税関による事後調査とは

輸入を定期的に行っている企業に対して、税関の調査官が直接企業へ訪問し、法で定められた関税がきちんと支払われているかどうかを調べるための制度です。実際、輸入を行っている企業のうち、7割前後は何らかの申告漏れを指摘されます。

2年に1度訪問の場合と、3年に1度訪問の場合などケースバイケースですが、税関より調査については事前に連絡がきますので、実際の調査の際に貿易書類がどこにいってしまったのかわからないということのないよう、一箇所に集めておくか、すぐに取り出せるようにしておくことが望ましいです。企業規模や輸入量にもよりますが、おおむね1週間程度の調査となります。

事後調査では、インボイス、パッキングリスト、契約書、輸入許可通知書、運賃明細、保険料明細、価格表などの貿易書類や総勘定元帳や台帳、法人税確定申告書、消費税確定申告書などの経理系の帳簿類を税関の調査官が調べていき、適宜、必要に応じて書類の内容や背景について質問を行います。ときには、どういう商売なのか、商流や仕入れ価格の決定方法、加工方法、材料支給方法、関連した国内取引の内容、見積もり方法、ロイヤリティなどにも質問が及ぶこともあります。

この調査では、輸入関税と消費税がきちんと支払われているかを見ます。

日本では関税の支払いは、輸入者が申告した内容に基づいて行う申告納税制度を採用しているため、品物の分類が正しいか、正しい金額で申告がなされているか、漏れがないのかをチェックする制度である事後調査が存在します。

調査官は、その企業の輸入記録をすべて持参しますが、これだけでは書類の背景や書類からは読み取れないことはわからないため、実際の書類を見ながら、関係者に質問をして確認をすることになります。

関税の追加徴収は過去3年分まで行えることになっており、3年前までの貿易書類はすべて保存し、閲覧できる状態にしておく必要があります。ただし、隠蔽などを行っているような事情があれば、最大7年まで遡ることができます。内容によって、正しい関税額のほか、過少申告加算税無申告加算税重加算税延滞税が課せられます。

調査官からの質問で、その場で回答できなかったことは、後日、宿題として社内や関係会社等含めて確認した後、窓口となる調査官に回答することになります。事後調査の最終日には、調査官から講評をしてもらう機会もあり、どういう点に問題があったのか教えてもらえます。修正申告含め、不足分の税額についての計算は、別途通知が来るので、それに基づいて支払い手続きをします。

多くの輸入者が見落としがちなのが、「加算要素」と呼ばれる、関税額に本来足しておかねばならない部分です。

例えば、中国の工場で作らせるために材料や部品を無償で支給した場合、日本へ輸入する際にはこれらの無償支給した価格についても価格へ加算して申告する必要があります。一見、簡単そうですが、日々多くの貿易を行っていると、無償支給分がどの輸入品に対応するのか容易にわからなくなってきます。

また、不具合による値引きや代替品、価格の調整などで、通関時のインボイスの価格とは別に費用請求などを行っているケースでも、別支払いしている分があるのであれば申告の必要があります。

なお、当サイトは主に取り上げている輸出時の経済連携協定(EPA)を用いた関税減免についての照会は事後調査ではなく、現地税関から日本の経済産業省、日本商工会議所を通じて行われる「検認」と呼ばれる調査で行います。

日本へ輸入する分については、当然、原産地証明書がきちんとあるかどうか、原産地規則がきちんと守られているということは前提ですが、いずれも特定原産地証明書を発行する現地側での調査が必要となるため、その内容についてまでは事後調査で行っているという話は聞きません。

経済連携協定を用いて関税減免を受ける場合は、輸入申告時に必要な書類がなければNGとなるため、基本的に申告漏れという事態にはなりません。あるとすれば、条件を満たしていないのに原産地証明書を発行するケースや、物品の分類を故意に変えるといったものですが、物品とHSコードの対応関係については、通関時にも調べることになっていますが、よほどのことがない限り、原産地基準を満たしているかどうかの証明等は行う必要はありません。

なお、これらについても偽装、隠蔽、仮装などがあったと認められた場合は、当然、重加算税となりますが、当該企業の経済連携協定の利用停止などの可能性も出てきます。