付加価値基準とは、非原産の材料を使って製品を作るときに原産資格割合を決めるためのルールの一つですが、この基準に適合しない場合、さらにいくつかの救済措置のためのルールが設けられています。工業製品の多くは、部品点数が多く、また材料・部材の生産国も多くの国に分散していることもあり、実質的に自国内で製造している物品であるにもかかわらず、原産性がないという判定にならないように配慮された仕組みの一つです。
このロールアップは、VAルール(付加価値基準)内の考え方の一つという見方も出来ます。例えば、非原産の材料を使って国内で加工した部品があります。この部品を使って製品を作っている場合のコスト計算の際、厳密に言えば、非原産材料が混ざっている部品から原産の割合だけを加算することになりますが、ロールアップの考え方は、この部品全体の価格を原産品扱いにします(但し、この部品自体が原産品の要件を満たす必要あり)。
以下のような価格構成になっている場合、輸出製品の価格400のうち、200が原産材料の価格とします。
非原産材料の価格100→原産材料の価格200の部品→輸出製品の価格400
この反対の考え方にロールダウンがあります。こちらは救済規定ではなく、よりシビアに非原産材料の価格が上がりやすい計算方法です。
なお、日本が締結するEPAでは以下の国との協定がロールアップ方式を採用しています。
- メキシコ
- マレーシア
- チリ
- タイ
- インドネシア
- ブルネイ
- フィリピン
- スイス
- ベトナム
- インド
- ペルー
- ASEAN
ここでひとつの疑問があります。ロールアップを何度も使えるのであれば、理論上は、たとえばネジ1本から数千万の設備につながっていくような「ロールアップ」もありうることになります。このロールアップが使える使用回数についての制限は協定などには規定されていませんが、実務上は、数回程度というものが一般的です。