関税分類番号変更基準は別名、CTCルール、CTC基準とも言います。これは「Change in Tariff Classification」の頭文字から取られています。
代表的な原産地規則のうちの一つで、この基準を使って「原産性」を証明する場合は、もう一つの主要な原産地規則である「付加価値基準(VAルール)」とは違い、コスト計算が不要なため、こちらの基準だけでもよいとの記載が協定に書かれている場合は、使い勝手がよいかもしれません。但し、物品によっては付加価値基準は満たせても、この基準は満たせないというものもあるため、個別の検討が必要です。
CTCルールの基本原則
関税分類番号変更基準は、輸出しようとしている物品が協定国内で加工されることで、物品の分類が変わっていることを証明する基準です。こう書くとわかりにくいですが、すべての物品には「関税分類番号(別名、HSコード)」という番号がつけられており、この番号はカテゴリーごとに命名規則が決まっており、6ケタまでの番号は世界共通のものになります。
例えば、非原産の材料(協定と無関係な国から仕入れた原料や部品)を複数品目使って製造したものを輸出するとします。このとき、非原産の材料として使った物品の番号が、輸出するために作った品物の番号と変わっていれば、この物品を「原産品」と認定することができます。番号が変わる=何らかの加工が国内で行われたと解釈されるからです。
関税分類番号はどこまで変更している必要があるか
この基準には、程度に応じて主に3つの基準があります。番号が変わっていなければならないというルールの原則に違いはありませんが、番号がどこまで変わっている必要があるのかという点に差異があります。
前述の通り、関税分類番号(HSコード)には、番号の振り方が決まっています。世界共通部分である6ケタの番号は、先頭から2ケタが「類」、先頭から4ケタが「項」、先頭から6ケタが「号」と呼ばれます。
例えば、鉄鋼製のナットであれば、HSコードは7318.16となっていますが、このうち、先頭から2桁の73が類、7318が項、7318.16が号となります。第73類は鉄鋼製品をカテゴライズしたもので、その下に7318が「鉄鋼製のねじ、ボルト、ナット、コーチスクリュー、スクリューフック、リベット、コッター、コッターピン、座金(ばね座金を含む。)その他これらに類する製品」という括りで存在します。そのさらに下に「7318.16」のナットという分類が設けられています。
こうしたことから変更の桁数が多いほど、より適用しやすくなります。上記の例でもし類変更を求められた場合、加工前の状態が73類の鉄鋼製品に分類されていてはいけないことになります。一方、4桁の項変更であれば、原材料として無関係な第三国から仕入れた状態の部材が7318以外の4桁番号に分類されていればこの基準を使うことが可能になります。
なお、EPA協定、FTA協定の原産証明では6ケタまでしか使いません。
- HSコード(関税分類番号)の2ケタ変更(CCルール)
- Change in Chapterの頭文字をとり、CC基準ともいわれます。HSコードの大分類でもある「類(Chapter)」が変わっていなければならない為、関税分類番号変更基準としては、最も厳しいルールとなります。
- HSコード(関税分類番号)の4ケタ変更(CTHルール)
- Change in Tariff Headingの頭文字からつけられたCTHルール、もしくは項変更基準ともいいます。先頭から4桁の番号が変わっていればよいとする基準です。このレベルでの変更は多くの協定で使われています。
- HSコード(関税分類番号)の6ケタ変更(CTSHルール)
- Change in Tariff Sub Headingの頭文字からCTSH基準、もしくは号変更と呼ばれます。関税分類番号変更基準のなかでは最も適用しやすく、ゆるいルールであると言えます。たいていの物品は、何らかの加工をするとHSコードの6桁レベルでは加工前と加工後で違うものになります。
すべての構成部品についての変更を申告する必要はない
関税分類番号変更基準ですが、輸出者や最終製品のメーカーが使われているすべての部品について一つ一つ調べて申請するとなると、品物によっては一つの製品で数十万点ものリストとなり、日々の実務で使うことはとてもできません。
このため、このCTCルールでの特定原産地証明書の発給を受けようとする場合は、その物品の構成要素すべてを記載する必要はなく、慣習上、大きな「まとまり」で申請することが可能です。ただし、その「まとまり」を構成する部材の原産性については、個々の部品メーカーなどに依頼し、サプライヤー証明書をもらっておく必要があります。
またCTCルールでは、あくまで非原産の材料を使って製造した物品についてのみの原産性証明のためのルールであるため、原産品の部材は確認の必要がありません。検討から除外します。
非原産材料については、すべてHSコードが変わっている必要がある
製品によっては、非原産材料の一部が、完成品と同じHSコードがつけられていることもあります。この場合、原則としてはこの関税分類番号変更基準は使えません。この基準は、非原産の原材料・部品はすべて番号が変わっている必要があるからで、一つでも部材のHS番号が完成品とバッティングしている場合はNGとなります。ただし、この場合も「僅少の非原産材料(デミニマス規定)」と呼ばれる救済規定があります。これは、重量や価格が完成品の一定割合以下の部品の場合、たとえ非原産の部材であっても、この基準から除外し、カウントしなくてもよいというものです。
「原産」の範囲
現在のEPA協定もしくはFTA協定の多くでは、「累積」と呼ばれる補足規定が存在します。これは、原産品の定義を拡張する一種の救済規定で、例えば日本とインドネシアとの間で締結したEPA協定であれば、日本で製造している部材にインドネシア産の部材を使った場合、このインドネシア産の部材を「日本原産」として解釈できるというルールです。この場合、CTCルールは非原産材料のみについてHS番号が変更していることを求めるルールであるため、累積が適用された相手国産の部材については、完成品から番号が変更していなくてもCTCルールが適用可能となります。極端な例かもしれませんが、非常に関税が高くされている物品で、かつ価格もそれなりにする物品で、どうしても日本では原産資格を得ることが出来ず、完成品と同じHS番号になってしまう製品の場合、その部品を相手国産のものにすることで、CTCルールの適用が可能となります。