ドイツはEU随一の経済大国ですが、EU設立・加盟後は単独での自由貿易協定は締結せず、EUとして通商協定の交渉や締結を行っています。EU各国はEU圏外の国に対しては、同じ関税率をかけるため、物品を識別する為のHSコードについてもEU内で共通のCNコードという分類基準を使っています(6ケタまではHSコードと同じ)。
関税同盟でもあるEUは、一方で域外の国や地域とも自由貿易協定やそれに相当する条項を含む協定を締結・交渉しています。
EUは協定相手との互恵関係だけでなく、政治・制度についてもこだわりを見せる為、例えばASEANとの交渉では、制裁対象となっていたミャンマーの軍事政権もASEAN加盟国でもあったことからASEANそのものとの交渉を取りやめています(もっとも、これは政治的な理由だけではないとの見方もあります)。ミャンマーが制裁対象から外れると、ASEANとの交渉を再開することにも合意しています。
こうした他国の内政に深く関わる協定としては、EUが積極的に進めてきた安定化・連合協定や、通常の連合協定にもっとも特徴的に表れています。安定化・連合協定は、EU加盟候補国に対し、経済上、貿易上の便宜を図るかわりに、政治・経済、人権などの政策の改革を求めています。
EU加盟国は、単独で関税減免などを約束する貿易協定やFTA、EPAの類は締結しないため、EU圏内との自由貿易協定が成立するためには、EU加盟国すべての合意が必要となっています。
また、GSPの枠組みを用いることで、開発途上国からの輸入品の大幅な関税減免ができるのもEUの特徴です。ただし、開発途上国に当てはまる国の見直しは当該国の経済レベルによって見直しが定期的に行われています。