設備や機械を生産ラインとして輸出するケースでも、場合によっては経済連携協定を用いて現地側の関税の減免を行うことができます。現地税関側で、問題なく通関できる単位であれば特定原産地証明書の発行に何か制限があるわけではありません。
製造設備の多くは数千万円~億円単位の金額となるため、関税率によっては、輸入側にとって非常に大きな負担となります。
ただ、この生産ラインや製造ラインの丸ごと輸出する場合、関税の減免を受けるかどうかに関わり無く、現地側の税関での対応は国によって区々ですが、基本的には別々の「機械」として個別にインボイスに記載し、輸入申告すべき、となります。製造ラインを丸ごと輸出するとなると、それに含まれる多くの機械や備品も付随して動くことになりますが、この中に様々なものが紛れていても、通関行政上、記録に残らず把握もできないようなケースが容易に想像できます。これを無条件で認めていては、税関の意味をなさず、多くのものが附属品として密輸のように当該国へ流入もしくは流出することになります。
複数の機械設備から成り立つ製造ラインや生産ラインを丸ごと輸出し、それが「一つのもの」として扱われるためには各国の税関の判断によりますが、おおむね、以下のような特徴を備えている必要があります。
・同一工程で使うような機械・設備群であり、ラインを構成している機械を単独で用いても意味をなさない
・ラインを構成している機械を組み合わせて使った場合、それが一つの設備として機能し、現地に設置すればそのまま生産ラインとして使うことが出来るようなもの
・輸出する単位となる生産ラインは、動かすのに必要な機械や備品類が欠けておらず、同一の出荷単位の機械類をあわせることでラインとして完結している(船便を分けるなど、構成する要素が別々に出荷されていないこと)
生産ラインとして輸出するメリットは、インボイスが簡素化できるという事務的な理由や通関のコスト的な部分以外では、経済連携協定がより適用しやすくなることがあります。
これは付加価値基準を使う場合ですが、単独の機械部品では原産地規則を満たすことが出来ず、日本原産とならないものでも、一つの設備や生産ラインとして送った場合、日本での付加価値が基準値を超えることがあるからです。
EPAのルール上、これを目的に合理的な組み合わせではないものをラインとするわけにはいきませんが、一つのラインを丸ごと輸出するような場合で、ラインを細切れにしてしまうことで経済連携協定が適用できなくなるのであれば、まとめて一つの設備として送ることも検討価値があります。