経済連携協定や自由貿易協定に違反した場合の罰則

経済連携協定や自由貿易協定において、この中のルールを破った場合の罰則に関する規程が協定本文に盛り込まれることは稀で、いずれも協定を結んでいるそれぞれの国内法にて対処されているのが実情です。日本であれば、「経済連携協定に基づく特定原産地証明書の発給等に関する法律」「関税法」「関税定率法」「関税暫定措置法」とそれぞれの施行規則や政令、省令、通達などがその国内法となります。

また、貿易協定をルールを破って用いたような場合には、輸出する側、輸入する側の双方に何らかの罰則が課せられることが一般的です。例えば、原産地証明書そのものを偽造発行したような場合や、日本とタイの経済連携協定を用いて、日本からタイへ物品を輸出する際、中国製の物品を日本製と偽って特定原産地証明書を発行させたような場合等が考えられます。

日本の場合は、関税法による罰則のほかに、「経済連携協定に基づく特定原産地証明書の発給等に関する法律」によって、証明書を発行する輸出側にも罰則が課せられます。30万円もしくは50万円の罰金が課せられますが、あまり悪質なケースであれば、その企業の経済連携協定利用停止措置というものも考えられます。

もっとも、この協定の本来の趣旨が協定を結んだ国同士の間で「貿易を活発化させること」にあるため、日本側での罰則は緩くなっていますが、輸入側でも以下のような過少申告や無申告に該当しますので、輸出金額によっては莫大な罰金となる可能性もあります。日本と違い、タイのように課税価格の倍がけで反則金を徴収するような国の場合、設備機械を1億円分送ったり、数年間にわたって量産に使う材料を数億円日本から支給していて罰則となった場合、減免効果をはるかに上回る罰金となります。

各国における関税法違反の罰則
国名 罰則の概要
タイ 関税法に基づき、物品価格の4倍の罰金及び税金もしくは10年以下の懲役、あるいはその両方。通報者に報奨金を出す仕組みあり。過少申告、無申告で罰則が異なる。過少申告の場合は、加算税として関税差額の2倍の支払と、延滞税として関税差額の1%/月。またVATも未払いとなっていることから、こちらも追徴。無申告扱いとなった場合、物品の売買価格(取引価格)に輸入関税とVATを加算した金額の2倍から4倍が罰金となる。
インドネシア 課税評価額を偽って関税額を過少申告していたと税関当局に判断された場合、最高1000%までの罰金。関税優遇の誤使用や違反に対しては、最高500%の罰金。税関担当者によって対応が異なること、透明性や公平性の面で問題視されている。
ベトナム 罰金の最高額は7,000万ドンである。過去への遡及は5年間までとされている。税関総局によると、「故意でない書類上のミスも、検査後であれば罰則の対象になる。ただし、書類上の簡単なミスは修正可能。
日本 過少申告加算税、無申告加算税のいずれかと延滞税。最高税率となるのは、無申告の上、仮装や隠蔽があったと認定された場合に課せられる重加算税で、不足税額の40%が加算。また、延滞税と消費税が課せられる。