定のまま運用されている自由貿易協定や経済連携協定もあります。



メキシコのFTAとEPA

メキシコは日本との間でもEPAを締結していますが、世界の国・地域との間で合計11の協定を結んでいます。

中南米に固有の事情としては、ラテンアメリカ統合連合(ALADI)の枠内で取り交わしているACE(経済補完協定)とAAP(部分的到達協定)と呼ばれるタイプの協定があります。両者は期限付きですが、双方の合意があれば更新も可能な協定で、特定の品目について相互に関税を一定割合、削減するというものです。

メキシコとメルコスール(アルゼンチン、ブラジル、ウルグアイ、パラグアイ)との間で発効している自動車、自動車部品についての相互特恵関税適用もこのスキームを利用したものです。

中南米地域での関税のコスト削減を検討する場合、FTAやEPAに限った切り口ではなく、この経済補完協定と部分的到達協定についても調べる必要があります。ラテンアメリカ統合連合の中では、FTAのかわりに、このACEを用いる場合があります。

ALADIの枠内で50以上締結されているACEは、GATT第24条に規定される「自由貿易協定」には該当しませんが、域内の市場統合を加速するため、特恵関税の適用を含む、柔軟な統合を重視している点に特徴があり、FTAのかわりを果たしている側面もあり、南米地域の関税コストを検討するうえでは無視できない協定群です。

締結国 状況
NAFTA(北米自由貿易協定)メキシコ-米国-カナダ 1994年発効
G3自由貿易協定 コロンビア、ベネズエラ、メキシコによる自由貿易協定。1995年1月発効(コロンビア)注:ベネズエラは2006年11月19日に本協定より脱退 。
メキシコ-コスタリカ 1995年1月発効
メキシコ-ニカラグア 1998年7月発効
メキシコ-チリ 1999年8月発効
メキシコ-イスラエル 2000年7月発効
メキシコ-EU(欧州連合) 2000年7月発効(ベルギー、デンマーク、ドイツ、ギリシャ、スペイン、フランス、アイルランド、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、オーストリア、ポルトガル、フィンランド、スウェーデン、英国)、2004年5月新規10カ国追加(チェコ、エストニア、キプロス、ラトビア、リトアニア、ハンガリー、マルタ、ポーランド、スロベニア、スロバキア)、2007年1月新規2カ国追加(ブルガリア、ルーマニア)
メキシコ-中米北部3ヵ国(グアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラス) グアテマラ、エルサルバドルとは2001年3月15日に発効、ホンジュラスとは2001年6月1日に発効。
メキシコ-EFTA(欧州自由貿易連合) ノルウェー、スイス、アイスランド、リヒテンシュタインとの協定。ノルウェー、スイスとは2001年7月1日発効、アイスランドとは同10月1日発効、リヒテンシュタインとは同11月1日発効。
メキシコ-ウルグアイ 2004年7月15日発効
メキシコ-日本(経済連携協定:EPA) 2005年4月1日発効
メキシコ-ペルー 2012年2月1日発効
メキシコ-メルコスール 枠組み協定、ACE54を2002年に締結。
メキシコ-メルコスール(自動車分野:ACE 55) 部分的特恵協定(Partial Preferential Agreements)として。
メキシコ-ブラジル(ACE53) 2002年7月3日
メキシコ-アルゼンチン(ACE 6) 1993年11月28日
メキシコ-ペルー (ACE 8) 1995年1月29日
メキシコ-エクアドル (AAP 29) 1993年5月31日
メキシコ-パラグアイ (AAP 38) 1993年5月31日
メキシコ-パナマ (AAP 14) 1985年5月22日
メキシコ-韓国 現在交渉中。2007年交渉開始を発表。2006年2月開始・6月中断の後、2007年12月に再開した。

メキシコの輸入時に関税のほかにかかる税金

輸入付加価値税(IVA)16%(11%)、CPF 0.8%、通関手数料(DTA)、アンチダンピング税など。

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CNコード

CNはCombined Nomenclatureの略で、EU内で使われる合同関税品目分類表を意味しています。これは他国でいうところのHSコードに相当し、EU加盟国はこの共通のCNコードを使って、物品が何かを特定し、関税率の決定等に使っています。EUの共通関税のことをTARICと呼ぶため、CNコードは別名、TARICコードと呼ばれることもあります。

HSコードは6ケタまでは世界共通で、それ以降は各国事情にあわせてつけることができるため、合計9桁の国もあれば、10桁もあります。EUで用いるこのCNコードは、HSコードの共通6ケタに下位2ケタを足し、合計8ケタの番号で運用されています。

CNコードは下記の欧州議会のサイトから、EU共通関税率を調べる際に確認できます。日本のHSコードとも6ケタまでは同じである為、Goods codeと記載されている部分に途中までHSコードの番号を打ち込んで検索すると、CNコードが設定されている品目については、最後の桁数まで表示されます。

なお、EU諸国内に物品を入れる際に、関税を確定させたり等のために事前にHSコードを当局に照会して特定してもらう「事前教示制度」がありますが、EUの場合、加盟国のどこか一つで公式に回答をもらえれば、他のEU諸国で通関する場合にもその事前判断が尊重されることになっています。

EUの統合関税率(TARIC)、CNコードの検索(欧州議会公式サイト)