自由貿易協定(FTA)、経済連携協定(EPA)、特恵貿易協定(PTA)などの地域間貿易協定(RTA)では、品目ごとの関税率をどのように下げていくのか、あるいは関税を下げないのかという点について、HSコードごとに交渉により設定されていきます。
ところがHSコードは一定期間ごとに改訂が行われており、協定交渉の際に用いていたHSコードが、現在のHSコードであるHS2012と異なることが一般的です。多くの品目については最新のHS2012と交渉時に用いられていたHS2007やHS2002と違いはありませんが、一部品目については番号の統廃合が行われており、関税率を調べる際、協定文のなかの関税低減スケジュールには記載があるのに、当該国の現行のHSコードには該当する番号が存在しないことがあります。
協定は交渉から締結まで、交渉時に有効であったバージョンのHSコードで話が進められ、締結・発効後についてもそのときに用いられたHSコードのまま、記載がなされます。
HSコードは関税の減免を受けようとする場合、原産地証明書にも記載される重要な項目となりますが、多くの貿易協定では6ケタまでしか印字されません。ただし、関税率は6ケタではなく、その国ごとに設定されている7ケタ以降の番号が確定しないと決められないことが多く、このため、7ケタ以降の番号で税率が変わってしまうHSコードの場合、現地の通関業者や通関ブローカーに、何番のHSコードで通関予定か(あるいは通関希望か)を確認する必要が出てきます。
7ケタ以降のHSコードで関税が変わってしまうような場合、原産地証明書をそのまま送ると、現地税関との慣習・関係などから、あとからの追徴やトラブルを避けるため、より高い関税率のHSコードをつけようとする通関業者もいるため、念押しが肝要です。
一般には、貿易協定を用いる場合、HSコードの改訂年度(バージョン)の違いについては、不問にされる取決めがありますが、後発国などの場合で、税関担当者に理解がないと、関税の減免を受けられないことがあります。
これは特に、7ケタ以降の場合に問題になりやすい点で、世界共通の番号となるHSコードの6ケタまでの変更については、WCO(世界税関機構)もHSコードの新旧対照表を公開しており、関税を扱う職種の方々には一般的によく知られていますが、各国独自のHSコードの番号体系となる7ケタ以降の対照表については、その国のHSコード表を個別に比較して調べるしかありません。
World tariffを用いていて関税率を調査する際、自由貿易協定(FTA)などの貿易協定を締結している国同士で、その品目が除外品(EL品、Exclusive)扱いになっていないにも関わらず、MFN税率が適用されている場合、次のケースが考えられます。
- 協定の発効からまだ時間があまり経過しておらず、関税の低減スケジュールがゆるやかな品目の場合、しばらくの間は貿易協定を用いた特恵税率のほうがMFN税率よりも高くなってしまっている[逆転現象]が起きているため、MFN税率が適用されている
- 交渉時のHSコードと現在のHSコードの番号体系が変わってしまっており、交渉時のHSコードでは関税減免品目に分類されるが、現行のHSコードでは協定条文に対応する番号がない
関税率は現行採用されている最新のHSコードを用いて調べるのが一般的であるため、貿易協定を用いた関税減免が可能な品目については上記のようなケースで見落としが発生する可能性があります。すなわち、関税の減免が可能であるにもかかわらず、減免不可に見えるような案件です。
ある国と国の間に貿易協定などの関税減免のスキームが存在することがわかっている場合は、原典となる協定を直接調べることが重要となります。