特定原産地証明書は遡及発給できるか

国同士や地域間で締結されているFTAやEPA協定に基づいた特別に安い関税やゼロ関税を適用させる為には、輸入申告時に、「特定原産地証明書」が必要です。協定にもよりますが、この証明書がないと、一般的には通常のMFN税率と呼ばれる関税率が適用されます。

出荷の関係や申請に必要な準備などの関係で、この特定原産地証明書が、輸入通関までに相手国へ届けることが出来なかった場合、前にさかのぼって発給を受けることができます。この制度を遡及発給といいますが、こうしたさかのぼった発給には協定によってルールが定められています。

日本の場合、EPA協定を各国と締結していますが、遡及発給が可能である旨定めた条項があり、通常船積み日から1年以内であれば遡及発給が可能です。

これは特定原産地証明書の申請だけでなく、原産性の審査そのものを受けていないものについても「遡及」することができます。例えば、ある物品Aをタイへ向けて継続して輸出しており、あるとき日本とタイの間のEPA協定を使うと関税がゼロになることが分かりました。そこで関税還付してもらうため、以前に出荷した分についても特定原産地証明書を発行してもらうため、申請を行うといったことが可能です。

ただし、関税還付制度は、国によって異なり、どのような場合に認めるのかの判断は区々です。関税還付制度はあるものの、関税還付を事実上行っていない国もあるため、日本側で遡及発給できるからといって以前に払い込んだ税金が返ってくるわけではない点に注意が必要です。