ステージング表(Staging)

EPA協定、FTA協定などで関税の低減・撤廃についてのカテゴリー定義をしている表のことを言います。関税の撤廃もしくは低減を一定年数かけて行う場合、たいていの協定では下げ方や撤廃の仕方にいくつかのパターンを設けています。

例えば、ある品目については5年かけて均等に税率を下げていき、6年目からは関税ゼロにするといったパターンや、初年度に大きく下げるなど年数によって低減率に差異を設けていくパターンなどです。

膨大な点数に及ぶ品目について一つ一つ個別に低減率を設定していくのは困難なため、多くても数十パターンのルールをステージング表で定義し、これを譲許表でどの品目にどのルールを適用するのかを明確にしています。

協定によっては、こうしたパターンにアルファベット記号などをつけて、品目別の撤廃・低減スケジュールについて取り決めた譲許表に記載します。こうした表示をするかは協定によりけりで、ステージング表がなく、譲許表に年毎の税率をすべて記載しているケースもあれば、HSコードと品目説明のあとにステージング表で定義したアルファベット記号を記載しているだけの場合もあります。

英語では単にtariff scheduleと称呼されることもありますが、譲許表と区別されていないこともよくあります。



WTO加盟国

WTOは世界貿易機関(World Trade Organization)の通称で、2012年現在、WTO加盟国は157カ国あります。直近の加盟国としては、2012年にロシア、バヌアツ、モンテネグロ、サモアがあります。2013年初頭にはラオスの正式加盟も予定されています。

世界の貿易のルール作り、通商にまつわる紛争解決、保護政策の監視、通商ルールの取り決め等を議論する国際機関で、1995年にGATTを引継ぐ形で誕生しました。活動の原則としては、関税の減免や非関税障壁の撤廃促進などによる貿易自由化を進め、多角的な通称体制を構築することにありますが、2001年のドーハ開発ラウンド以降、各国の利害対立がいくつかの軸に分かれて鮮明となり、個別の関税の低減や貿易自由化については、話がまとまらなくなっています。これにかわり、二国間や多国間での個別の貿易協定、地域協定が活発化することになりました。

ありていに言えば、貿易分野の警察であり、裁判所、仲裁所でもあります。WTOの前身であったGATTには法人格や法的根拠がなかったため、WTOになる過程で大幅に組織が強化され、拘束力も持つようになっています。

【参考】WTOに加盟していない国・地域(2012年12月現在)

エリトリア
ソマリア
北朝鮮
東ティモール
モナコ
サンマリノ
トルクメニスタン
キリバス
ツバル
パラオ
マーシャル
ミクロネシア
コソボ
クック諸島
南スーダン



World Tariff

ワールドタリフとは米国の物流大手Fedex社が運営するインターネット上の関税データベースです。120カ国以上の世界各国の関税率を品目ごと、国ごとに瞬時に検索できるため、多くの人に利用されています。日本に居住する方であれば、JETROが窓口となり、無料で申し込みが可能となっています。MFN税率EPA税率GSP税率にも対応している他、関税以外にかかる諸税の概算も国ごとに調べることが出来ます。

なお、利用に当たっては以下の点にも留意する必要があります。

  • FTA協定、EPA協定の動向によっては最新の情報を反映していない場合がある
  • HSコードが最新のHS2012ベースで構築されているため、HS2007やHS2002などのコードでタリフスケジュールが決められた協定では物品の対応関係に注意が必要(自由貿易協定や経済連携協定は締結されたときに有効となっているHSコードで譲許表などの取り決めを行うため、HSコードが改訂されている場合、HS番号と品目がずれてしまうものがある)

なお、日本が輸入する場合の関税率だけ不思議な値がつけられていることがあるため、財務省のページで確認することをおすすめします。

正確を期す場合、輸出や輸入前に、現地サイドに関税率を確認したり、現地税関のウェブサイトやデータベースと併用するのがよいでしょう。



EPA税率、FTA税率

二国間もしくは多国間で締結した自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)、特恵貿易協定などによって設定された関税率のことを言います。いわゆる特恵税率のひとつです。WTO加盟国間では、通常の貿易取引においてMFN税率を使うことが出来ますが、協定を結んでいる国同士では、その内容に基づき基準を満たして専用の特定原産地証明書を提示すればEPA税率・FTA税率を適用した貿易ができます。

EPA税率・FTA税率は、協定文の中の「譲許表」(Tariff Schedule)に品目別に記載されていることが多いですが、全品目を即時撤廃するなどの協定の場合は、譲許表がないこともあります。

なお、EPA、FTAでは品目によって段階的に税率を下げ、数年後に完全に関税を撤廃するという形をとったものが多いため、このスケジュールの如何では、他の税率の方が安いこともあり、EPA税率が必ず得であるというわけではありません。検討の時点で、どちらにメリットがあるのか見ておくことが肝要です。

国によっては、地域間協定と個別協定の二つが併存していることがあります。例えば、日本-タイ経済連携協定、日本-ASEAN経済連携協定では、タイとの取引ではどちらも使うことが出来ます。この場合は、どちらを使うかは輸出者の自由となっており、譲許表を確認して税率が安い方を選ぶこともできます。

一般論としては、二国間の協定のほうがより自由な貿易にしやすいため、多国間協定よりも有利な関税条件になっていることが多いですが、ケースバイケースです。



WTO協定税率

別名、MFN税率ともいいます。WTO加盟国間で適用される税率のことで、加盟国間では原則としてこの税率が適用されることになります。ただし、EPAやFTA、PTAなどの貿易協定、通商協定によって関税率に特段の取り決めをしている場合は、MFN税率よりも安い税率を設定できます。

こうした協定を抜きに、ある国にだけ関税を優遇する、もしくは不当に関税を吊り上げるなどの行為は禁じられており、MFN税率を一旦下げた場合は、WTO加盟国すべてに対して適用させる義務が生じます。このため、二国間や多国間で自由貿易協定や経済連携協定を結ぶことで、利害の一致する限定された国家間による互恵関係の構築がなされるようになりました。

なお、日本ではWTO加盟国からの輸入品であれば、証明書抜きでWTO協定税率が適用されますが、国によっては「原産地証明書」抜きではこの税率を適用させない国もあります。



NTR税率

MFN税率、WTO協定税率と同じものを意味しています。但しこの用語を使っているのは米国のみで、NTRはNormal Trade Relationsの頭文字からきています。直訳すれば、通常の貿易関係、正常の貿易関係を築けることを意味します。

元来、MFN税率は最恵国待遇税率のことですが、WTO加盟国が増えた為、現在では貿易取引を行うほとんどの国でこの税率が適用可能となったことから「最恵国(MFN)」ではないという指摘があり、米国ではNTR税率と改められました。ちなみに、このNTR税率が適用されない国は経済制裁を受け貿易そのものができない国を除くと、キューバと北朝鮮のみです。

米国に絡んだ貿易以外ではあまり使うことも目にすることもない用語ですが、同国では輸入先によってさまざまな関税体系を持っていますので、それらの特恵税率を享受できない場合、このNTR税率が適用されることになります。



MFN関税率

通常適用される関税率はこのMFN税率のことで、WTO加盟国160か国からの貿易についてはこの税率が適用されます。
別名、WTO協定税率ともいいます。MFNはMost Favoured Nation Treatmentの頭文字から取ったもので、最恵国待遇のことです。これは、関税などについてWTO加盟国で同じ条件を適用すべしというルールで、WTOに加盟した場合、加盟国間での貿易で適用される税率です。現在、世界のほとんどの国がWTOに加盟しているため、事実上「Most Favoured Nation」ではないという指摘もありますが、慣習的にMFN税率呼び習わしています。なお、2012年8月にはロシアもWTO加盟を果たしたため、従来から段階的自国の関税率を下げていくことになりました。

たとえば、国の関係が悪化したからといって、ある国からの輸入品の関税だけを差別的に上げることはできません。関税率は上げるにしても、下げるにしても、他の国すべて平等に適用させる必要があります(関税の下限は0ですが、設定可能な上限についてもWTOでは取り決めています)。セーフガードなどを用いて関税を一時的に上げる仕組みを存在しますが、MFNの原則というのは、WTO加盟国間で差別的な扱いをしてはならないというものですので、A国に適用した税率はB国にも適用する必要があります。ただし、この例外がこのサイトで取り上げている自由貿易協定、経済連携協定、特恵貿易協定などの地域間貿易協定による関税の減免です。この場合は、協定を結んだ国同士だけに適用可能な関税率を自由に設定できますが、貿易協定自体に、他の貿易協定が安い税率を適用されている場合は、そこまで税率を引き下げるといった条項を設定されているものもあります。

以前はWTOの場にて加盟国すべての関税率を下げようとする動き、すなわちMFN税率を一律に下げていく動きもありましたが、加盟国が増え、それぞれの国の産業や経済構造が異なるため、すべての国で合意を得ることが不可能になったため、各国が個別に自由貿易協定(FTA)などを結び始めました。

なお、余談ですが米国ではMFNのことをNTRと呼び習わしています。



LDC特恵措置

LDCは後発開発途上国のことで、開発途上国の産業支援の施策である一般特恵関税制度よりもさらに、税制を優遇したスキームです。特定の品目については、無税にするというもので、現在は48カ国が適用対象国となっています。特別特恵対象品目(約2,400品目)について適用となります。

米国やEUでも同様の仕組みを持っており、GSPのなかでも特に貧困に苦しむ国からのものは税率や適用品目をさらに広く取っています。

日本が適用しているLDC特恵措置対象国、地域

アフガニスタン
アンゴラ
イエメン
ウガンダ
エチオピア
エリトリア
ガンビア
カンボジア
ギニア
ギニアビサウ
キリバス
コモロ
コンゴ民主共和国
サモア
サントメ・プリンシペ
ザンビア
シエラレオネ
ジブチ
スーダン
赤道ギニア
セネガル
ソマリア
ソロモン
タンザニア
チャド
中央アフリカ
ツバル
トーゴ
ニジェール
ネパール
ハイチ
バヌアツ
バングラデシュ
東ティモール
ブータン
ブルキナファソ
ブルンジ
ベナン
マダガスカル
マラウイ
マリ
ミャンマー
モーリタニア
モザンビーク
ラオス
リベリア
ルワンダ
レソト



特恵関税率(GSP税率)

GSPはGeneralized System of Preferences(一般特恵関税制度)の頭文字からとった略称で、開発途上国からの輸出品に適用される特別な関税率のことをいいます。

趣旨としては、先進諸国に比べて決して有利とはいえないビジネス環境にある開発途上国について、産業の発展、開発の促進、工業化などを進めるために国連で決議された特別措置に基づくものです。このため、GSP税率は特恵関税率ともいわれ、一般の関税率よりも低く設定されています。

日本もこのスキームには参加しており、認定された国からの輸入品についてはこの特恵関税率(GSP税率)を適用させることが出来ます。認定国は世銀の所得統計などによっても変わります。日本の場合、2012年現在では、138カ国がGSP制度を利用できる特恵受益国として認定されています。

なお、GSP税率は品目によっては適用できないものもあります。工業製品、鉱工業品は一部の品目除くと原則として全ての品目に適用できますが、農産品、水産品については選定された品目について適用が可能となっています。

特恵税率は農水産物については、一般税率よりも低くすることが決められており、工業品については原則無税で、品目によっては一般税率の20%、40%、60%、80%に相当する税率がかけられます。

また、GSP対象国の産品を過度に優遇することで自国の産業に支障が出ないような仕組みもあります。日本で採用されているエスケープ・クローズ方式と呼ばれる手法は、国内産業にダメージがある場合、政令によって特恵の適用を中止できるものです。

日本が対象としているGSPの対象国は以下のとおりです。これはEUや米国など、それぞれの国のGSPによって異なりますので、留意が必要です。

アゼルバイジャン,アフガニスタン,アルジェリア,アルゼンチン,アルバニア,アルメニア,アンゴラ,アンティグア・バーブーダ,イエメン,イラク,イラン,インド,インドネシア,ウガンダ,ウクライナ,ウズベキスタン,ウルグアイ,エクアドル,エジプト,エチオピア,エリトリア,エルサルバドル

ガーナ,カーボベルデ,ガイアナ,カザフスタン,ガボン,カメルーン,ガンビア,カンボジア,ギニア,ギニアビサウ,キューバ,キリバス,キルギス,グアテマラ,クック諸島地域,グルジア,グレナダ,クロアチア,ケニア,コートジボワール,コスタリカ,コソボ,コモロ,コロンビア,コンゴ共和国,コンゴ民主共和国

サモア,サントメ・プリンシペ,ザンビア,シエラレオネ,ジブチ,ジャマイカ,シリア,ジンバブエ,スーダン,スリナム,スリランカ,スワジランド,セーシェル,赤道ギニア,セネガル,セルビア,セントクリストファー・ネーヴィス,セントビンセント,セントヘレナ及びその附属諸島地域,セントルシア,ソマリア,ソロモン

タジキスタン,タンザニア,チャド,中央アフリカ,中華人民共和国(香港地域及びマカオ地域を除く。),チュニジア,チリ,ツバル,トーゴ,トケラウ諸島地域,ドミニカ,ドミニカ共和国,トルクメニスタン,トルコ,トンガ

ナイジェリア,ナミビア,ニウエ島地域,ニカラグア,ニジェール,ネパール

ハイチ,パキスタン,パナマ,バヌアツ,パプアニューギニア,パラオ,パラグアイ,バングラデシュ,東ティモール,フィジー,フィリピン,ブータン,ブラジル,ブルキナファソ,ブルンジ,米領サモア地域,ベトナム,ベナン,ベネズエラ,ベラルーシ,ベリーズ,ペルー,ボスニア・ヘルツェゴビナ,ボツワナ,ボリビア,ホンジュラス

マーシャル,マケドニア旧ユーゴスラビア共和国,マダガスカル,マラウイ,マリ,マレーシア,ミクロネシア,南アフリカ共和国,ミャンマー,メキシコ,モーリシャス,モーリタニア,モザンビーク,モルディブ,モルドバ,モロッコ,モンゴル,モンテネグロ,モントセラト地域

ヨルダン,ヨルダン川西岸及びガザ地域

ラオス,リビア,リベリア,ルワンダ,レソト,レバノン

参考リンク

日本のGSP制度の概要-日本外務省



サプライヤー証明書

特定原産地証明書を申請する際、扱い製品の構成部品に「原産性」があることを証明するための書類です。書式は自由です。工業製品の多くは、一つの部品から構成されているものは稀で、数十~数万もの部品から構成されていることがほとんどです。そしてこれらの部品を作るために使っている構成品は、原料をはじめ海外から仕入れたものも少なくありません。

こうしたものを非原産材料で作られた産品といいますが、これらも一定の条件を満たすことで、「原産品」とすることができます。この原産であるかどうかを決めるルールが原産地規則で、協定ごとにどの品目についてどのルールを使うのかを規定しています。

ただ、多くの部材を使った製品であればあるほど、すべての部材について輸出者や、最終製品のメーカーだけでは立証することが困難になります。部品や原料のコスト計算などは事実上、それを作っているメーカーにしか出来ない為、原産資格があるかどうかは輸出品のメーカーでは分からないことになります。

こうした場合、個別の部品や原料ごとに各メーカーから原産性を証明してもらう必要があり、このときに使う書類がこのサプライヤー証明書となります。各企業が自由に発行するものですが、以下の要件を備えていることが望ましいとされます。

  • 日付
  • サプライヤーの名称、住所、担当者名、部署名、連絡先(印鑑は不要になりました。)
  • 日本とどの国との協定に基づく原産品であることの証明書かを明記。
  • 品名、HSコード、判定基準(VAルールなのか、CTCルールなのか。さらにどのレベルの基準を使ったのか)
  • 製造工場とその所在地

なお、このサプライヤー証明書の作成に使った計算書などはExcelファイルなどで残しておくことが望ましいといえます。というのも、政府機関から原産性に関する照会があった場合はこれらによって物品が原産品であることを証明することになります。