生産そのものが日本から国外へシフトしつつある中、日本企業や日本の技術開発を行う本社が資金を回収する手段として主な手段となっているのがロイヤリティです。端的にいえば、自社で開発した技術を貸すので、現地での生産・売上げ等に応じて一定のパーセンテージをかけてその使用料金を払ってもらうというものです。
自社の海外子会社や合弁会社、顧客企業などを相手にロイヤリティを使った資金回収のスキームは活発に行われていますが、盲点になりがちなのが、そうした会社から物品を輸入した場合の関税へロイヤリティ分を加算する処理です。
関税は、「物品」にかかるものであるため、こうした無形のもの自体にはかからないのですが、ケースによっては物品そのものの価格にロイヤリティ分を上乗せして輸入申告する必要が出てきます。
税関の訪問調査である事後調査でも、このロイヤリティで資金回収を行っている企業に対しては必ずといっていいほど質問の出る項目です。輸入取引の条件の中にロイヤリティの支払いが入っている場合、これも関税における課税価格の加算要素となります。
ロイヤリティの支払いは、ほとんどの場合、貿易外の請求書にてやり取りを行うため、物品のやり取りに付随するものであっても(その物品の売買に関連したロイヤリティであっても)見落としがちで、これが理由で追徴課税になることも珍しくありません。この理由の一つが、ロイヤリティの支払いがあるケースでも、関税がかかるもの(課税価格に加算すべきもの)とかからないもの(課税価格には非加算のもの)とがあるからです。
ロイヤリティの支払額を輸入品の課税価格に加算しなければならないケースは、売り手が何らかの形でライセンスに関わってくる場合です。例えば、以下のようなケースが考えられます。
- 売り手自体がライセンスを持っていて、売り手が買い手からロイヤリティの支払いを受けている場合
- 売り手にライセンスを許諾している企業Aがあり、その企業Aに買い手からロイヤリティを支払っている
- 売り手と買い手の間に、ロイヤリティ支払いに関する取り決めをしている(ロイヤリティ支払合意が、取引条件に入っている)
- 売り手とライセンスをもつ企業Aとの関係が特殊な関係であり、買い手は企業Aに対してロイヤリティを支払っている(売り手と企業Aの間に資本関係がある、下請工場など)
- 売り手が、ライセンスをもつ企業Aのサブライセンサーの許諾を受けており、買い手と売り手でサブライセンス契約を結んでいる。買い手と企業Aとの間でライセンス契約を結び、ロイヤリティ自体は買い手が企業Aに支払っている。
言い換えれば、「売り手」と「ライセンスを持っている企業(買い手のロイヤリティ支払い先)」との間に何の関係も無いケースについては、ロイヤリティは課税価格の加算要素とはなりません。
無関係であるというのは、具体的に言えば、「売り手」がロイヤリティの支払いについては一切関知していないケース、「売り手」と「ライセンスを持っている企業(買い手のライセンス支払先)」の間に許諾関係が無かったり、ロイヤリティー支払いに関する取り決め・契約が無かったり、再許諾が無かったり、両者間に特殊な関係や下請け関係がないようなケースでは、この物品の貿易におけるロイヤリティは買い手側の課税価格に加算すべき要素とはならないということです。