関税の目的とは

関税の目的は国の税収を上げるという見方もありますが、関税により自国の産業保護や市場経済の混乱の防止等が主なものと言えます。

自国よりも安い人件費や生産コストで大量に物品を作ることができる国から、大量の物が無関税で入ってくると、国によっては、ある産業が消えてしまうことになります。ある産業分野が消えてしまうことで、その産業を顧客としていた別の産業へも影響は波及し、雇用がなくなる、という直接的な影響だけでなく、将来的にその物品すべては輸入に頼らざるを得なくなるという問題もあります。

したがって、ほとんどの国では品目と、輸出国(原産国)ごとに関税率を個別に設定し、国内の産業を守ることをしています。ただし、これを過度に進めれば、保護主義に陥り、貿易が活発化せず、ほとんどの国が内需だけで経済をまわしていかねばならなくなります。したがって、貿易の自由化と保護主義のバランスを取ることが世界的にも課題となっていました。

近年、大きな流れとしては、WTO(世界貿易機関)を設立し、過度の保護主義に陥らないよう、また貿易のルールを適切に定め、それらを各国が守って公平な貿易を進めていけるよう活動を行っています。ただ、加盟国が多くなり、各国の利害が容易に一致しないようになり、貿易の自由化をすべての国の合意で進めていくことが困難になっています。

例えば、農業国は農産物の輸出を進めたいのですが、先進国の多くは関税だけでなく、様々な「保護」により、自国の農業を守ろうとしています。一方でこうした国は工業品の輸出を進めたいので、こうした品目について関税の低減を求めています。開発途上国の多くは、工業製品の完成品やその部品類が大量に無関税で入ってくると、自国の工業が育たず、十分な競争力もつけることができないため、あまり品目を絞って少しずつ関税を下げていきたいところです。

このように、多くの国が関わればかかわるほどに、どの国にとってもメリットのある貿易の自由化を実現することが困難になっており、実際には、貿易自由化の取り組みはWTOというほぼ全世界が関わる場ではなく、二国間や多国間、地域間で交渉が行われる経済連携協定や自由貿易協定、特恵貿易協定、関税同盟など、当事者間のみで適用される場での交渉へとシフトしつつあります。

関税率を変えるだけで、その国の産業構造にも影響を与えることになりますが、関税以外にも非関税障壁といって、自国の産業を守る方法はいくつかあり、現実的には、これらと併用することで、国内産業の保護がはかられており、貿易自由化を進める取り組みではこれらの非関税障壁の撤廃もあわせて行われています。