輸出取引の売上計上基準についてはいくつかのパターンがあり、会社により採用されているルールが異なる場合もあります。
税務の上では、「商品を買い手に引き渡したとき」が原則となりますが、貿易の場合、国境を越えるための諸々の手続きがあり、どの時点を持って商品を引き渡したとなるのか複数の考え方があります。また、所有権の移転が取引条件によりまちまちであり、厳密には定めがない取引も多く、どの時点をもってこの原則を満たすのか判断が分かれるところです。したがって、実務の上では所有権移転と売上計上基準が一致していなくとも問題はありません。
また、貿易条件であるCIFやFOBなどのインコタームズと連動させておく必要もないため、売上計上する基準については自由に決めることができます。
ただし、IFRSによる会計基準の場合、収益の会計処理について定めたIAS第18号(IAS 18 Revenue)の部分にて、物品の販売による収益は「所有に伴う重要なリスクが売り手から買い手に移転」したときに認識される旨記載があります(正確には、これ以外にも4つの要件をすべて満たした場合に認識される)。この「所有に伴う重要なリスク」に貿易における「危険負担」も含まれると解釈するのであれば、FOBとDDUといったインコタームズでは、それぞれ売上処理すべき時点が変わることになります。FOBやCIFであれば、船積基準で問題ないということにありますが、DDU、DDPなど危険負担が相手国に入ってからという貿易条件の場合、船積時点での売上計上では矛盾が生じることになります。
輸出取引で使われる売上計上基準
出荷日基準
自社、自社の生産工場から出荷された日に売上計上する基準です。国内取引でも売上基準を採用されているケースはよく見られます。いつ通関するのか、貨物の積み込み日・B/Lの日付はいつかといった点は一切考慮せず、あくまで自社から物品が出荷された日付に計上する方法です。いつ出荷したのかは自社の記録だけから判別が可能です。
船積日基準
船積みされた日付に売上を計上する方法です。。輸出する物品が自社を出発し、港・空港等へ搬入され、通関手続にかけられた後、船や航空機に積載されますが、この積み込まれた日付となります。船積書類であるB/Lに記載されている日付そのもので、B/L dateとも呼ばれます。輸出貿易を行っている企業ではよく使われる売上基準です。
FOBやCIFといった最もよく使われる貿易条件では、船積みの時点で「危険負担」が輸出側から輸入側へ移るため、取引における「引き渡し」と解釈されることもあり、この方法がよくつかわれますが、所有権の移転とはまた別になりますので注意を要します。
なお、工場出荷日と船積日に月ずれが発生した場合は、在庫計上されるのが一般的です。
通関日基準
通関された日(輸出通関が完了した日)に売上を計上する方法です。通関後に、船積みされますので、通常は船積日基準よりも若干前の日付となります。税関から出される輸出許可通知書など、通関手続きが完了したことがわかる書類で判別がつきますが、船積日基準のほうが一般的です。
船積書類作成日基準(B/Lの作成日を基準)
こちらも船積日基準とは異なり、船積みが完了した日ではなく、B/Lを作成した日付を基準として売上計上する方法です。
相手方の港で陸揚げされた日を基準
貿易では国内よりも輸送リードタイムがかかるため、場所によってはかなりあとにずれてしまいます。貿易条件に従い、相手への受渡日をもって計上する方法ですが、あまり見ません。