OEMしている場合でも経済連携協定やFTAは使えるか

OEMや製造請負会社等に生産自体を委託しているような場合、自社のブランドを用いた生産であり、設計や仕様決定、材料の選定までも自社で行っていたとしても、実際の生産者はその製造委託先となります。

その製品を自社で輸出するのであれば生産者をそのOEM先と記載して、自社が輸出者として特定原産地証明書の判定依頼から発給申請まで行えるため、何の問題もありません。

ただ、その製品をまた別の商社に国内で販売し、その会社が輸出しているような場合には、OEM先へ製造を委託していると自社が「輸出者」扱いとなってしまっているため、その特定原産地証明書を商社が使うことができなくなります。これは商社に製品の原価構成や使用材料などの詳細を伏せた状態で、減免のための特定原産地証明書を利用することだけを許可する「同意通知書」がシステム上、発行できないということです。同意通知が生産者から輸出者に対して発行されるものになるため、OEMの会社であれば同意通知を発行できますが、彼らは商流に入っていないため、顧客とやり取りしてもらうわけにも行きません。

OEM(実際の生産者)→自社(特定原産地証明書を申請)→商社(輸出者)

こうした場合、OEM先が自ら特定原産地証明書の判定依頼を行うか、商社が行うかの二択になります。多くの場合、こうしたケースでは商流の関係でOEM先と商社がやり取りしてもらっては困るため、どうしても自社を生産者扱いにし、自社から商社に対して同意通知書を発行する必要があります。

こうした要望に応える為に「みなし生産者」と呼ばれる制度が2年ほど前にできました。これは事前に日本商工会議所に対して、製造委託先と自社との委託関係・請負関係が証明できる書類を提出し、自社を「みなし生産者」として生産者扱いにしてもらうという方法です。必要な書類は、ケースによりまちまちですが、一般には業務請負契約や製造委託契約といったOEM先と自社との契約関係を示すもの、またOEM先に対して、仕様決定や材料調達や支給などを行っていることがわかる帳票、注文書、納品書、生産指示書等を提示して、自社がみなし生産者といえるかどうかを最終的に経済産業省に判断してもらうことになります。

みなし生産者となった場合には、自社が生産者扱いでEPAの申請ができますので、同意通知も輸出企業に対して発行することができるようになります。