FOBコストとは、製品を貿易によって売買する際、製品の単価(売価)に対して、FOB諸経費を上乗せした価格やこの上乗せ分のコストのことを言います。これは国内売買とは違い、輸出のときにもろもろ経費がかかるためです。
FOBは貿易条件の一つで、売り手が買い手に対して、たとえば「FOB OSAKAの価格、2000USDで売りたい」と提示した場合、製品の売価には、自社の工場や倉庫にて仕上がった製品を梱包し、それを輸送トラック等に積んで、大阪港に搬入し、輸出通関の手続きを完了させ、船(航空機)へ積み込むまでの費用の合計が含まれていることになります。この際、コンテナを利用する場合、コンテナへのバンニング費用もかかりますし、港での諸経費もかかります。
ちなみに工場から出した状態の単価がEx works(エックスワークス)価格となります。これには国内輸送費も入っていませんので、このEXW(エックスワークス)の価格に、輸出側の国の港や空港で、積み込みまでにかかる費用の合計がFOBコストというわけです。
FOBコストは、数量に関係なく固定でかかる費用(ミニマムでかかる費用)+貨物が増えればそれに連動して増加する費用の二つの側面があります。このため、大量の貨物が動くと見込んでFOB価格(FOBでの単価)を安く提示してしまうと、数量が減ってしまった場合、FOBの費用を回収できなくなる可能性があります。これは、相手がFOB価格の見積もりを欲しいといってきた場合には常に念頭においておくべきことのひとつです。
というのも、売り手が自国からの船・航空機へ積載するまでの費用は、どちらにしても売り手か買い手のどちらかが負担せねばならず、買い手は自分たちの条件よりも安い条件で売り手がこの部分をやってくれるのであれば、この部分を自分たちで負担しない貿易条件へと変えたいと考えるからです。
大型の機械や設備でもない限り、国内輸送費用はあまりしませんので、このFOB価格をよく検討しないで量産価格を決めてしまうと、あとで原価割れギリギリだった、あるいは原価割れしていたというようなことが実際にはあります。
通関手続き費用そのものが廉価ですむため、FOBコストには見えないコストがありますので、これを見過ごすとあとで痛い目にあうことがあります。前回はこのくらいの価格だったので、今回もそれくらいだろうという目算も危険です。コンテナの数がひとつ違ってしまえば、単価に乗せるべき価格もそれだけ変わります。
確実なのは、日ごろ取引を行っているフォーワーダーに、仕向け地と輸送したい製品の荷姿や重量、数量、体積などを伝え、集荷から輸出通関完了までのFOBコストの総合計算出を依頼する方法です。一回だけの輸送であればこれでもよいのですが、継続した輸出になり、毎回輸送する量が変動するような場合、つまり輸送重量・梱包が毎回ばらつくような場合、これでは「FOB価格」を前もって売り先に伝えることができません。
量産用途にて定期的に輸出を行っている企業の場合、FOBコストを算出する際に、FOB係数などを割り出して計算するケースがあります。これはグループ間など自社の海外法人への材料供給や部品供給といった取引でよく見られますが、昨年1年間の輸送費、梱包費、通関費用の合算と、同じく1年間の出荷金額の合計金額から、金額に対してFOB諸経費がどのくらいかを割り出す方法です。たとえば、1年の「売買金額が5000万円」だったとして、これら5000万円分の「梱包・荷材・国内輸送・通関費・FOB諸経費」の合計が700万円だったとします。この場合、700割ることの5000で0.14となります。これをFOB係数14%と設定し、国内売価にこの14%を上乗せすれば、「だいたい」FOBコストが上乗せされるという方法です。
この係数には、あらかじめ利益のパーセンテージを盛り込んでおくこともできます。
いうまでもなく、昨年の合算値を使用している時点で、この方法はその出荷分のFOBコストを回収できているわけではないため、最後の取引のときにFOBコストを正確に回収できないリスクがあります(多めに回収してしまう可能性もありますが)。
この方法を使うのは部品の点数や種類が大量にあり、個別にFOB価格を算出することができないような場合です。企業によっては送り先(同一の客先)に対して一律のFOB係数を設定して、1年間や半年間はその係数を単価設定に使い続けるというところもあれば、出荷単位、あるいは箱単位にすることもあります。
FOBコストの例
- 梱包費用(パレットへ積み込んでラップ巻き等する場合も含む。コンテナ利用の場合、バンニング費用も。)
- 荷材・資材用(ラベル、梱包材、包装材料など)
- 国内出荷にいたるまでの作業費用全般
- 国内での保管費用等
- 港までの国内輸送費、輸送にかかる諸経費
- 通関費用(輸出にかかる書類作成費用等)
- 港にてかかる諸経費