FTAのデメリット

FTAは両国の貿易を促進させることを目的とするものであり、基本的にはFTA協定を結んだ国同士で関税をかけない、もしくは関税を減免するなどを主目的としています。

関税の減免というとピンとこないかもしれませんが、例えば、多数の部品を1000万円ほど輸出するとして、現地の税関にて関税が20%かけられると、この時点で1200万円となってしまいます。また、現地に入る品物には関税のほかにも、通常、付加価値税やその国が定める各種税がかけられるため、輸送費用も鑑みると、国内売りよりも価格競争力がなかなか出にくくなります。

FTAはこうした関税率をゼロもしくはそれに近づけようとするものであり、デメリットがなさそうですが、現状、多くの国では自国の特定の産業を保護する為に、外国からあまりに安いものが入ってこないよう、関税による障壁や関税以外の規制など(非関税障壁)を行っています。

FTAは双方の利益に資するべきものですが、仮に全品目についてすべて関税率をゼロにすると、貿易上大きな偏りが出てくることはもちろん、自国での特定産業の担い手がいなくなってしまったり、今後国の基幹産業となるべく育成していた産業が育たなくなったりといった問題も出てきます。

したがって、FTAのデメリットとは、協定内容によっては、今まで守られていた自国の産業が衰退する可能性やある分野では自国で特定の産業が育たなくなる可能性があるという点です。

手厚い保護なしでは存続し得ない産業を丸ごと切り捨て、国際的な競争力を維持できるものだけを優遇するという考え方もありますが、失業率の向上や国内産業の空洞化など弊害も多く、食糧の安全保障など一概に数値だけではかれない要素もあります。

また、自国の産業育成や保護のために関税以外にも、法令によって制限をかけることも行われており、FTAの上位版であるEPAとなると、これらの規制緩和や撤廃も含めて交渉を行うため、日本では参入が許可されていなかったり、非常に参入しにくい壁をつくって自国の会社に有利にしていた部分が一気に崩れ、産業によっては会社の倒産などにより、業界の構造が一変してしまう可能性もあります。

どの品物についての関税をどれだけ下げるのか、またどういうスケジュールで下げていくのか、品目によって保護が必要なのでこうした関税の免除の対象からは除外する品目はどれにするのか、といったことを交渉によって決めていきますが、この過程で、自国と相手国との間で様々な物品とその産業が天秤にかけられ、そのどれもについて利害関係者にとっては直接商売に影響する話となります。

日本の場合であれば農林水産省と経済産業省の提示する案が異なるのはこのためです。国によっては、例えば韓国などは農業ではなく、工業品の輸出でもっている国であり、国益の為、ある程度の犠牲もやむなしとの考えで強力にFTAを進めてきています。どちらがよいのか、というのは簡単に結論付けることができず、立場が違えばもう片方の立場を尊重することはできないという構図をしています。FTAの上位版であるEPAの一種であるTPPの議論が難航しているのもこうした背景によります。