特定原産地証明書

特定原産地証明書は、通常の原産地証明書とは異なり、指定された機関により発行された証明書となります。日本の場合は、日本商工会議所から発給されたものである必要があります。日本と他国との間で締結したEPAを活用する場合には、この特定原産地証明書の発給を受ける必要があります。特定原産地証明書は、利用しようとする貿易協定であるEPAごとに違うため、それぞれの協定専用のものが必要です。日タイ協定で使う特定原産地証明書を、日インドネシア協定の関税減免のためには使うことができません。

なお、この証明書の発給申請ができるのは、適用を受けたいと考えている物品の「製造者(メーカー)」か、「輸出者」のみです。国内の卸などで、国内からの輸出を担う商社や貿易商に販売する立場の方は、申請ができないので注意が必要です。またメーカー(生産者)ではなく、輸出者が申請する場合は、メーカー側から証明資料を入手する必要があります。

輸出者が日本商工会議所から特定原産地証明書を入手するには、メーカーが輸出者に対して「同意通知書」を発行することが必要です。同意通知によってはじめて輸出者側はこのメーカーの同意した特定原産地証明書の発給を受けることが出来るようになります。現在はインターネット上から判定依頼や同意通知が可能なため、すぐに発行可能となっています。

特定原産地証明書の有効期間は各協定の取り決めによります。日本は協定を結ぶEPAを例にすると、日フィリピン協定では6ヶ月間、その他の協定(「日本・メキシコ経済連携協定」「日本・マレーシア経済連携協定」「日本・チリ経済連携協定」「日本・タイ経済連携協定」「日本・インドネシア経済連携協定」「日本・ブルネイ経済連携協定」「日本・ASEAN経済連携協定」「日本・スイス経済連携協定」「日本・ベトナム経済連携協定」「日本・インド経済連携協定」「日本・ペルー経済連携協定」)では発給されてから1年が有効期間となります。

また緊急の船積みなどの都合で、場合によってはあとから特定原産地証明書の発給を申請することも可能です。

なお、余談ですが、日本には大きく3分類の原産地証明書が存在します。

  • 特定原産地証明書(協定ごとに専用のものがあります)
  • 特恵原産地証明書(フォームAの名称で知られます。GSP用)
  • 一般原産地証明書(通常貿易に使うもので、各地の商工会議所で発給してもらえます)


譲許表(Tariff Schedule)、タリフスケジュール

譲許表は正式には「表」と呼ばれるそうですが、別名タリフスケジュールともいいます。FTA協定、EPA協定では膨大な貿易品目のうち、協定を締結している国・地域で、どの品目について関税を撤廃あるいは削減するのかを取り決めています。これによって協定を結んでいる国が互いに自国で保護が必要な品目を選ぶことができ、品目によっては数年間かけて関税率を低減するといったことができるようになってます。品目はHSコードで同定するため、EPA税率を調べようとする品目のHSコードをまずは調べておくことが必要です。品目には、ノーマルトラック、センシティブトラック、エクスクルーシブリストなどの括りがつけられる場合があります。ノーマルトラックは、通常のスケジュールで関税を減免、撤廃しておく品目の総称で、センシティブは低減に制限があり、特別な配慮が必要なもので関税の低減や撤廃が難しいものにつけられ、エクスクルーシブは関税減免の除外品です。

全品目について即時関税を撤廃する場合はこの譲許表が存在しないこともあるため、協定ごとに確認が必要です(日本シンガポール経済連携協定では即時撤廃のため無し)。

FTA/EPAにおける関税の減免は、品目によって概ね以下のパターンに分けることが出来ます。何年かけて撤廃するのか、という部分にしても品目によって異なる年数を設定していることも多いため、現在のEPA税率、FTA税率を確認する為には、この譲許表(タリフスケジュール)が不可欠となります。

  • 協定の発効時に即時撤廃されるもの
  • 毎年均等に削減していき、設定した年数後には完全撤廃されるもの
  • 関税率の低減が不均衡になっているもので、設定された年数後に削減か撤廃されるもの
  • 関税割当が設定されているもの(一定の数量までは無税か低い税率を適用し、その数量を超える輸入分からは高税率となるもの)
  • 発効後、一定期間が経った後に再交渉が予定されている品目で、現在は関税率の変更がないもの
  • 除外品目と呼ばれるもので、関税率に一切の変更を加えないもの

協定によっては、上記のうちのどれに該当するのかをアルファベット記号で表記することもあります。この場合、これらの対照表が協定の附属書などについています。

FTA・EPA活用を行う場合、この譲許表を調べることで、輸出もしくは輸入したいと考えている物品の関税率と今後の削減スケジュールを確認することができます。

原産地規則と並び、この譲許表は実務でFTA、EPAを活用する場合の中心となる規定と言えます。



原産材料か、非原産材料なのかわからない場合の扱い

製品を作る際に多くの材料や部材、部品を用いているケースでは原産材料なのか、非原産材料なのか全くわからないものが混ざることもあります。どちらかわからないもので、裏付けのとれない、もしくは取りようのないものについては「非原産材料」としてカウントすることになります。より正確に言えば、証拠書類(エビデンス)がそろっていないものは、たとえ目の前で製造しているところを証明できたとしても、非原産材料にするしかありません。

というのも、FTAやEPAにおいて関税の優遇を受けることが出来る条件の一つとなっている原産材料とは「特定原産品」のことであり、協定を締結している国同士のいずれかの原産品であることが「書類で確認できるもの」のことです。

書類は公的なものがあればそれに越したことがないですが、自社内での原産割合の計算書や、部品を購入しているメーカーから発行してもらったサプライヤー証明書などもこれらを裏付ける書類となります。こうしたものが一切なく、発行してもらうことも困難なものは、非原産材料としてカウントします。

これは原産品であることを証明する原産地規則のうち、関税分類番号変更基準であっても、付加価値基準であっても同じです。



中間材料|日本メキシコ経済連携協定の付加価値基準ルール

これは日本メキシコ経済連携協定に特有の付加価値基準採用時の救済規定の一つです。ロールアップによく似ている規定です。内容としては、製品を作るのに使った部品などを中間材料に指定すると、その中間材料の総額が原産材料の価格としてカウントできるというものです。

ロールアップと異なるのは、品目ごとに中間材料に指定するためのルールが設定されている点です。また、中間材料は原産資格を持つ内製材料(自国で製造された部材)であることが求められます。

工業製品の多くは中間材料抜きには成立しないものも多いため、一考の価値があります。

FTA協定、EPA協定によってはこのように協定独自のルールを設定することも珍しくありません。協定条文の必要箇所の精読が必須といわれる所以です。



トレーシング|FTA、EPAの付加価値基準のコスト算定

付加価値基準(VAルール)を計算する際に適用することがある考え方の一つで、原産性を上げるために使うことが出来る救済規定の一つでもあります。

ロールアップでは非原産の材料が含まれる原産部品(原産資格を持つ部品)でも、原産部品全体の価格を「原産材料の価格」として計算することが出来ました。反対に、ロールダウンでは、原産材料が含まれる非原産認定の部品(非原産資格の部品)は、含まれている原産材料の価格を最終製品の原産割合計算の中に含めることが出来ませんでした。トレーシングはこのロールダウンの救済版とでも言うべきもので、非原産に認定された部品に、少しでも原産材料が使われている場合、その原産材料のコストを部品価格から差し引いたものをこの非原産部品の全体価格とすることが出来るというものです。

このトレーシングの規定を採用した日本のEPAは以下の国との協定になります。

  • メキシコ
  • マレーシア
  • インドネシア
  • ブルネイ
  • フィリピン
  • スイス
  • ペルー

ただし、この手法は計算や証明にコストや手間もかかることが想定されます。複数の会社から部品や材料を購入している場合、それらの中間材料も自社で内製しているのであれば、トレースも可能かもしれませんが、複数のメーカーが入ってくると厳密に適用させるのはなかなか難しいルールです。



ロールダウン|FTA、EPAの付加価値基準の計算

付加価値基準(VAルール)を使う場合、最終製品を作るのに使った部品の中身についても、原産と非原産の割合が見えてきます。この際、部品が「原産品」の要件を満たしていなかった場合、この部品価格全体を「非原産品」として計算する方法がロールダウンです。たとえ非原産とされていても、原産材料を使っているので、その分だけカウントしたいということができません。この反対の原理をもつルールであるロールアップとセットで採用されていることも多いルールです。

日本が締結する経済連携協定では以下の協定が品目によってこのロールダウン方式を採用しています。

  • チリ
  • タイ
  • ベトナム
  • インド
  • ASEAN

ロールダウンとロールアップがともに採用されている場合は、部材の中身に含まれる原産材料だけをカウントして計算に組み込むことはできなくなります。



ロールアップ|FTA、EPAの付加価値基準

付加価値基準とは、非原産の材料を使って製品を作るときに原産資格割合を決めるためのルールの一つですが、この基準に適合しない場合、さらにいくつかの救済措置のためのルールが設けられています。工業製品の多くは、部品点数が多く、また材料・部材の生産国も多くの国に分散していることもあり、実質的に自国内で製造している物品であるにもかかわらず、原産性がないという判定にならないように配慮された仕組みの一つです。

このロールアップは、VAルール(付加価値基準)内の考え方の一つという見方も出来ます。例えば、非原産の材料を使って国内で加工した部品があります。この部品を使って製品を作っている場合のコスト計算の際、厳密に言えば、非原産材料が混ざっている部品から原産の割合だけを加算することになりますが、ロールアップの考え方は、この部品全体の価格を原産品扱いにします(但し、この部品自体が原産品の要件を満たす必要あり)。

以下のような価格構成になっている場合、輸出製品の価格400のうち、200が原産材料の価格とします。

非原産材料の価格100→原産材料の価格200の部品→輸出製品の価格400

この反対の考え方にロールダウンがあります。こちらは救済規定ではなく、よりシビアに非原産材料の価格が上がりやすい計算方法です。

なお、日本が締結するEPAでは以下の国との協定がロールアップ方式を採用しています。

  • メキシコ
  • マレーシア
  • チリ
  • タイ
  • インドネシア
  • ブルネイ
  • フィリピン
  • スイス
  • ベトナム
  • インド
  • ペルー
  • ASEAN

ここでひとつの疑問があります。ロールアップを何度も使えるのであれば、理論上は、たとえばネジ1本から数千万の設備につながっていくような「ロールアップ」もありうることになります。このロールアップが使える使用回数についての制限は協定などには規定されていませんが、実務上は、数回程度というものが一般的です。



付加価値基準(VAルール)

主要な原産地規則のうちの一つで、ある物品がその国の原産品であるということを認定するためには、「その国での加工によって一定以上の付加価値を加える必要がある」というものです。この基準は、原産地規則のなかでもほとんどあらゆる貿易協定に採用されている非常にポピュラーなルールです。

英語版の協定文では、Value Addedと表記されることが多いですが、他にもRVC(Regional Value Content):(日本・メキシコ経済連携協定や日本ASEAN経済連携協定)、LVC(Local Value Content):(日本・ベトナム経済連携協定)、VNM(Value of Non-originating Materials):(日本・スイス経済連携協定)などの呼び名があります。上記のようにこの付加価値基準の表示方法は、協定によって異なるのですが、留意すべきは、原産資格が何十%以上なのか、非原産比率が何十%以下なのかという点です。どちらの基準となっているのかは協定によります。

これを間違えると、正しい判定ができなくなるため、日本以外の国同士の協定を活用する場合は、特に協定条文をよく確認し、この付加価値基準の定義と表記を確認しておくべきです。

EPA、FTA適用のための原産資格算出の3つの計算方式

この付加価値基準における「原産資格の割合」の計算方法としては、主に以下の3つがあります。日本が締結しているほとんどの協定については、いずれの計算方式でも利用可能となっていますので、原産地規則を満たせるもので製品によって使いやすいものを選ぶことができます。

なお、このVAルール適用のために使った計算書、非原産材料を輸入した場合はその際のインボイス、原材料や部品購入時の見積書などは場合によっては特定原産地証明書の発給機関である日本商工会議所への提出が必要となるケースもあります。このため、こうした書類は取引が終わってもすぐに破棄するのではなく、照会のあった場合に備えてしばらく保管しておく必要があります。

控除方式

価格から非原産材料の価格を引く計算方法です。これによって価格に対する原産材料の割合がわかりますので、協定で定められた原産品割合を超えていれば、原産資格を得ることが出来ます。

日本が締結するEPA協定では、この「価格」はFOB価格を使います。日本-スイス経済連携協定だけはEx-Works(工場渡し価格:港、空港までの輸送コストを含まず、工場から出荷する時の価格、通常の国内価格)を価格としています。

なお、非原産材料の価格は、一般的には協定外の第三国からの輸入を想定している為、CIF価格を使います。非原産材料を国内業者から仕入れている場合やCIF価格がよくわからない場合は、実際の購入価格で計算します。

原産材料、非原産材料ともに部品点数が非常に多く、個別に実際金額を追うことが出来ない場合は、自社内の会計基準による標準原価や予定原価で計算することも認められています。(※この場合は、実際の金額との差異を別途チェックしておくことが求められます。)

{(製品価格【FOB】- 非原産材料【CIF】)/ 製品価格 } x 100 = 原産品の割合

ほとんどの協定ではVA40%の基準が採用されていますが、これは付加価値基準で40%、つまり原産資格割合が40%以上ということです。原産材料の割合が40%以上ということではありませんので注意が必要です。非原産の材料を多く使っていても、それらを国内で加工等することで、原産資格を得ることも出来ます。

積み上げ方式

使った原産材料、生産コストを足していく方法で、各協定で定められている価格に対する原産割合を超えるまで足し続けていきます。例えば、VA30%基準が適用されているのであれば、その物品のFOB価格の30%を超えるまで原産材料と生産コストを加算していきます。

{原産材料の合計+生産コストの合計(非原産材料の材料費以外の加工コストも含む)+輸送コスト+利益}/ 製品価格(FOB)

非材料費から割り出す方式

輸出価格に含まれる非材料費(生産や加工にかかったコスト+利益+輸送費など)が一定以上の割合になっていることを示す計算方式です。計算としては、価格から、原材料(原産品、非原産品の双方)の合計を差し引くことで、非材料費の合計がわかります。

{製品価格 - 材料費の合計(原産、非原産ともに)}/ 製品価格

材料以外の費用の合計がその国における「付加価値」とみなすことが出来るため、その価格から原産資格を証明する方式です。

この計算で原産資格に満たない場合は、原産材料の価格を足りない分だけ加算することも可能です。この場合は、原産材料の納品書・請求書などの金額が記載されたものが必要となります。

ただし、この基準では、生産を自国でまったく行っていない場合でも、満たしてしまうことがあります。この場合は原産品とはならない点に留意が必要です。各協定では、国内で行っても原産性を付与することにはならない作業を規定しています。たとえば、分解してあるものを組み立てるだけの作業、個別にパッキングされているものをセットにする作業、梱包作業、仕分けや改装、輸送・保管上の理由から物品の状態を保つ為に必要な作業(乾燥、冷凍、塩水漬け)などです。

価格変動などによる原産資格喪失のリスク

なお、上記3つのいずれの計算方法でも、付加価値基準(VAルール)を使う場合は、基準をぎりぎりでクリアしている場合、為替変動や原材料の価格改訂などによって唐突に原産割合が変わってしまうことがあります。非材料費アプローチを使う場合、輸送費の価格変動なども影響を受けます。

価格変動の激しい部材を使っており、原産割合が頻繁に変わってしまう場合、余裕を見た基準を設けて、多少の変動では原産資格を失わないようなルール設定にしておくのも一つの方法です。

実際に、価格変動によって原産品資格が無くなってしまった場合は、別途日本商工会議所に届け出る必要があります(原産品判定の取消し依頼)。

なお、「原産」としてカウントする部品や材料については、その原産性を示す証拠書類が必要になりますので、こうしたものがそろいにくい場合、材料以外の費用(非材料費)のみで、付加価値基準を証明する方法もよく使われます。利益を多くとっている場合、設計や工賃などの明細が出ていて、材料費よりも比率が高そうな場合に効果的です。



販売している製品の原産国、原産品の証明を顧客から求められた

昨今増加している、顧客から「原産地証明書」を発行してほしい、取得してほしいといわれる事例です。海外向けに輸出されている物品の場合、相手国との間で締結しているFTAやEPAなどの協定によっては、関税の減免が受けられることがあります。これは、協定を結んだ国同士で、ある品目について関税を撤廃もしくは減免を約束したもので、大きなものでは20%~40%以上もの関税がなくなったりすることもあります。100万の品物であれば、20%の関税のかかる品物の場合、客先が支払う費用は輸送関係費を除いても「100万+20万(関税)+関税以外の諸税(国によって異なる)」となります(※貿易条件・取引条件によっても異なります)。関税減免の効果が如何に大きいか、ボリュームや単価が高いものであれば容易に想像がつくかと思います。

こうした協定の適用を受ける為には、協定国の「原産品」であることを証明する必要があります。例えば、日本からインドへ輸出する物品についてならば、日本国原産の品物であるという証明書が必要です。また、これに先立ち、関税の減免を受けようとするのであれば、まずその物品が関税減免の対象となっている品目かどうかをHSコード、譲許表(関税をどのようなスケジュールで下げていくかを取り決めた表)を使って調べます。

該当するのであれば、税率を確認し、この協定を使うことで本当にメリットがあるのかを確認します。そして、実際に協定の恩恵を受けようとするのであれば、特定原産地証明書と呼ばれる、日本から輸出するものであれば、日本国原産であるという公的な証明が必要になります。

この原産品の判定方法にはいくつかの方法があり、最終的に、公的な証明書である「特定原産地証明書」は日本商工会議所から発行してもらうことになりますが、選んだ判定方法によってはこの前段階で、部材を供給したメーカーの証明書が必要となるケースがあります。

これはサプライヤー証明と呼ばれるもので、構成品がどの基準(原産地規則といいます)で原産品といえるのかを示したものです。製品についての原産性、原産資格を書面で証明して欲しいといわれた場合は、このケースの場合もあります。(※このメーカーが独自に発行するサプライヤー証明を作るにあたっては、これらの原産品の判定の記録、根拠などを記した書類は相手国から日本の経済産業省を通じて照会があった場合は、提示する必要がありますので、保存しておくことが求められます。)

もう一つは、自社製品をそのまま商社等の取引先が海外へ輸出しているケースで、原産品であることを証明して欲しいといわれる場合です。この場合は、メーカーとして日本商工会議所に原産品判定を所定の手順を踏んだ上で依頼し、この証明書を輸出者が使ってもよいとする「同意通知書」を発行することで輸出者が特定原産地証明書を使うことが出来るようになり、EPAなどの適用を受けることができるようになります。

なお、特定原産地証明書は、「輸出者」か「生産者」にしか発給申請が許されておらず、輸出者が行う場合は生産者と同等の情報が入手可能であるという前提となりますので、これは主としてメーカーの仕事となります。



協定や条約における発効日と締結日の違い

FTAやEPAなどの協定を活用する為には、その協定がすでに「発効」している必要があります。締結が完了した協定を即適用できるわけではなく、中には発効が完了しないまま、何年も保留となっている場合もあります。発効していない条約や協定はまだ有効になっていないということです。

通常は、締結してから発効までに間があるため、実際に発効しているかどうかの確認が必須です。特に、多国間協定、例えばASEANと他国(他地域)との協定は、ASEAN加盟国が個別に発効を行う為、発効日はすべての国でずれていることもあり、中には特定の協定については締結したものの発効に至っていない国があります。多国間協定の場合は、締結主体がいつ発効したのか、個別に調べておく必要があります。

また、協定内で指定した品目については一定の年数をかけて税率を低減していくというタイプのルールを設けている場合は、「発効日」から適用が可能となるケースがほとんどです。例えば2012年8月1日発効日のもので、5年後に関税撤廃、それまでは毎年均等に税率を下げていく、というルールの場合は、1年目の低減税率を使うことができるのは2012年8月1日からです。そして1年目からもう1ランク税率の下がった2年目の低減税率が適用されるのが、2013年1月1日からになります。5年かけて撤廃という場合は、2017年1月1日から関税がゼロになります。

日本以外の国家間、地域間同士の協定を調べる場合、当該国の外務省や貿易省、商務省や通商交渉を担う行政組織が発表している締結情報と発効を情報を区別して考える必要があります。

「signed」とされているものは、署名(批准を含むこともある)したことを意味しますが、厳密には締結した日付といえます。締結した後、即発効というパターンはこれで協定が有効となります。

WTOの場合、発効されているものについては慣習的に「in force」という表現を使います。また国によっては「in effect」という言い方もなされますので、こうした表現が使われている箇所から「発効日」を知ることが出来ます。「発効されているかどうか」「いつから発効しているか」はFTAやEPAなどの関税減免措置を受ける場合には最初に確認しておくべき事柄といえるかもしれません。