Form DはASEAN諸国間の物品の貿易に使う原産地証明書で、発行機関はASEAN各国にあり、国によって取得方法・申請方法に違いがあります。
現在はより利用しやすくするため、電子化が進んでおり、インターネットを通じてオンラインで発行できる国も増えつつあります。
以下はForm Dの国別の発行機関です。
国 | 発行機関、組織 |
---|---|
インドネシア | 各地方の商業省(Ministry of Commerce)地域事務所 |
タイ | 商務省外国貿易局(Department of Foreign Trade, Ministry of Commerce) |
ベトナム | 商工省輸出入局(Export-Import Department, Ministry of Industry and Trade) |
マレーシア | 国際通商産業省(Ministry of International Trade and Industry) |
フィリピン | 関税局輸出調整部(Export Coordination Division, Bureau of Customs) |
シンガポール | シンガポール税関(Singapore Customs) |
ATIGA(AFTA)によるフォームDを発行するASEAN諸国の特徴としては、日本と異なり、原産性輸出前検査がある点です。これは原産地証明書発行の1つ手前のステップで、事前にその商品に原産性があるかどうかを調べる為の予備検査で、国によってかかる日数に違いがあります。予備検査に通った旨の申請をし、正式な原産地証明書発行依頼をすることになります。
この予備検査は、実際には書類上の審査によって行われることが多く、例えば、材料表や製造原価明細、製造工程表、資材・原材料の購買伝票(インボイス)、材料の出所を証明する為のサプライヤーの申告状、工場ライセンス(要求された場合)などの書類です。またこれらの書類を精査した上で、実際に工場や会社へ訪問し、判定する場合もあります。
ただ、この予備検査ではあくまで「製造工程」と「原価構成」に主眼が置かれ、これによって自国の原産性を付与できるか、を判定しています。
なお、発行機関の一覧を見れば分かるとおり、ASEAN諸国の原産地証明書発行は、政府機関が行っています。日本や他の国で商工会議所や貿易協会のような非政府組織が行っているケースと違いがあります。
例:タイでフォームDの原産地証明書を取得する手順
発行機関は、商務省外国貿易局 (Department of Foreign Trade, Ministry of Commerce)で通称、DFTと呼ばれる部署です。
1.まずDFTのサイトで輸出者登録をします。ここでセントラルユーザー名を取得し(輸出入者カード:Exporter-Importer Cardを得る)、原産地証明書発行の手続きに入ります。
< http://reg-users.dft.go.th/>
2.原産性の輸出前検査を依頼
必要な書類を揃え、原産性の輸出前検査を申請します。
HSコードの類が1~24のものについては次のステップでの発行依頼の際にこの輸出前検査を行います。
3.輸出者が原産地証明書の発行を依頼
2の証明書を受け、これを提出することで原産地証明書の発行を依頼できます。
なお、原産地証明書を発行したら、必ず相手方、つまり送り先で輸入通関をするときに、関税の減免を受ける旨の手続きをして、原産地証明書と提出する必要があります。このオンラインで発行が済んだからといってそのまま原産地証明書が輸出先の国で適用されるわけではありません。
せっかくフォームDを取得していても、輸入通関時に原産地証明書が提示できなければ関税減免とはなりませんので注意が必要です。
なお、関税還付の制度を持つ国の場合、一定期間内であれば、原産地証明書を遡及発給してもらい、すでに払い込んだ関税を払い戻してもらう方法もありますが、国によってはこの手法が必ず使えるわけではなく、弊害も伴うことがあるため、関税還付申請せずともよいように輸出者と輸入者の間でフォームDをどのように申請・発行し、受け渡すのか打ち合わせておく必要があります。