関税を脱税するとどうなるか

関税の脱税は思いのほか多く発生しており、実際には意図せずに申告金額が低くなってしまう過少申告の例がとても多いといわれています。貿易に関する知識の欠如のほか、輸入と輸出とでも必要な知識が異なることから、会社でも適切な判断を行うことができる部門がなかったり、そもそもどこに聞いてよいのか誰も知らなかったりという場合もあり、本来支払うべき金額が支払われていないというケースは珍しくありません。

意図的に行っている場合は別ですが、通常、関税の不足が判明するのはインボイスの価格が間違っていると気づいたときか、税関による訪問調査である事後調査のときです。

適切な関税が支払われず、後で分かった場合、税関からは当然ペナルティ、罰則が課せられますが、それには以下のようなものがあります。

前提としては、まず、正しい税額を支払うことはもちろんですが、それに加えて以下の加算税と延滞税が別途かかります。これら4つのペナルティとなる税を附帯税と呼びます。4つのうち、延滞税はどのようなケースでも必ずかかるものです。過少申告加算税と無申告加算税はどちらかひとつが課せられることになります。またこれらのいずれか2つのケースで、隠蔽や仮装などをしていたような場合は、これらのかわりに重加算税が課せられることになります。

課税処分ができる期間は3年間となるため、通関してから3年間は遡ってペナルティを受ける可能性があります。貿易に関する書類の保存期間が最低3年といわれているのは、これも関係があります(隠蔽工作などしていた場合はさらに7年まで遡って調査が行われます)。

これらは日本へ輸入する際の罰則ですが、反対に、輸出の際であれば、現地側で罰則を受けることになります。

よく見られるのが、インボイスの価格を実際の価格より大幅に安くして輸出するアンダーバリューと呼ばれる手口です。

例えば、100万円の評価額(税率30%)のものであれば、輸入申告の際、30万円を支払う必要があり、関税と実物の費用だけで受け取る側は130万円になってしまいます。これを、100万円の評価額のところを100円にして輸出すれば、関税が30円になってしまいます。

なお、どの国の税関もプライスレンジ、もしくは税関レンジ表と呼ばれる「相場表」のようなものを持っており、さまざまな物品の価格帯がわかるようにしています。

悪質なケースでは、日本へ物品を輸入する際も通関インボイスの価格を売り手と買い手で示し合わせ、本来の売価とは異なる、大幅に安い価格で提示しているような場合は重加算税を課せられる可能性があります。

また、事実と異なる原産地証明書を発行してもらい、それを用いた税率を適用させるような行為も、重加算税の対象となる「隠蔽や仮装」に該当する可能性があります。

海外取引先の中には、関税を減らすために意図的に通関時の評価額を下げて欲しい、つまり通関インボイスに不当に安い金額を表記して、請求金額と分離して欲しいという依頼を堂々としてくるところもありますが、そうしたことには応じないとはっきり断ることが大切です。

関税について不明な点があれば、最寄の税関に問い合わせることになりますが、輸入でお世話になっている通関業者を通じて確認することもよく行われます。関税は、ある部分においては、直接その製品を輸入する者、製造に関わる背景を知っているものしかわからない部分があるため、自ら疑問に思ったら、積極的に確認していくことが大切です。