Excise dutyとは

Exciseとは物品税のことで、指定した物に対して課せられます。たとえばインドでExcise Dutyといえば、国内で製造されている製品に対して12%乗せられています。製品によってはこの税率が変わります。タイなどでは、自動車や奢侈品、電気製品等品目を指定して課せられています。

一般に、物品税は製造者が支払う税金となっており、購入者が支払う付加価値税(VAT)とは性質を異にします。

物品の販売時等にかかる消費税は、付加価値税の一種ですが、消費に対しての課税です。物品税であるExciseは製品の製造に対して掛けられる内国税の一種です。

ただ、関税とともに税関が所管している国もあり、輸入品に対し、関税をのせた金額に対して物品税がさらに掛けられることは品目によってはよくあります。物品税と付加価値税を分けて双方徴収する場合もあり、輸入する際のコストを検討する場合、関税以外にもこうしたコストがかかることを念頭におく必要があります。



taxとvatの違い

Taxとはさまざまな税金を総称する大分類としての「税」を意味する言葉であり、VATは、Value Added Taxの頭文字をとったもので、税のうち間接税に分類される税金の一つです。日本の消費税もこのVATのくくられる税の種類です。つまり、VATはTaxの一部です。

海外等の表記や表示で、VATとTAXが使い分けられているような場合にはそれらが何を意味するのか確認の必要があります。TAXがまったくかからないという表現であれば、通常は、VATも含めて、諸税一切がかからないと解釈できます。一方、VATだけ免税ということであれば、このVAT以外の諸税についてはかかる可能性があるということです。

税金の種類とその率は国によってまちまちですが、その国で購入したことで直ちに発生するものと、製造した者にかかるもの、国境を越えるときにかかる関税のような類のもの、何らかの利益を出した時に支払うもの、事業活動・消費活動によって課せられるもの、特定の品目だけにかける税等、国により制度が異なる為、何かの税が安かったとしても別の税金が高い、ということもあります。

旅行等で購入したものを運んだり、貿易などで物品を送ったり受け取ったりするような場合には、関税がかかる品目があり、これとは別に、その国に入る段階でVATを課せられることが一般的です。輸入時のコストはこうした諸税を合算してはじめて明確になります。

Taxがいくら、と言われたような場合はどの税金がいくらなのかわからないと輸入時の総コストはわかりません。VATもTaxの一種ですが、これ以外にも国によっては輸入品や国内流通品にかける税金は種類がありますので、VATだけでも物品の総額(輸入にかかるコスト)というのは正確にはわかりません。



ACFTA|中国とASEANのFTA

ACFTAとは、中国とASEAN10カ国(タイ、インドネシア、ブルネイ、マレーシア、フィリピン、シンガポール、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)の間で締結されている多国間の自由貿易協定で、この協定で使われる専用の原産地証明書の通称名をとってform e(フォームE)と呼ばれたり、協定名の略称であるACFTAの名称でも呼ばれます(ASEAN-China Free Trade Areaの頭文字を取ったもの)。

カバーする経済圏・貿易圏が中国とASEAN全域という規模の大きいものとなっており、多くの企業が生産拠点を構える中国と東南アジアの間での物品のやり取りにも頻繁に活用される協定となります。

協定の構成は貿易の柱となっている「物品貿易」と「サービス貿易」「投資」の三本立てになっており、FTAの基本的な内容を網羅的に備えている協定です。経済連携協力ほどの踏み込んだ内容にはなっていませんが、物品貿易・サービス貿易で両地域に経済的恩恵をもたらしています。また、この協定は当初から枠組み協定(Framework Agreement)という形で合意できた部分から先行して発効し、関税を低減していく形をとっています。このためのアーリーハーベストプログラム(早期実施分のプログラム)も協定内に盛り込まれています。

ACFTA(中国-ASEAN)を実際に利用する場合の多くは、物を中国-ASEAN間で取引する際に、関税を減免させるための手続きになるかと思います。金額が大きくなる貿易品の場合、輸送費よりも関税額が高くなることも珍しくないため、コスト低減を喫緊の課題としている企業にとって利用価値が高い協定といえます。製造コストの安い地域へと生産拠点を移したものの、原価が思った以上に下がらないというような場合は、人件費ばかりが着目されがちですが、現地へ送っている各種部品・材料の関税コストもしばしば問題となる項目です。物流費用の影に隠れて見えなくなりがちなコストですが、関税を課せられる品目は業績に関係なく輸入のたびに確実に費用がかかるため、売上が苦しいときほど特に負担になってくる費用でもあります。中国、ASEANは日系企業にとっても生産拠点が集約されているエリアでもあるため、発効当初から注目度の非常に高い協定です。

ACFTAにおけるノーマルトラックとセンシティブトラック

多国間の協定であるため、ASEANの加盟国それぞれが中国に対して各物品の関税の低減スケジュールを取り決めています。品目や国にもよりますが、関税低減のレベルは大きく、2015年までにはノーマルトラックと呼ばれる一般的な関税低減対象品のすべてについて関税をなくす取り決めになっています。ASEANのなかでも先進的な国となるASEAN6(タイ、インドネシア、ブルネイ、マレーシア、フィリピン、シンガポール)と中国にいたっては、2010年でノーマルトラックに括られた品目の関税は撤廃されています。

ACFTAにおける関税撤廃の概要
ASEAN6カ国と中国 (タイ、インドネシア、ブルネイ、マレーシア、フィリピン、シンガポール) ASEAN4カ国(CLMV)カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム
ノーマルトラック  2010年で関税撤廃(例外品も2012年で完全撤廃) 2015年で関税撤廃(例外品も2018年で完全撤廃)
Sensitive track 2012年に関税を20%まで落とす、2018年には0~5%まで落とす 2015年に関税を20%まで落とす、2020年には0~5%まで落とす
Highly Sensitive track 2015年に50%以下まで落とす 2018年に50%以下まで落とす

国家間で関税の撤廃や低減についての話し合いを行う場合、通常、品物をいくつかのカテゴリーに分けて検討を行っていきます。これは国によって品目によっては関税を低減することができない品目があるためで、ほとんどの貿易協定ではこの点を考慮し、双方からそうした品目については特別の配慮が必要なため、関税の低減に時間を掛けたり、低減対象からしばらくは除外するなどの措置がとられています。

ACFTAの場合、双方とも積極的に関税を下げていく、いわゆる一般的な関税低減の対象品をノーマルトラック(Normal Track)と括り、すぐには大きく関税を下げることが難しかったり特別な配慮が必要なものをセンシティブトラック(Sensitive Track)とさらに高いレベルでの配慮が必要な高度センシティブトラック(Highly Sensitive Track)とに括っています。

互恵関税率についての規定(Reciprocal tariff rate treatment)

ACFTAは日本ではあまりなじみのない互恵規定とも呼ばれるルールが盛り込まれており、これは片方の国が関税の譲許を行っていたとしても、もう片方の国が同一品目についての関税譲許を行っていなかった場合、関税の減免を行わない、というものです。

ACFTAによる関税率を調べる場合は、この貿易対象国で輸送品が互恵規定にあたらないものかどうかを双方の譲許表を見て確認する必要があります。

ACFTAの特恵関税を受けられるかどうかは以下の2点のいずれかを満たす必要があります。

1.貿易対象となる物品が中国-ASEAN加盟国の双方でノーマルトラックに指定されている

2.双方で対象物品がセンシティブトラックだが、関税率が10%以下で輸入国の関税率よりも低い

通常、関税は貿易の輸入国側の情報のみで調べていきますが、ACFTAの場合は、輸出国がどのような関税譲許を行っているのかによって、輸入国側の対応も変わるため、留意が必要です。また、この協定が二国間のバイ協定ではなく、多国間のマルチ協定になっているため、ASEAN加盟国ごとにどのような品目について関税をなくしていくのか、あるいは守っていくのか違いがあります。

ACFTAの互恵関税率に関する条文

ANNEX 2
MODALITY FOR TARIFF REDUCTION/ELIMINATION FOR TARIFF LINES
PLACED IN THE SENSITIVE TRACK
に規定されている互恵関税率。

6. The reciprocal tariff rate treatment of tariff lines placed by a Party in the Sensitive Track shall be governed by the following conditions:
(i) the tariff rate for a tariff line placed by a Party in the Sensitive Track must be at 10% or below in order for that Party to enjoy reciprocity;
(ii) the reciprocal tariff rate to be applied to a tariff line placed by a Party in the Sensitive Track shall be either the tariff rate of that Party’s tariff line, or the Normal Track tariff rate of the same tariff line of the other Party or Parties from whom reciprocity is sought, whichever is higher; and
(iii) the reciprocal tariff rate to be applied to a tariff line placed by a Party in the Sensitive Track shall in no case exceed the applied MFN rate of the same tariff line of the Party or Parties from whom reciprocity is sought.

対象国

中国とASEAN諸国の計11カ国。

ブルネイ
カンボジア
中国
インドネシア
ラオス
マレーシア
ミャンマー
フィリピン
シンガポール
タイ
ベトナム

ACFTA発効日

物品貿易
2005年1月1日

サービス貿易
2007年7月1日

改訂状況

2012年の第3議定書がもっとも新しい改訂となります。
Third Protocol to Amend the Framework Agreement on Comprehensive Economic Co-Operation Between the Association of Southeast ASIAN Nations and the People’s Republic of China, 19 November 2012

発給機関

中国
国家質量監督検験検疫総局が各地に設置した出入国検験検疫局
Entry-ExitInspection and Quarantine(EEIQ) Bureau, General Administration of Quality Supervision, Inspection and Quarantine(AQSIQ)
2005年7月20日発効

シンガポール
税関 Singapore Customs
関税貿易業務部(Tariffs and Trade Services Branch = TTSB)
2005年7月20日発効
http://www.customs.gov.sg/topNav/hom/index.html

マレーシア
国際貿易産業省
Ministry of International Trade and Industry(MITI)
2005年7月20日発効
http://www.miti.gov.my/cms/index.jsp

タイ
商業省外国貿易局
Department of Foreign Trade(“DFT”), Ministry ofCommerce
2005年7月20日発効

インドネシア
商業省
IPSKA(商業省の委託機関)
“Instansi Penerbit SuratKeterangan Asal”

2005年9月30日発効
http://e-ska.kemendag.go.id/cms.php/form

ブルネイ
外務貿易省貿易開発局Department of TradeDevelopment(DTD), Ministry of Foreign Affairs & Trade(MOFAT)
2005年7月20日発効

フィリピン
マニラの関税局輸出調整部
Export Coordination Division, Bureau of Customs
又は各港の財務省下の税関輸出部 Export Division (ED) in district ports Bureau ofCustoms, Department of Finance
2005年7月20日発効

ベトナム
商工省管轄下の各地区の輸出入管理課
Regional Export-ImportManagementBureaus underthe Ministry ofIndustry andTrade (MOIT)
2005年7月1日発効

ラオス
商工省輸出入局の原産地証部門、及び地方の商工サービスオフィス
Certificate ofOrigin (CO)Division underthe Departmentof Imports andExports in theMinistry ofIndustry andCommerce,including allprovincial tradeand industryservice offices
2005年7月20日発効

カンボジア
商業省多国間貿易部MultirlateralTradeDepartment(“MTD”),Ministry ofCommerce(“MOC”)
2008年2月6日発効

ミャンマー
商業省貿易局Directorate ofTrade, Ministryof Commerce
2005年7月1日発効

ACFTAの原産地規則

一般規則と品目別規則の双方があり、HSコードごとに適用されるものが異なります。

一般規則(Annex 3 Rule 4 General Ruleの項目に記載)

原産比率 付加価値基準40%以上(非原産材料の割合がFOB価格の60%を超えない)

計算式

(非原産材料費+原産不明の材料費)/FOB価格 x 100% < 60%

非原産材料の価格は、輸入時のCIF価格か、加工が行われ最初に確認することができた支払い価格

品目別規則 Trade in GoodsのAnnex 3の末尾にあるAttachment B Product Specific Rulesに記載

日本での協定とは少々異なり、品目別規則にはExclusive RuleとAlternative Ruleの2カテゴリーあります。

A. Exclusive Rule/Criterion
この部分に分類されている品目は、表に記載の原産地規則に従います。基本的にHSコード51類(対象HSコード5103.20、5103.30、5104.00、5105.31、5105.39、5105.40)の6品目しかありません。

B. Alternative Rules
この部分に分類されている品目については、指定された品目ごとに記載されている原産地規則か、一般規則のいずれかを選ぶことができます。

関税分類番号変更基準(42品目)と、加工工程基準(424品目)の品目が列挙されています。AFCTAの原産地規則において、一般規則は付加価値基準(原産率40%以上)のみとなっているため、このAlternative Rulesの指定された品目については、CTC基準や加工工程基準を適宜選択することができます。

救済規定

累積

ACFTAでも使用可能です。輸入国、輸出国のいずれかの原産品は、双方の国にとっての原産品とみなすことができます。

ACFTAの協定条文

ACFTAの協定条文は、締結国の所管官庁のWebサイトやASEAN事務局のサイトで閲覧やダウンロードが可能です。日本からのアクセスが原因なのか、社内のネットワーク環境等が原因かは不明ですが、頻繁にアクセスできなくなることがあるため、以下にASEAN協定条文の元ファイルを参考までにアップロードします。ページ下部の情報リソースにリンクをはっていますが、シンガポールやマレーシア、中国の各政府のサイトや、ASEAN事務局のサイトなどのうち、シンガポールや中国のサイトは比較的安定して閲覧できます。

下表の条文の順番は、ASEAN事務局同様、新しい改定議定書が上に来る形になっています。
最初の枠組み協定である「Framework Agreement on Comprehensive Economic Co-Operation Between ASEAN and the People’s Republic of China, Phnom Penh, 4 November 2002」からはじまっています。

Joint Press Statements
文書名 概要
The Sixth Consultations between the ASEAN Economic Ministers and the Minister of Commerce of the People
ASEAN-China Agreement on Trade in Services Media Statement
Agreements
文書名 概要
Protocol to Incorporate Technical Barries to Trade and Sanitary and Phytosanitary Measures into the Agreement on Trade in Goods of the Framework Agreement on Comprehensive Economic Co-Operation Between the Association of Southeast ASIAN Nations and The People’s Republic of China, 19 November 2012
Third Protocol to Amend the Framework Agreement on Comprehensive Economic Co-Operation Between the Association of Southeast ASIAN Nations and the People’s Republic of China, 19 November 2012
Protocol to Implement the Second Package of Specific Commitments under the Agreement on Trade in services of the Framework Agreement on Comprehensive Economic Co-operation between the Association of Southeast Asian Nations and the People’s Republic of China, Bali, 16 November 2011
2nd Package of ASEAN-China Services Commitments (CONSOLIDATED)
Second Protocol to Amend the Agreement on Trade in Goods of the Framework Agreement on Comprehensive Economic Co-Operation between the Association of Southeast Asian Nations and the People’s Republic of China, Kuala Lumpur, 29 October 2010
Appendix 1
Appendix 2 輸入申告時に提示が必要となる、この協定専用の原産地証明書であるフォームEのサンプル。この原産地証明書であるform eの原紙が輸入のたびに輸出側から発行される必要があります。
Appendix 2a
Memorandum of Understanding between ASEAN and China on Strengthening Cooperation in the Field of Standards, Technical Regulations and Conformity Assessment, Cha-Am Hua Hin, Thailand, 25 October 2009
Memorandum of Understanding between ASEAN and China on Cooperation in the Field of Intellectual Property (English version), Thailand, 21 December 2009
Agreement on Investment of the Framework Agreement on Comprehensive Economic Co-operation between the Association of Southeast Asian Nations and the People’s Republic of China, Bangkok, 15 August 2009
Agreement on Trade in Services of the Framework Agreement on Comprehensive Economic Co-operation between the Association of Southeast Asian Nations and the People’s Republic of China, Cebu, Philippines, 14 January 2007
1st Package of ASEAN-China Services Commitments
Second Protocol to Amend the Framework Agreement on Comprehensive Economic Co-operation between the Association of Southeast Asian Nations and the People’s Republic of China, Cebu, Philippines 8 December 2006
Protocol to Amend the Agreement on Trade in Goods of the Framework Agreement on Comprehensive Economic Co-operation between the Association of Southeast Asian Nations and the People’s Republic of China, Cebu, Philippines, 2006
Attachment 1 — 10 of the Protocol
Agreement on Trade in Goods of the Framework Agreement on Comprehensive Economic Co-operation between the Association of Southeast Asian Nations and the People’s Republic of China, Vientiane, 29 November 2004
ANNEX I. Modality for Tariff Reduction and Elimination for Tariff Lines Placed in the Normal Track ページ17のAppendix 1から例外品も含んだ各国におけるノーマルトラックの一覧表。ASEAN 6と中国は2012年までに、CLMV諸国では2018年までに関税が完全撤廃されることになる品目のリスト一覧。ノーマルトラック品で、ACFTA輸出・輸入の双方の国でここに記載されている品目の貿易を行う場合、ACFTAにおける特恵関税を享受できます。
ANNEX II. Modality for Tariff Reduction/ Elimination for Tariff Lines Placed in the Sensitive Track センシティブトラックの対象品一覧。Sensitive listはAnnex 2内のAPPENDIX 1(ページ89から)に記載。Highly Sensitive listはAnnex 2内のAPPENDIX 2(ページ207から)に記載。関税減免に制限のあるセンシティブトラックの対象品一覧が掲載されています。Sensitive listとHighly Sensitive listの2種類が国ごとに掲載されています。ACFTAを利用する場合、片方の国で物品がこのセンシティブトラックに指定されている場合、条件によりMFN税率が適用となりますので、注意が必要です。
ANNEX III. Rules of Origin for the ASEAN-China Free Trade Area ACFTAの原産地規則が掲載されている部分となります。一般規則(付加価値基準)のほか、品目別規則(Exclusive rule, Alternative rule【関税分類番号変更基準か、加工工程基準】)が定められています。
Agreement on Dispute Settlement Mechanism of the Framework Agreement on Comprehensive Economic Co-Operation Between the Association of Southeast Asian Nations and the People’s Republic of China, Vientiane, 29 November 2004
Protocol to Amend the Framework Agreement on Comprehensive Economic Co-Operation Between the Association of South East Asian Nations and the People’s Republic of China, Bali, 6 October 2003
Appendix 1 – Rules Of Origin For The ASEAN-China Free Trade Area
Appendix 2 – Exclusion List Of A Party For Products Excluded From the Early Harvest Programme Under Article 6(3)(a)(i)
Appendix 3 – Specific Products Covered By The Early Harvest Programme Under Article 6(3)a(iii)
Framework Agreement on Comprehensive Economic Co-Operation Between ASEAN and the People’s Republic of China, Phnom Penh, 4 November 2002
Annex 1 アーリーハーベストの対象外品目についてのリスト
Annex 2 アーリーハーベストで対象となる特定品目についての国別対照表
Annex 3
Annex 4

ACFTAにおける協定締結各国の関税率

ACFTAに関する情報ソース、関連リンク

スタンドスティル条項|stand still

貿易協定や関税分野で使われるスタンドスティルとは、関税を現在の率から上げないことを約束するためのもので、自由貿易協定や特恵貿易協定の条文の中に設けられることがあります。stand still条項とも表記されます。

関税を下げる約束ではなく、これ以上は上げない約束というと一見奇異に感じますが、これには以下のような背景があります。

一般に、関税は各国で自由に設定することができる建前ですが、世界貿易機関(WTO)に加盟する160カ国の間では、WTOで合意されている上限関税率の範囲内ということになっています。もちろん、関税率をゼロにすることは自由ですが、一旦下げた関税率であっても、これらを拘束する条約などを結んでいない場合、その国にて上限関税率の範囲内で再度上げることも可能です。

これは自由貿易協定を結んでいる国であっても例外ではないため、一旦条約で関税を下げる取り決めをした場合、互いに再度その関税率を上げることができないように、協定条文の中にこのスタンドスティル条項を盛り込みます。また、これに関連し、MFN税率が貿易協定等の税率が安い場合、MFN税率を適用させる等の取り決めを結ぶ場合もあります。

特恵貿易や自由貿易協定などは基本的に通常の関税率となるMFN税率よりも安い税率にすることで貿易を活発化させようとする狙いがありますが、各国にとって保護したい品目もあり、そうした品目については関税率が下がるばかりではなく、状況によってあがる場合があります。こうした場合の防波堤の役割を果たすのがスタンドスティル条項というわけです。



日メキシコEPA協定|日メキシコ経済連携協定

日本・メキシコ経済連携協定は、日本が2番目に締結したEPA協定となります。日本が最初に締結したシンガポールとの協定では、同国がほとんどの関税を撤廃しており、日本が交渉する場合のネックとなる農産物の関税低減が交渉内容に入っていなかったことから、双方の締結国で互いに守るべき品目と輸出したい品目とを巡って、本格的な交渉がなされた最初の協定ともいえます。

メキシコ側は日本が守ろうとしている豚肉、オレンジジュース、鶏肉、オレンジ、牛肉についての関税低減を強く求めており、日本側は自動車、鉄鋼等の関税低減を求め、農業と鉱工業とで両者の利害は一致しませんでした。

結果として、メキシコ側は前述の自動車関連産業に大きく影響する鉱工業品の関税を下げていくことでまとまり、日本側も交渉時の重要5品目となっていた農産物については関税割当で対応することになりました。これは一定の数量までは低関税率で輸入を可能としつつも、分量が一定を超えると高関税をかけて国内への流入を制限する方法ですが、割当数量の調整により、弾力的に運用可能な方法でもあります。

こうした事情から、関税低減スケジュール表である譲許表に、関税割当指定されている品目が本格的に組み込まれている最初の経済連携協定となっています。

この日メキシコ協定は2005年に発効していますが、改定議定書という形で、協定内容の見直しも行われており、最新の内容は平成24年4月1日(2012年)に発効されたものとなります。ここでは、「市場アクセスの改善」と「認定輸出者制度の導入」の2点について改定が行われました。市場アクセスの面では、メキシコ側にて自動車部品とインクジェットプリンタ用紙の関税が撤廃され、日本側では、交渉時の重要5品目である牛肉、豚肉、鶏肉、オレンジ、オレンジジュース等について関税割当数量が拡大され、枠内税率の削減が行われました。

認定輸出者制度の導入とは、原産地証明書の発行を輸出者自らが行うことができる制度です。NAFTAなどでは一般的ですが、日本のEPAの適用に用いる原産地証明書は、今まで日本商工会議所に判定申請を行い、通過したものについてのみ発給申請を行う方式で、発給機関はあくまで「日本商工会議所」でした。この認定輸出者制度の場合、認定を受けた企業・個人が自己証明する方式です。残念ながら、日本では利用実績が少ないですが、将来的に締結される協定のなかに自己証明方式のみのものが出てくれば普及していくかもしれません。

日メキシコ協定の利用件数のほうですが、日系企業がひしめくASEAN圏に比べるとたしかに少ないですが、年々、少しずつではありますが増加しつつあります。経済産業省のデータでは、月間の利用件数(原産地証明書発給件数)は、直近のもので毎月600件前後~700件前後となっています。

メキシコはNAFTA(米国、カナダ、メキシコの自由貿易協定)の他、EUや中南米諸国など巨大な経済圏、貿易圏を構成する各国との間に自由貿易協定や特恵貿易協定等の地域間協定を締結しています。シンガポールやチリと並び、FTA大国の一つでもあります。
ただ、米国とメキシコの双方に生産拠点や製造会社をもつ会社の場合、マキラドーラの仕組みを用いた製造(日本と中国でいうところの来料加工、委託加工のようなもの)を使う傾向にあるため、一旦、米国に部材を入れて、そこからメキシコへ供給する、というルートになると日-メキシコ間の貿易協定は使う機会がなくなってしまいます。

日本はEUと米国との間で貿易協定を交渉中ではありますが、現時点では締結していないため貿易においては関税減免の恩恵を受けることはできません。一方で、日本からメキシコの生産拠点へ部品や材料などの生産資材を送り、完成品としてメキシコから米国やEUへ輸出されるというスキームを用いることで、関税をほぼゼロにすることができます。マキラドーラではなく、こうした手法で北米、南米、欧州への市場アクセスを確保している企業・業種もあります。

この協定の締結以前には、在メキシコの日系企業が米国やEUの企業と競争していく上で著しく不利な状況に置かれていましたが、協定発効後は、メキシコに生産拠点を置くことで、北米、南米、欧州へのアクセスが向上するとともに、政府調達への入札等の面でも同じ土俵に上がることができたといえます。

適用上の難点があるとすれば日メキシコ協定では、日インド協定と同様に、原産地規則を二つ(VA基準、CTC基準)満たしていることを求める品目があり、これらは実務上、品目によってはかなりの手間となります。具体的には、機械類の大部分を擁する84類、電気機器類の85類など日本からの輸出の多い工業製品が該当します。また、付加価値基準と関税分類番号変更基準のどちらでも選べる、というタイプの品目が少ないため、日本が締結する協定のなかでは原産地規則が厳しい部類になります。

日メキシコ協定の対象国

日本、メキシコ

使用されるHSコードのバージョン

HS2002

発効日

2005年4月1日

関税率が変わる日付

日本側(日本輸入時)、メキシコ側(メキシコ輸入時)ともに毎年4月1日に低減。関税の段階的引き下げ品目として設定されているもので、まだ関税がゼロになっていないものに限ります。

工業製品の多くは事実上、ほとんどが0%となります。メキシコのMFN税率も先進諸国に近いレベルでの低減を行っていますが、輸入時に掛けられる関税以外の諸税にVAT(付加価値税)16%があります。

関税の計算方法

メキシコ側の関税率

日本と同様に、CIF価格に関税率をかける従価税方式と、品目によっては従量税方式が一般的です。

VAT(付加価値税)が16%あるため、コスト計算についてはこの価格についても念頭に置く必要があります。メキシコのVATは輸入付加価値税(IVA)と呼ばれます。

(CIF価格+関税+税関手数料)x VAT(16%)となります。

税関手数料はCIF価格×0.8%で計算されます。

なお、冒頭でも述べたとおり、メキシコは世界の中でもFTA大国、貿易協定を多数の国・地域との間に結んでいます。

代表的なFTAやEPAなどの枠組みのほか、中南米諸国との間で締結しているALADI(ラテンアメリカ統合連合)としても、特恵税率が適用されます。FTAやEPAを直接結んでいない南米諸国に対しても、このスキームを用いた関税低減が可能です。ALADIの枠組みで締結されている協定は複数存在するため、個別に確認が必要になります。

日本側の関税率

CIF価格に関税率をかける従価税方式が一般的ですが、品目によって従量税、スライド関税、混合税等もあります。CIF価格に関税を上乗せした金額に対し、消費税が加算されます。関税率が0だとしても、輸入時のCIF価格には必ず消費税が上乗せされます。

原産地証明書の発給機関

  • 日本:日本商工会議所
  • メキシコ:経済省(SE、Secretaria de Economia)

なお、1000USDを超えない(日本側は20万円)品物については原産地証明書の提示が不要となります。

原産地規則

原産地規則については、品目のHSコードごとに「品目別規則(Product Specific Rules)」の欄に記載されています。

機械類や電気機器類などの工業製品、工業部品などは付加価値基準50%以上、関税分類番号変更基準(項変更【4桁】)の双方を求められるケースがあります。他のASEAN諸国との協定に比べると原産地規則がかなり厳しくなっていますので、留意が必要です。また、VA基準とCTC基準の選択式となっている品目は稀で、一つだけの原産地規則ですむものについても、品目別規則で指定されているケースが目立ちます。

なお、VA基準に用いる材料の価格は取引価格となります。

日メキシコEPA協定における品目別規則

救済規定などの特別規定の有無

累積

使用可能。締結国の一方の原産品はもう一方の国でも原産品になります。

僅少の非原産材料(デミニマス規定)

使用可能です。デミニマスの基準はHSコードの大分類によって基準が異なり、28類から49類、64類から97類については価格の10%、

50類から63類までの繊維系産品については重量の7%までとなります。

日メキシコ協定による税率

タリフスケジュール|譲許表|関税低減スケジュール

農産品の多くは関税割当が適用されています。メキシコ側については、譲許表のもっとも右側であるColumn 5の数字がそれぞれ注釈となっており、どのような関税割当になっているかの詳細を示しています。また、このColumn 5の欄には個別に注釈が記載されていますので、ここに数字の書かれている品目の税率は各注釈に従って決定されます。

日メキシコ協定における関税低減と撤廃のパターン
譲許表記載の記号 意味
A 発効日に関税が即時撤廃されている品目
B1 2006年に関税撤廃。
B2 2010年に関税撤廃。
B4 関税撤廃までに4回に分けて毎年均等に関税率を低減していく品目。現在は撤廃されている。
B5 関税撤廃までに5回に分けて毎年均等に関税率を低減していく品目。現在は撤廃されている。
B6 関税撤廃までに6回に分けて毎年均等に関税率を低減していく品目。現在は撤廃されている。
B7 関税撤廃までに7回に分けて毎年均等に関税率を低減していく品目。現在は撤廃されている。
B8 関税撤廃までに8回に分けて毎年均等に関税率を低減していく品目。現在は撤廃されている。
C 関税撤廃までに10回に分けて毎年均等に関税率を低減していく品目。
Ca 関税撤廃までに11回に分けて毎年均等に関税率を低減していく品目。
D この協定の効力発生の日から2004年1月1日において当該品目に適用されている実行最恵国税率を適用し、6年目の初日から行われる基準税率から無税までの6回の毎年均等な引下げにより、撤廃される品目
E 11年目の初日に関税撤廃される品目
P 発効の初日に、Column 5の注釈に記載された税率まで関税率を下げる品目
Q 注釈で個別に低減ルールを定めている品目
X この協定による交渉で除外されており、関税の撤廃や減免の対象外となっている品目

日本側の関税低減スケジュール(日本輸入時の関税)

メキシコ側の関税低減スケジュール(フィリピン輸入時の関税)

日メキシコ経済連携協定に関する情報ソース、関連リンク



アウトアウトとは

アウトアウトは使われる業界によっても意味が変わりますが、製造業で使われる場合、「海外で製造したものを海外に販売する」といった意味に用いられることが多いです。

社内用語に近いものが各社で流用されているうちに、会社によっても何を意味するのか若干の違いが出てきているようです。

海外に多くの生産拠点、製造工場を持つ日系企業では、海外で製造したものを日本に輸入して販売したり、日本の別拠点へ中間材料となる状態にまで加工したものを逆輸入することがよくあります。これらを「アウトイン」と呼んだりしますが、「アウトアウト」とは海外の生産拠点で作ったものを海外へそのまま流す、あるいは海外の別の生産拠点へ販売する、といったことを意味しています。

業界用語のようでわかりにくいですが、アウト-インとなっている場合、冒頭のアウトが日本国外を意味しており、インが国内へ入ってくることを意味しています。つまり、「生産した場所」と「購入場所・需要地」を日本を基点にした視点で並べて表現しています。アウトアウトなら生産地も、需要地(販売先)も両方とも日本国外のため、アウト-アウトとなるわけです。商流に日本をはさむかは各社の方針によりますが、少なくとも物の移動については日本を通りません(商流面でも顧客側に日本を介するメリットがないのであれば通常は入らないかと思います)。

この用語がよく聞かれる部署や部門、職種としては、グローバルに展開する生産管理や、グローバル調達部門、生産資材や部品などを大量に扱う貿易部門などではよく耳にする用語かもしれません。

海外へ生産拠点が増えてくると、その拠点から何を調達し、どのように販売していくのか、あるいは生産拠点で用いる生産資材の調達面においても拠点間の物流を最適化していく必要性が高まってきます。一箇所、一カ国にすべて集中させるやり方は割りにあわなくなってきているため、物流コスト、関税コスト、リードタイム、各国規制情報などを総合的に見て、各国間に存在している生産拠点間における物品のやり取りや、生産拠点-顧客への物流についてももっとも競争力が高くなるよう、都度検討を行っていく必要があります。

製造業の形態にもよるのですが、海外での生産拠点や製造工場のほうが多い日本企業では、アウトアウトの物流や取引のほうが額が大きくなり、日本にある本社で検討を行うスタッフたちも、アウトアウト間の検討事項や懸案事項に多くの時間を割いていることがあります。現地の生産工場、生産拠点でそうしたことが可能なスタッフが増加してくれば、日本本社での集中管理という方法も変わっていくことになり、本社スタッフの数も役割も変化していくことになります。

アメリカでの輸入時にかかるMPF

関税や貿易に関連した文脈で用いられるMPFとは、Merchandise Processing Feeの頭文字をとった略語で、米国への輸入の際、関税の他に徴収される税関使用料金のことを意味します。通関手続き等にかかる手数料のようなものです。

FOB価格で2500ドル以上の商業貨物に対しては以下に記載の率をかけて課される料金で、2500ドルに満たないものについては固定料金(出荷単位ごとに、2ドル~9ドル)となります。

この2500ドル以上、未満というのは、米国での通常の通関であるformal entryと簡易通関(略式通関)となるinformal entryの基準線です。

通常通関品(formal entry)については、MPFはFOB価格に掛けて算出されます。金額は関税率同様に、価格に対して一定の率を掛けて出されます。

この率はFOB価格の0.3464%(2014年時点)と高額ではありませんが、最低料金となるminimum feeと、最高額となるmaximum feeが設定されています。

最低使用料金が25USD、最大料金が485USDとなります。

このため、FOB価格で2500USD以上、おおむね7217USD以下(日本円にして約77万円前後。レートのより変動)の物品を輸入する場合は、25ドル徴収される可能性があります。逆に、FOB価格の0.3464%が485ドルを超えてしまうような場合は、485ドルのみ徴収され、それ以上課せられることはありません。

また、MPFが免除されるケースとしては、自由貿易協定や特恵貿易協定、GSP等の一部対象国等があります。特に、米国では自由貿易協定を締結した場合は、MPFの費用も免除されるケースが多く見られます。

関税の他に米国への輸入時にはMPFとあわせて、海上輸送の場合にはHMF(Harbor Maintenance Fee)と呼ばれる港湾メンテナンス料がかかります。

アメリカ輸入時にかかるMPFの関連情報、リソースの一覧



関税から見るマレーシア自動車産業と政策

マレーシア自動車産業と市場

マレーシアにおける自動車販売台数は直近の2013年のもので、年間65万台から67万台と推計されています(通産省傘下機関のマレーシア自動車研究所、マレーシア自動車協会、フロスト&サリバン等。前年比から数%幅で毎年増加推移)。政府発表では、55万人の雇用を生み出している産業でもあります。

マレーシアは他のASEAN諸国の市場と異なり、乗用車が9割を占める特異な市場の一つで、中でも4人乗りのセダンに相当する車種が中心となりますが、多人数乗りの多目的車についても近年は徐々に増加してきています。

マレーシアにおける自動車の普及率と販売台数

前述の通り販売台数は年間65万台前後ですが、マレーシアの人口が2900万人前後で、世帯あたりの自動車(乗用車)の普及率がすでに6割を超える高水準にあることから、ASEAN諸国内の他の成長市場と比べると、高級車へのシフト等除けば、今後爆発的に販売台数が増加することは考えにくいですが、後述する新国家自動車政策(NAP2014)によるエコカーの自国での生産推進を国策として新たに進める方針を出している為、販売を行っている自動車メーカーには既に影響が出始めています(現行の輸入車の価格アップ)。完成車に対する輸入の物品税の減免が終了し、かわりに自国で組立てを行う車(CKD)に物品税の減免を認めています。物品税の税率が非常に高額になることから、自国で組み立てを行う必要があるKD車(ノックダウン車両)のほうが価格面で有利になります。

マレーシアにおける自動車の関税

関税についてはASEAN域内のWTO加盟国であり、昨今の国際情勢では多国間を巻き込んだ交渉となっていることから、一旦下げた関税を自由に変えることは難しくなっていますが(特に関税を上げることは困難です)、かわりにマレーシアでは国内における自動車の物品税(Excise Duties)を変えることで自動車産業に直接的に介入する政策をとっており、その政策の中でも骨子となる新国家自動車政策、通称NAP2014の動向には注視する必要があります。

マレーシアにおける自動車の関税率は下表で紹介するような分類によって変わります。大まかに見れば、通常の関税率で30%といったものが一般的です。

あらゆる貿易品は、輸出時と輸入時にHSコードと呼ばれる分類番号がつけられ、この番号によって関税率が決定します。HSコードの番号体系は国によって異なりますが、たとえば、HSコードのうち一般的な乗用車が適合する8703項のカテゴリーだけでも、日本が9分類なのに対し、マレーシアでは180分類にもなります。
自動車の関税は、様式とエンジンの排気量(シリンダー容積)によって分けられていることが多いですが、マレーシアの場合、これらの分類に加えて、「完成車かノックダウン(自国に分解した部品状態で持ち込んで組み立てる)か」「新車か中古車」なのかといった分類が加わるため、分類項目が非常に多くなっています。

注目すべきは、CBU(完成車)とCKD(ノックダウン車:車を分解して輸入し現地で組み立て)とで税率を変えている点です。ノックダウン車の場合、完成車とは違い、組み立てるだけとはいえ、自国に自動車の組み立て工場と人員が必要となるため、雇用を生み出し、自動車産業の足がかりを築くことができます。自国を自動車生産拠点としていきたい意志が見て取れます。

マレーシアにおける自動車の関税体系

一般的な乗用車が該当する8703項の関税分類体系をマレーシアではどのような分類にしているのか見ていきます。一般に、関税はHSコードの国ごとのフルナンバーが確定しないと決まりません。

HSコード 内容 関税率(MFN税率)
8703 乗用自動車その他の自動車(ステーションワゴン及びレーシングカーを含み、主として人員の輸送用に設計したものに限るものとし、第87.02項のものを除く。)
※注第87.02項とは「10人以上の人員(運転手を含む。)の輸送用の自動車
  -雪上用、ゴルフカー、これらの類似車種  
8703.10.100 –ゴルフカーとゴルフバギー 0%
8703.10.900 –その他 30%
  -上記以外の車でピストン式火花点火内燃機関(往復動機関に限る。)を搭載したもの  
  –排気量が1000ccを超えない  
8703.21.100 —救急車 5%
  —乗用自動車その他の自動車(ステーションワゴン、SUV、スポーツカーを含む。ただし、バンは含まない)  
  —-CKD(ノックダウン車両)  
8703.21.311 —–四輪駆動車 10%
8703.21.319 —–その他 10%
  —-CBU(完成車)  
  —–四輪駆動  
8703.21.331 ——新車 30%
8703.21.332 ——中古車 30%
  —–その他  
8703.21.341 ——新車 30%
8703.21.342 ——中古車 30%
8703.21.400 —モーターホーム 35%
—ゴーカート 8703.21.500 0%
  —その他  
  —-CKD  
8703.21.911 —–四輪駆動車 10%
8703.21.919 —–その他 0%
  —-CBU  
  —–四輪駆動車  
8703.21.931 ——新車 30%
8703.21.932 ——中古車 30%
  —–その他  
8703.21.941 ——新車 30%
8703.21.942 ——中古車 30%
  –排気量が1000cc以上で1500ccを超えない  
8703.22.100 —救急車 5%
  —乗用自動車その他の自動車(ステーションワゴン、SUV、スポーツカーを含む。ただし、バンは含まない)  
  —-CKD  
8703.22.311 —–四輪駆動車 10%
8703.22.319 —–その他 10%
  —-CBU(完成車)  
  —–四輪駆動  
8703.22.331 ——新車 30%
8703.22.332 ——中古車 30%
  —–その他  
8703.22.341 ——新車 30%
8703.22.342 ——中古車 30%
8703.22.400 —モーターホーム 35%
  その他  
  —-CKD  
8703.22.911 —–四輪駆動車 10%
8703.22.919 その他 0%
  —-CBU  
  —–四輪駆動車  
8703.22.931 ——新車 30%
8703.22.932 ——中古車 30%
  その他  
8703.22.941 ——新車 30%
8703.22.942 ——中古車 30%
  排気量が1500cc以上で3000ccを超えない  
8703.23.100 —救急車 5%
  乗用自動車その他の自動車(ステーションワゴン、SUV、スポーツカーを含む。ただし、バンは含まない)  
  —-CKD  
  —–四輪駆動車  
8703.23.341 2000ccを超えない 10%
8703.23.342 2000cc以上で2500ccを超えない 10%
8703.23.343 2500cc以上で3000ccを超えない 10%
  その他  
8703.23.351 2000ccを超えない 10%
8703.23.352 2000cc以上で2500ccを超えない 10%
8703.23.353 2500cc以上で3000ccを超えない 10%
  —-CBU  
  —–四輪駆動車  
  ——新車  
8703.23.361 1800ccを超えない 30%
8703.23.362 1800cc以上で2000ccを超えない 30%
8703.23.363 2000cc以上で2500ccを超えない 30%
8703.23.364 2500cc以上で3000ccを超えない 30%
  ——中古車  
8703.23.371 1800ccを超えない 30%
8703.23.372 1800cc以上で2000ccを超えない 30%
8703.23.373 2000cc以上で2500ccを超えない 30%
8703.23.374 2500cc以上で3000ccを超えない 30%
  その他  
  ——新車  
8703.23.381 1800ccを超えない 30%
8703.23.382 1800cc以上で2000ccを超えない 30%
8703.23.383 2000cc以上で2500ccを超えない 30%
8703.23.384 2500cc以上で3000ccを超えない 30%
  ——中古車  
8703.23.391 1800ccを超えない 30%
8703.23.392 1800cc以上で2000ccを超えない 30%
8703.23.393 2000cc以上で2500ccを超えない 30%
8703.23.394 2500cc以上で3000ccを超えない 30%
8703.23.400 —モーターホーム 35%
  その他  
  —-CKD  
  —–四輪駆動車  
8703.23.941 1800ccを超えない 10%
8703.23.942 1800cc以上で2000ccを超えない 10%
8703.23.943 2000cc以上で2500ccを超えない 10%
8703.23.944 2500cc以上で3000ccを超えない 10%
  その他  
8703.23.951 1800ccを超えない 10%
8703.23.952 1800cc以上で2000ccを超えない 10%
8703.23.953 2000cc以上で2500ccを超えない 10%
8703.23.954 2500cc以上で3000ccを超えない 10%
  —-CBU  
  —–四輪駆動車  
  ——新車  
8703.23.961 1800ccを超えない 30%
8703.23.962 1800cc以上で2000ccを超えない 30%
8703.23.963 2000cc以上で2500ccを超えない 30%
8703.23.964 2500cc以上で3000ccを超えない 30%
  ——中古車  
8703.23.971 1800ccを超えない 30%
8703.23.972 1800cc以上で2000ccを超えない 30%
8703.23.973 2000cc以上で2500ccを超えない 30%
8703.23.974 2500cc以上で3000ccを超えない 30%

  その他  
  ——新車  
8703.23.981 1800ccを超えない 30%
8703.23.982 1800cc以上で2000ccを超えない 30%
8703.23.983 2000cc以上で2500ccを超えない 30%
8703.23.984 2500cc以上で3000ccを超えない 30%
  ——中古車  
8703.23.991 1800ccを超えない 30%
8703.23.992 1800cc以上で2000ccを超えない 30%
8703.23.993 2000cc以上で2500ccを超えない 30%
8703.23.994 2500cc以上で3000ccを超えない 30%
  ★排気量が3000cc以上  
8703.24.100 ◆—救急車 5%
  –乗用自動車その他の自動車(ステーションワゴン、SUV、スポーツカーを含む。ただし、バンは含まない)  
  —-CKD  
8703.24.311 —–四輪駆動車 10%
8703.24.319 その他 10%
  —-CBU(完成車)  
  —–四輪駆動  
8703.24.331 ——新車 30%
8703.24.332 ——中古車 30%
  その他  
8703.24.341 ——新車 30%
8703.24.342 ——中古車 30%
8703.24.400 ◆—モーターホーム 35%
  ◆その他  
  —-CKD  
8703.24.911 —–四輪駆動車 10%
8703.24.919 その他 10%
  —-CBU  
  —–四輪駆動車  
8703.24.931 ——新車 30%
8703.24.932 ——中古車 30%
  その他  
8703.24.941 ——新車 30%
8703.24.942 ——中古車 30%
  その他の自動車で、ピストン式圧縮点火内燃機関(ディーゼルエンジン及びセミディーゼルエンジン)を搭載したもの  
  ★排気量1500ccを超えないもの  
8703.31.100 ◆—救急車 5%
  –乗用自動車その他の自動車(ステーションワゴン、SUV、スポーツカーを含む。ただし、バンは含まない)  
  —-CKD  
8703.31.311 —–四輪駆動車 10%
8703.31.319 その他 10%
  —-CBU(完成車)  
  —–四輪駆動  
8703.31.331 ——新車 30%
8703.31.332 ——中古車 30%
  その他  
8703.31.341 ——新車 30%
8703.31.342 ——中古車 30%
8703.31.400 ◆—モーターホーム 35%
  ◆その他  
  —-CKD  
8703.31.911 —–四輪駆動車 10%
8703.31.919 その他 0%
  —-CBU  
  —–四輪駆動車  
8703.31.931 ——新車 30%
8703.31.932 ——中古車 30%
  その他  
8703.31.941 ——新車 30%
8703.31.942 ——中古車 30%
  ★排気量1500cc以上で2500ccを超えないもの  
8703.32.100 ◆—救急車 5%
  –乗用自動車その他の自動車(ステーションワゴン、SUV、スポーツカーを含む。ただし、バンは含まない)  
  —-CKD  
  —–四輪駆動車  
8703.32.341 2000ccを超えない 10%
8703.32.342 2000cc以上で2500ccを超えない 10%
  その他  
8703.32.351 2000ccを超えない 10%
8703.32.352 2000cc以上で2500ccを超えない 10%
  —-CBU(完成車)  
  —–四輪駆動  
  ——新車  
8703.32.361 1800ccを超えない 30%
8703.32.362 1800cc以上で2000ccを超えない 30%
8703.32.363 2000cc以上で2500ccを超えない 30%
  ——中古車  
8703.32.371 1800ccを超えない 30%
8703.32.372 1800cc以上で2000ccを超えない 30%
8703.32.373 2000cc以上で2500ccを超えない 30%
  その他  
  ——新車  
8703.32.381 1800ccを超えない 30%
8703.32.382 1800cc以上で2000ccを超えない 30%
8703.32.383 2000cc以上で2500ccを超えない 30%
  ——中古車  
8703.32.391 1800ccを超えない 30%
8703.32.392 1800cc以上で2000ccを超えない 30%
8703.32.393 2000cc以上で2500ccを超えない 30%
8703.32.400 ◆—モーターホーム 35%
  ◆その他  
  —-CKD  
  —–四輪駆動車  
8703.32.941 1800ccを超えない 10%
8703.32.942 1800cc以上で2000ccを超えない 10%
8703.32.943 2000cc以上で2500ccを超えない 10%
  その他  
8703.32.951 1800ccを超えない 10%
8703.32.952 1800cc以上で2000ccを超えない 10%
8703.32.953 2000cc以上で2500ccを超えない 10%
  —-CBU  
  —–四輪駆動車  
  ——新車  
8703.32.961 1800ccを超えない 30%
8703.32.962 1800cc以上で2000ccを超えない 30%
8703.32.963 2000cc以上で2500ccを超えない 30%
  ——中古車  
8703.32.971 1800ccを超えない 30%
8703.32.972 1800cc以上で2000ccを超えない 30%
8703.32.973 2000cc以上で2500ccを超えない 30%
  その他  
  ——新車  
8703.32.981 1800ccを超えない 30%
8703.32.982 1800cc以上で2000ccを超えない 30%
8703.32.983 2000cc以上で2500ccを超えない 30%
  ——中古車  
8703.32.991 1800ccを超えない 30%
8703.32.992 1800cc以上で2000ccを超えない 30%
8703.32.993 2000cc以上で2500ccを超えない 30%
  ★排気量2500cc以上のもの  
8703.33.100 ◆—救急車 5%
  –乗用自動車その他の自動車(ステーションワゴン、SUV、スポーツカーを含む。ただし、バンは含まない)  
  —-CKD  
  —–四輪駆動車  
8703.33.341 2500cc以上で3000ccを超えない 10%
8703.33.342 3000cc以上のもの 10%
  その他  
8703.33.351 2500cc以上で3000ccを超えない 10%
8703.33.352 3000cc以上のもの 10%
  —-CBU(完成車)  
  —–四輪駆動  
  ——新車  
8703.33.361 2500cc以上で3000ccを超えない 30%
8703.33.362 3000cc以上のもの 30%
  ——中古車  
8703.33.371 2500cc以上で3000ccを超えない 30%
8703.33.372 3000cc以上のもの 30%
  その他  
  ——新車  
8703.33.381 2500cc以上で3000ccを超えない 30%
8703.33.382 3000cc以上のもの 30%
  ——中古車  
8703.33.391 2500cc以上で3000ccを超えない 30%
8703.33.392 3000cc以上のもの 30%
8703.33.400 ◆—モーターホーム 35%
  ◆その他  
  —-CKD  
8703.33.911 —–四輪駆動車 10%
8703.33.912 その他 10%
  —-CBU  
  —–四輪駆動車  
  ——新車  
8703.33.941 2500cc以上で3000ccを超えない 30%
8703.33.942 3000cc以上のもの 30%
  ——中古車  
8703.33.951 2500cc以上で3000ccを超えない 30%
8703.33.952 3000cc以上のもの 30%
  その他  
  ——新車  
8703.33.961 2500cc以上で3000ccを超えない 30%
8703.33.962 3000cc以上のもの 30%
  ——中古車  
8703.33.971 2500cc以上で3000ccを超えない 30%
8703.33.972 3000cc以上のもの 30%
  -その他の車  
  –電気自動車  
8703.90.100 —救急車 5%
8703.90.200 ゴーカート 0%
8703.90.300 —モーターホーム 35%
  その他  
  —-乗用自動車その他の自動車(ステーションワゴン、SUV、スポーツカーを含む。ただし、バンは含まない)  
8703.90.410 —-CKD 10%
  —-CBU  
8703.90.421 ——新車 30%
8703.90.422 ——中古車 30%
  —その他  
8703.90.510 —-CKD 10%
  —-CBU  
8703.90.521 ——新車 30%
8703.90.522 ——中古車 30%
  –その他(電気自動車以外)  
  –乗用自動車その他の自動車(ステーションワゴン、SUV、スポーツカーを含む。ただし、バンは含まない)  
8703.90.610 —-CKD 10%
  —-CBU  
——新車 8703.90.621 30%
8703.90.622 ——中古車 30%
  ◆その他  
8703.90.910 —-CKD 10%
  —-CBU  
8703.90.941 ——新車 30%
8703.90.942 ——中古車 30%

関税以外の諸税により、自動車の売価に直接介入するマレーシアの政策

上記は、関税について見てきましたが、関税以外の税金を輸入時や販売時にかけることで外から流入する量をコントロールすることもできます。マレーシアもこの方法を用いており、ASEAN域内、たとえばタイなどの自動車生産拠点となっている国から完成車が入ってくる場合、関税は建前上0%になっていますが、高額な物品税を課しています。

下表におけるMFN税率というのが、通常の関税率となり、ATIGAと書かれている欄はASEAN諸国間の自由貿易協定の一種でもあるATIGAを用いて関税の減免をはかった場合の関税率です。

関税がいくら減免されても、物品税と販売税で100%近い税率となっているのであれば、売価は単純に2倍以上になります。

自動車にかかるマレーシアの物品税と関税の比較

マレーシア自動車輸入時の税率(乗用自動車:ステーションワゴン、SUV、スポーツカーを含む。ただし、バンは含まない))
輸入関税 地方税
CBU(完成車) CKD(KD車両。分解して現地で組み立てる) CBU、CKD
エンジン排気量(cc) MFN関税率(一般関税率) ATIGA(ASEAN域内特恵税率) MFN関税率(一般関税率) ATIGA(ASEAN域内特恵税率) 物品税(Excise Duties) 販売税(Sales Tax)
1800cc未満 30% 0% 10% 0% 75% 10%
1800cc以上2000cc未満 30% 0% 10% 0% 80% 10%
2000cc以上2500cc未満 30% 0% 10% 0% 90% 10%
2500cc以上 30% 0% 10% 0% 105% 10%

マレーシアの自動車メーカーシェア|国産二大メーカー

タイやインドネシア等が自国の自動車メーカーを持たず、基本的に外資となる日系メーカーを誘致する形での自動車産業の定着を推進してきたのに対し、マレーシアには国産の自動車メーカーがあります。プロトン社(Proton)とプロデュア社(Perodua)の二大メーカーであり、自由貿易協定により関税が減免される以前は、マレーシアの自動車市場の8割近くがこれらの国産車であったと言われています。2006年から日系メーカーによる大々的な支援があり、ASEANにおける関税減免スキームであるATIGAの整備により、同国内での生産における自動車部品のサプライチェーンも出来上がっています。当時からの支援の流れで、現在も日系メーカーとは深いつながりのある二社ですが、そのシェアはここ10年で大幅に低下しています。

Proton(プロトン)
国産車が主流だった2000年代初めまでは、マレーシアにおけるトップシェアを持ち、凡そ6割がプロトン社のものとされていました。現在シェアは半減以下となり、ダイハツと提携しているPeroduaの躍進により、立ち位置が変わってきています。

Perodua(プロデュア)
Proton同様、国内市場メインの国産メーカーで、マレーシア政府の国策により守られてきましたが、輸出拡大の方針も出しています。アルザ、マイヴィ、ビバといった現行生産の3つの車種はいずれもダイハツの姉妹車。

マレーシア政府としては、二大メーカーに対する支援策を打ち切っているわけではありませんが、エコカー等のEEVの生産が可能な外資の自動車メーカーを自国に誘致する政策も新たに打ち出しているため、以前の画一的な保護政策とは方針が変わりつつあります。

新国家自動車政策(NAP)の動向

マレーシア政府の自動車産業政策は、近隣諸国の影響を強く受けており、国策としては「新国家自動車政策(National Automotive Policy、NAP)」を打ち出しています。前述の通り、マレーシアは自国内での市場規模に限度があり、自動車の輸出国として産業の定着・発展させていくには、タイやインドネシアの後追いでは難しい部分があります。

こうした環境下で2014年1月には最新の自動車産業政策となるNAP2014が発表されました。タイが世界有数のピックアップトラックの生産地となっているように、マレーシア政府はハイブリッドや電気自動車等のEEVで同様のことを進めようとする意図が見て取れます。

政府発表によれば、このNAP2014で自動車の輸出を少なくとも20万台規模で行い、自動車部品の輸出についてはRM10億を2020年までに目指す、としています。中でも目玉としているのは「マレーシアをエコカーの生産ハブとする」という構想です。マレーシア国内での生産される自動車の85%をこうしたエコカー(EEV)にするというもので、2020年を目標年限としています。

具体的には、自国で組立てられる特定の車の物品税に対して優遇措置を設けることで、自動車の販売価格に直接介入する政策をとっています。マレーシアは自動車の物品税は高いものでは120%にもなるため、その減免の有無が直接進出企業・販売企業に影響します。ASEAN内の貿易で関税の減免を受けたとしても、高額な物品税を吸収するのは困難なため、自国で生産・組み立てられた車に競争力を持たせたい考えです。

最新のNAP2014によれば、国内で組立されている完全ノックダウン(CKD)のハイブリッド車、電気自動車に対して、前者は2015年末まで、後者は2017年末まで物品税を免税する、というものです。以前より、日系メーカーは完成車としてマレーシアにこれらのハイブリッドを輸入しており、これまでのNAPではこうした完成輸入車に対してもEEVということで税の優遇がありました。この輸入完成車に対する優遇税制が2013年末で終わり、マレーシア政府は次のステップとして自国をハイブリッドや電気自動車等のEEVの生産ハブへとステップアップさせる意図があります。

マレーシアにおける自動車関税動向

多くの国で自動車の関税は従価税方式を採用している為、数量が多く、一台あたりの価格も高価となる自動車の関税は、生産拠点をどこにするのかという問題に直結するほど大きなインパクトとなります。
関税が輸送費をはるかに上回る典型的な物品の一つです。例えば、日系メーカーは高級車を韓国へ輸出する際、日本からではなく、わざわざEUや米国で生産したものを輸出している例がありますが、これも関税額によるところが大きいといえます(韓国はEUや米国とFTAを締結)。

マレーシアの自動車関税は、日‐マレーシア協定やASEANにおける関税減免のスキームであるATIGAにより減免可能で、MFN税率自体も車種(用途)と排気量によって10%~30%に設定されています。一方、自動車の物品税は車種により65%~120%の高税率をかけているため、今後も関税のみではなく、自動車分野の市場アクセスについてはこれらとあわせて見ていく必要があります。

自動車部品の関税動向

自動車には1台あたり2万点を超える部材を用いる上、それぞれの部品についてHSコードが異なり、また同じ系統の部材でも違うHSコードを振ることがある為、「自動車部品」全体としての関税率や平均関税率を出すことが困難です。

 部分的に見ていくと、インドネシアやタイと比べ、工業製品、工業部品の多くは30%の関税率が維持されているものもあり、MFN税率自体は安い方ではありません。一方で、EPAやFTAによる個別協定を用いた場合には、関税そのものは大きく低減され、現在では多くがゼロにすることが可能です。

新政策では自動車そのものには大きな物品税をかけることで、自国でのEEV生産を促し、自動車部品についても輸出取引の拡大を謳っているため、今後自動車メーカーの動向によってはEEV仕様の部材需要の増加が予測されます。また、自国産業の育成のためには、産業分野によって保護主義的な政策がとられることがある為、動かしにくい関税以外の税制については注視していく必要があります。



日マレーシアEPA協定|日マレーシア経済連携協定

日本・マレーシア経済連携協定は日本が締結するEPAとしては3番目に発効された協定となります。経済産業省のデータでは日本からは毎月1000件前後の利用件数があります。

工業製品についていえば、マレーシアの関税率(MFN税率)は比較的高めに設定されており、20%、30%といったものも珍しくありません。特に自動車に関わるものについては自国での生産について明確な国策を打ち出している国でもあることから、注視が必要です。

通常の関税率が高いということもあり、マレーシアへの輸出にこの貿易協定を適用させることで大きな低減効果・削減効果が見込めます。関税率が30%というのは、WTO加盟国の間で関税率をなるべく低減させようとする昨今の動きの中でもかなり高い部類で、量産品や量産納入をはじめ、設備等の金額の大きなもの、点数の多いものを輸入するとそのコストが大きな負担になってくることが見て取れます。

この協定は発効から年月が経過していることもあり、多くの品目で、適用さえできれば関税がゼロになりますので、マレーシアへの輸出の際は積極的に活用していきたいところです。

また原産地規則についても、品目別規則で個別に設定されていますが、付加価値基準の原産比率40%以上か、関税分類番号変更基準(多くは6桁レベルでのHSコード変更のみで可)かのいずれかを満たしていれば原産資格を得ることができる為、インドネシア等とならび、原産資格を得やすい協定といえます。

また、農産物、水産物などの一部品目ではASEAN加盟国10カ国で採れたもの等も、日本、マレーシアにおける原産扱いとなるルールが設けられています。

対象国

日本、マレーシア

使用されるHSコードのバージョン

HS2002

発効日

2006年7月13日

関税率が変わる日付

日本側(日本輸入時)は毎年4月1日に低減。マレーシア側(マレーシア輸入時)は毎年1月1日に低減。関税の段階的引き下げ品目として設定されているもので、まだ関税がゼロになっていないものに限ります。

発効から月日が経っていることもあり、段階的引き下げ品目の多くで関税はゼロになっています。

関税の計算方法

マレーシア側の関税率

取引価格に関税率をかける従価税方式が一般的です。
マレーシアの場合、品目によって物品税(Excise Duties)、販売税(Sales Tax)等が関税のほかにも課せられ、自動車等をはじめ、これらが関税よりも高額な物品があります。このため、輸入時のコスト算定にあたっては、関税以外の諸税も含めた合算値の確認が必要です。

日本側の関税率

CIF価格に関税率をかける従価税方式が一般的ですが、品目によって従量税、スライド関税、混合税等もあります。CIF価格に関税を上乗せした金額に対し、消費税が加算されます。関税率が0だとしても、輸入時のCIF価格には必ず消費税が上乗せされます。

原産地証明書の発給機関

  • 日本:日本商工会議所
  • マレーシア:国際貿易産業省(MITI)

原産地規則

原産地規則については、品目のHSコードごとに「品目別規則(Product Specific Rules)」の欄に記載されています。

付加価値基準40%以上、関税分類番号変更基準(号変更【6桁】)のいずれかに適合すれば原産性が得られる品目が多い為、適用が容易な品目が多いです。

通常の関税率(MFN税率)が高い品目が多いのがマレーシアの特徴であり、協定の適用により大きな減免効果が期待できます。

救済規定などの特別規定の有無

累積

使用可能。締結国の一方の原産品はもう一方の国でも原産品になります。

僅少の非原産材料(デミニマス規定)

使用可能です。デミニマスの基準はHSコードの大分類によって基準が異なり、28類から49類、64類から97類については価格の10%、50類から63類については重量の7%までとなります。

日マレーシア協定による税率

タリフスケジュール|譲許表|関税低減スケジュール

日マレーシア協定における関税低減と撤廃のパターン
譲許表記載の記号 意味
A 発効日に関税が即時撤廃されている品目
B3 関税撤廃までに4回に分けて毎年均等に関税率を低減していく品目。現在は撤廃されている。
B4 関税撤廃までに5回に分けて毎年均等に関税率を低減していく品目。現在は撤廃されている。
B4* 2010年1月1日に関税撤廃された品目
B5 関税撤廃までに6回に分けて毎年均等に関税率を低減していく品目。現在は撤廃されている。
B6 関税撤廃までに7回に分けて毎年均等に関税率を低減していく品目。現在は撤廃されている。
B7 関税撤廃までに8回に分けて毎年均等に関税率を低減していく品目
B9 関税撤廃までに10回に分けて毎年均等に関税率を低減していく品目
B9* 2015年1月1日に関税撤廃。
B10 関税撤廃までに11回に分けて毎年均等に関税率を低減していく品目
B15 関税撤廃までに16回に分けて毎年均等に関税率を低減していく品目
P 注釈で個別に低減ルールを定めている品目
Q 注釈で個別に低減ルールを定めている品目
R 注釈で個別に低減ルールを定めている品目
X この協定による交渉で除外されており、関税の撤廃や減免の対象外となっている品目

日本側の関税低減スケジュール(日本輸入時の関税)

マレーシア側の関税低減スケジュール(フィリピン輸入時の関税)

日マレーシア経済連携協定に関する情報ソース、関連リンク



日フィリピンEPA協定|日本・フィリピン経済連携協定

日本とフィリピンの間で締結された日フィリピン経済連携協定は、日本が締結するEPAとしては9番目のものとなります。利用件数は毎月500前後となり、他の協定に比べるとあまり利用件数の多いほうではありませんが、多くの工業製品については、適用することで関税の減免が可能となっています。

フィリピンでは関税の設定や変更に関する権限を大統領が持つため、関税率に何らかの変更・調整などがあり、正式に関税率が変わる場合、大統領令(EXECUTIVE ORDER)という形で、発令されます。大統領令は略してEOと表記されるため、EO 852など発令時の番号とともに記載されます。輸出入の割当も大統領権限となるため、関税について調べる際はフィリピンの関税委員会(Tariff Commission)のウェブサイトに記載されている最新のEOとあわせて確認する必要があります。他、税関行政手続命令(Customs Administrative Order:CAO)の形で、各種関税や通関に関わる通達が発せられることがあります。通関上の法体系としては、フィリピン関税法(The Tariff and Customs Code of the Philippines:TCCP)が体系化されています。

関税を課す際の物品の番号体系でもあるHSコードは、ASEAN共通のHSコードとして設定されているAHTNコードを採用しています。ASEANの他の国では独自のHSコードとAHTNコードが混在している国もあるため、この辺は加盟国の中でも進んでいる国といえます。

フィリピンは貿易協定についてはASEANの加盟国として交渉していることが多く、単独での経済連携協定は珍しい部類となります。

フィリピンにとって最大の輸出国は日本となりますが、日本側では工業製品の多くについて関税を撤廃しています。フィリピンにとっての最大の輸入国は中国、米国、日本と続き、フィリピン側での基本関税率(MFN税率)は多くの品目で無税化していないため、貿易協定を用いて、減免を行うメリットは大きいといえます。

対象国

日本、フィリピン

使用されるHSコードのバージョン

HS2002

発効日

2008年12月11日

関税率が変わる日付

毎年4月1日。ただし、関税低減スケジュールによっては1月1日に変わるものもあります。発効から時間が経過しているため、協定を用いることで現在では多くの品目で関税ゼロとなっています。

関税の計算方法

フィリピン側の関税率

CIF価格に関税率をかける従価税方式と、従量税方式となります。

日本側の関税率

CIF価格に関税率をかける従価税方式が一般的ですが、品目によって従量税、スライド関税、混合税等もあります。CIF価格に関税を上乗せした金額に対し、消費税が加算されます。関税率が0だとしても、輸入時のCIF価格には必ず消費税が上乗せされます。

原産地証明書の発給機関

  • 日本:日本商工会議所
  • フィリピン:フィリピン関税局(BOC)

原産地規則

原産地規則については、品目のHSコードごとに「品目別規則(Product Specific Rules)」の欄に記載されています。

付加価値基準40%以上、関税分類番号変更基準(号変更【6桁】、項変更【4桁】)などがよく見られる原産地規則です。原産地規則はいずれか1つを満たせばよいものが大半であるため、品目によりけりですが、適用はしやすい部類の協定です。後述しますが、関税の低減スケジュールのパターンにかなりバリエーションがあるため、実際の関税率確認の際は留意が必要です。

救済規定などの特別規定の有無

累積

使用可能。締結国の一方の原産品はもう一方の国でも原産品になります。

僅少の非原産材料(デミニマス規定)

使用可能です。デミニマスの基準はHSコードの大分類によって基準が異なり、28類から49類、64類から97類については価格の10%、50類から63類については重量の7%までとなります。

日フィリピン協定による税率

タリフスケジュール|譲許表|関税低減スケジュール

日フィリピン協定における関税低減と撤廃のパターン
譲許表記載の記号 意味
A 発効日に関税が即時撤廃されている品目
B3 関税撤廃までに4回に分けて毎年均等に関税率を低減していく品目。現在は撤廃されている。
B4 関税撤廃までに5回に分けて毎年均等に関税率を低減していく品目。現在は撤廃されている。
B4* 2010年1月1日に関税撤廃された品目
B4** 現在は関税撤廃されている品目。2003年12月31日時点のMFN税率をもとに5年後に関税をゼロにするというもの。
B5 関税撤廃までに6回に分けて毎年均等に関税率を低減していく品目。現在は撤廃されている。
B5* 現在は関税撤廃されている。
B5** 現在は関税撤廃されている。
B7 関税撤廃までに8回に分けて毎年均等に関税率を低減していく品目
B10 関税撤廃までに11回に分けて毎年均等に関税率を低減していく品目
B10* MNF税率を適用し、関税撤廃までに10回に分けて毎年均等に関税率を低減していく品目。低減の日付は毎年1月1日。
B10** MNF税率を適用し、関税撤廃までに6回に分けて毎年均等に関税率を低減していく品目。低減の日付は毎年1月1日。
B15 関税撤廃までに16回に分けて毎年均等に関税率を低減していく品目
P 注釈で個別に低減ルールを定めている品目
Q 注釈で個別に低減ルールを定めている品目
S 注釈で個別に低減ルールを定めている品目(フィリピン側のみ)
R 注釈で個別に低減ルールを定めている品目
X この協定による交渉で除外されており、関税の撤廃や減免の対象外となっている品目

日本側の関税低減スケジュール(日本輸入時の関税)

フィリピン側の関税低減スケジュール(フィリピン輸入時の関税)

日フィリピン経済連携協定に関する情報ソース、関連リンク