原産地規則のロールアップには使用回数制限はあるか

原産地規則として、付加価値基準を採用している経済連携協定(EPA)の場合、ロールアップと呼ばれる特殊なルールを採用している協定があります。これは救済規定とも呼ばれ、適用がしづらい物品について、この規定を使うことで、原産性を確保できる場合があります。

具体的には、輸出品となる製品を作るときに、日本製と外国製の部品の複数を組み合わせて作られている部品Aを使っているとします。この部品Aが、協定の原産地規則により「日本製」ということになった場合、部品Aの中に含まれている外国製部品の価格もすべて日本製扱いにするというものです。

このルールを使うと、例えば、VA基準40%以上のものを原産資格とする製品があったとします。このうち、この製品価格の40%は部品Aで占められていた場合、部品Aがロールアップを使って日本の原産性を示すことができれば、原産性の証明は完了です。さらに、部品Aのなかで材料Bが価格構成の40%を占めており、材料Bも日本製と海外製のやはりロールアップを使って日本製ということであれば部品Aが日本製ということになり、製品によってはかなり上流まで遡ってしまうことができます。

このようなことが起きる可能性が高い案件としては、1次サプライヤーから2次、3次、4次と遡っていっても、大元の源流に近いサプライヤーでの加工賃や作業費・設計費などの非材料費の比率が非常に大きい場合です。こうした場合、この源流でのエビデンスがあれば、下流へ何段階かおりていったとしても、日本の原産資格を持ったまま、という状態になります。複雑な工業製品や設備・機械などでもこうした価格構成は見られます。

では実際に何十、何百と遡っていき、すべてでロールアップを適用した結果、小さなボルト1本の日本原産性が証明できれば、大型設備そのものの日本原産性が証明で来てしまうことも理論上ありえます。

ロールアップが使える回数について日本の経済連携協定では、使用制限回数についての記載はありません。ただ、こうした無制限に救済規定を使うことについては、このルールの持つ本来の趣旨から外れてしまうこともあり、あくまで補助的な使い方が望ましいとされています。

ロールアップとは反対に、一旦ある部品が非原産となった場合は、その中に含まれる原産品部分の価格についてもすべて非原産扱いになるというロールダウン規定も、協定によっては適用されることになります。

ロールアップ規定のある協定

  • 日メキシコ協定
  • 日マレーシア協定
  • 日チリ協定
  • 日タイ協定
  • 日インドネシア協定
  • 日ブルネイ協定
  • 日フィリピン協定
  • 日スイス協定
  • 日ベトナム協定
  • 日インド協定
  • 日ペルー協定
  • 日アセアン協定

ロールダウン規定のある協定

  • 日チリ協定
  • 日タイ協定
  • 日ベトナム協定
  • 日インド協定
  • 日アセアン協定