関税における無申告加算税

関税評価額自体を申告していなかった場合に課せられる加算税で、本来納付すべき税額に15%を掛けた金額が加算されます。

例えば評価額100万円もので関税率10%のものを輸入したにも関わらず、無申告だった場合、10万円が本来の関税額となりますが、これに15%を掛けた値、1.5万円が加算税としてさらに追徴されます。

なお、輸入のときまでに申告がない場合であっても、正当な理由があればこの加算税は課せられません。また無申告加算税の額が10000円未満の場合も、徴収はされません。

この無申告加算税が課せられる場合でも、事実の隠蔽や仮装などがあった場合には、重加算税(40%)が課せられることがあります。

無申告加算税についても、自ら行う通常の申告納税方式ではなく、税関長の決定か更正による賦課課税方式となります。

不足税額が1万円未満の場合は免税、計算の結果、無申告加算税が5000円未満となる場合は免税となります。計算額5000円以上の場合に徴収されますが、100円未満は切り捨てられます。



関税における過少申告加算税

この加算税の計算方法としては、本来正しい税額と、当初申告して支払っていた税額との差額に10%を掛けるというものです。この差額は「増差税額」といわれますが、例えば関税額10万円で申告して支払っていたものが、あとの調査で50万円の関税額だと分かった場合、50万円-10万円=40万円が増差税額となるため、40万円x10%=4万円となります。

増差税額が、最初に間違えて申告した額か50万円のどちらか大きいほうを上回ってしまっている場合は、その上回った金額の5%がさらに加算されます。

例えば関税額10万円で申告したものの、正しい関税額は100万円だった場合、増差税額は90万円となるため、90万円x10%の9万円に加え、【増差税額(90万円)-50万円】x5%=2万円がかかり、合計11万円の過少申告加算税となります。

なお、税関の調査である事後調査の前に、自主的に申告した場合はこの過少申告加算税はかかりません。

過少申告加算税を課せられるケースでも、事実の隠蔽や仮装があったと認められた場合には、重加算税(35%)が課せられます。

なお、これはあくまでペナルティとしての加算税であるため、申告納税方式ではなく、税関長による手続きで金額が決定する賦課課税方式となります。

不足税額が1万円未満の場合は免税、計算した結果、過少申告加算税が5000円未満となる場合は免税となります。計算額5000円以上の場合に徴収されますが、100円未満は切り捨てられます。



関税を脱税するとどうなるか

関税の脱税は思いのほか多く発生しており、実際には意図せずに申告金額が低くなってしまう過少申告の例がとても多いといわれています。貿易に関する知識の欠如のほか、輸入と輸出とでも必要な知識が異なることから、会社でも適切な判断を行うことができる部門がなかったり、そもそもどこに聞いてよいのか誰も知らなかったりという場合もあり、本来支払うべき金額が支払われていないというケースは珍しくありません。

意図的に行っている場合は別ですが、通常、関税の不足が判明するのはインボイスの価格が間違っていると気づいたときか、税関による訪問調査である事後調査のときです。

適切な関税が支払われず、後で分かった場合、税関からは当然ペナルティ、罰則が課せられますが、それには以下のようなものがあります。

前提としては、まず、正しい税額を支払うことはもちろんですが、それに加えて以下の加算税と延滞税が別途かかります。これら4つのペナルティとなる税を附帯税と呼びます。4つのうち、延滞税はどのようなケースでも必ずかかるものです。過少申告加算税と無申告加算税はどちらかひとつが課せられることになります。またこれらのいずれか2つのケースで、隠蔽や仮装などをしていたような場合は、これらのかわりに重加算税が課せられることになります。

課税処分ができる期間は3年間となるため、通関してから3年間は遡ってペナルティを受ける可能性があります。貿易に関する書類の保存期間が最低3年といわれているのは、これも関係があります(隠蔽工作などしていた場合はさらに7年まで遡って調査が行われます)。

これらは日本へ輸入する際の罰則ですが、反対に、輸出の際であれば、現地側で罰則を受けることになります。

よく見られるのが、インボイスの価格を実際の価格より大幅に安くして輸出するアンダーバリューと呼ばれる手口です。

例えば、100万円の評価額(税率30%)のものであれば、輸入申告の際、30万円を支払う必要があり、関税と実物の費用だけで受け取る側は130万円になってしまいます。これを、100万円の評価額のところを100円にして輸出すれば、関税が30円になってしまいます。

なお、どの国の税関もプライスレンジ、もしくは税関レンジ表と呼ばれる「相場表」のようなものを持っており、さまざまな物品の価格帯がわかるようにしています。

悪質なケースでは、日本へ物品を輸入する際も通関インボイスの価格を売り手と買い手で示し合わせ、本来の売価とは異なる、大幅に安い価格で提示しているような場合は重加算税を課せられる可能性があります。

また、事実と異なる原産地証明書を発行してもらい、それを用いた税率を適用させるような行為も、重加算税の対象となる「隠蔽や仮装」に該当する可能性があります。

海外取引先の中には、関税を減らすために意図的に通関時の評価額を下げて欲しい、つまり通関インボイスに不当に安い金額を表記して、請求金額と分離して欲しいという依頼を堂々としてくるところもありますが、そうしたことには応じないとはっきり断ることが大切です。

関税について不明な点があれば、最寄の税関に問い合わせることになりますが、輸入でお世話になっている通関業者を通じて確認することもよく行われます。関税は、ある部分においては、直接その製品を輸入する者、製造に関わる背景を知っているものしかわからない部分があるため、自ら疑問に思ったら、積極的に確認していくことが大切です。



関税とは誰が誰に支払うものか

関税は、各国で品物の種類や原産国、輸出国によって関税率を定め、自国へ入ってくる際に課す「税金」の一つです。

通常、これは輸入者が輸入国の税関に対して支払うものですが、貿易条件によっては、輸出者が支払うこともあります。形式上、多くの国では輸入申告を行い、関税を支払ってからでないと物品を受け取ることができないため、通関業者が関税を立て替えて支払っています。

したがって、「輸入者もしくは輸出者」がその物品を「輸入する国」に対して支払うもの、となります。日本にはあてはまりませんが、輸出関税によって、輸出品にも関税を課している国の場合は、「輸出者」が輸出元の国に対して支払うものということになります。

無税の品目でない限り、関税を払わないと物品はその国にて受け渡してもらうことができないことが多いため、通上は運送業者(フォーワーダー)や通関業者が立て替えて支払っていますが、最終的に輸出側が負担するのか、輸入側が負担するのかはあらかじめ貿易条件で設定しておく必要があります。



関税はどちらが払うものか

国境をこえて物品が行き来する場合、必ず「通関」によって輸出申告、輸入申告が必要となります。この際、一般的には輸入申告時に関税を支払う必要が出てきます(日本にはありませんが、国によっては輸出関税も必要)。

貿易においては、売り手と買い手、つまり輸出者と輸入者が必ずいるわけですが、関税をどちらが負担するかどうかは貿易条件によって、定められています。

貿易に関わっている方には御馴染みかと思いますが、見積もりからインボイスに至るまで、海外との取引には必ず「trade terms」(貿易条件)を設定し、費用負担をどちらがどこまでするのか、物品の所有権はどこで移転し、トラブル発生時や危険負担はどちらがどこまでするのかという点を明確にしてからはじめます。

この貿易条件にはいくつかパターンがあり、これらを定めたルール(定義)をインコタームズといいます。その中に関税の負担についてもどちらが支払うべきか貿易条件もあります。

仮にこちらがよくわからないとしても、インコタームズ抜きでは通常の貿易は難しく、通関に必須となるインボイスには何らかのインコタームズに基づいた価格が記載されることになります。

関税を売り手、つまり輸出者が負担するケースというのは、貿易条件にDDPを指定した場合だけで、それ以外のすべての貿易条件では、買い手、つまり輸入者が負担することになります。



関税の地方消費税とは

海外から日本に何か物品を輸入する場合、必ず税関に輸入申告が必要となりますが、その結果、OKとなった場合には「輸入許可通知書」が発行され、他の貿易書類とともに輸入者のもとに渡ります。

日本に物品を輸入する場合は、「関税」と「消費税」を支払う必要がありますが、このうち消費税(内国消費税)には地方消費税が含まれた形になっています。

2014年3月時点であれば、消費税は5%となりますが、輸入許可通知のなかの表記では、「消費税4%+地方消費税25%」となっています。100円未満は計算上切り捨てますが、まず消費税がかかる課税額というのは、関税が上乗せされた「価格」となります。つまりCIF価格(正味価格+保険価格+輸送価格)に関税率をかけて算出された関税額を加算した金額です。これに4%を掛けたものが消費税、この消費税に25%をかけたものが地方消費税となり、消費税と地方消費税をあわせて5%という形になります。

これが2014年4月からの消費税率8%になると、「CIF価格+関税額」に対して、6.3%の消費税を掛けることになり、これによって計算された消費税額に27%の地方消費税をかけて、合計8%という形を取ります。

消費税も他国で言うところの付加価値税の一種であるため、日本国内で流通するものには基本的にかかってきます。輸入品であっても、輸入関税のほか、日本国に入る段階できちんと消費税が課せられますので、輸入品であっても消費税の影響は受けることになります。



関税はどのような形で調査がされるか

関税は、通常、輸入者(または輸送業者や通関業者などの代理人)が行う輸入申告(納税申告)に基づいて額が決定されます。

日本の関税は、申告納税方式をとっている以上、本人が金額決定の情報を自ら提供する方法のため、本来支払うべき関税が足りない、あるいは意図的に関税額を少なくするための行為がないかチェックする体制が必要となります。これを放置すれば非常にアンフェアな状態となることは容易に想像が付きます。

関税に関する調査は、通関時に行われるほか、事後調査、と呼ばれる制度があります。関税の支払額については、通関時にチェックできることは非常に限られており、例えば、申告価格が過小評価されていないかどうか、といった点をチェックすることになります。これには、物品の相場を記したプライスレンジや税関レンジ表と呼ばれるものがあり、ここから大きく逸脱した物品の場合、なぜそのような価格なのか理由を求められることがあります。

とはいえ、関税額の決定には、この物品の相場だけでなく、例えば部品や材料だけ無償支給していたり、ロイヤリティの支払いが別請求でなされていたり、技術者や製造者の支援を無償で行っているような場合の価格も足す必要がありますが、これらは通関時にはチェックのしようがありません。

このため、税関による訪問調査として知られる「事後調査」と呼ばれる制度があります。これは輸入の事後に行われるものであり、2~3年に1度の頻度で行われます。



関税の税率について

関税の税率にはどの国にもいくつか種類があります。大別すると、自国内で取り決めた関税率と、条約(協定)によって取り決めた関税率があります。

日本の場合、関税率表を見ると、品目ごとに次のような税率の種類があります。

基本関税率

日本国外からの物品に対して課せられる関税率です。基本と名称が付いていますが、後述の理由から、あまり使われることはありません。

WTO協定税率

世界貿易機関であるWTOの加盟国間同士の貿易で適用される関税率ですが、事実上、ほとんどの国がWTOに加盟しているため、これが通常の関税率として扱われることになります。貿易においては、WTOで他国のなかで差別的待遇を行うことが禁止されており(EPAやFTAでの協定による税率を除く)、最恵国待遇をすることになっています。事実上、これがMFN税率NTR税率と呼ばれることもあります。

GSP特恵税率

開発途上国の経済支援の一環として、そうした国からの物品に特別に安い関税を設定したり、関税そのものをかけないことがあります。これがGSPと呼ばれる仕組みで、日本もこのGSPを採用しており、認定した途上国からの指定物品で、その国の特恵原産地証明書の提示(フォームA)があれば、この関税率が適用されます。

LDC特別特恵税率

GSPのなかでもさらに経済的に困窮している国に対して適用する特別に安い関税率です。LDC特恵に該当する国も決められており、指定された物品について、原産地証明書があればこの税率が適用されます。事実上、GSP対象国からの物品の多くには関税がかかりませんが、さらに無税対象品目を増やしたものとなっています。

EPA税率(経済連携協定)

このサイトで取り上げている自由貿易協定や経済連携協定、特恵貿易協定などで適用される税率です。適用には、それぞれの協定のルールに基づいた専用の原産地証明書の提示が必要になります。

複数の協定を結んでいる国同士の場合、輸出者(輸入者)が使いたい協定を自由に選ぶことができ、そのルールに従った原産地証明書を提示することでEPA税率やFTA税率が適用されることになります。



個人輸入でも関税はかかるか

個人輸入であっても関税はかかりますが、これにはいくつか例外があります。品物の種類と用途、その金額によっては関税がかからない場合があるからです。

1.簡易税率が適用されるケース

物品の種類にもよりますが、輸入する物品の価格(本体小売価格+輸送費用+保険費用)が10万円以下の場合は、一般の関税率ではなく、簡易税率を適用させることができます(簡易税率に該当するケースでも、一般関税率を適用させることも可)。

一般関税率の場合、5000を超える関税分類からさらに該当する分類番号となるHSコードを特定させないと税率を見つけることもできませんが、この簡易税率は7つしか分類がありません。関税率を定めている「関税定率法」の中に記載の「付表第二 少額輸入貨物に対する簡易税率表(第三条の三関係)」に対応するHSコードとその税率が規定されています。

簡易税率の内訳の例を挙げると下記の通りです。2204.10などの数字の部分がHSコードとなりますので、HSコードの一覧とあわせてご確認ください。

簡易税率が適用される品目の関税率
分類 分類される品目 簡易税率
1.酒類 (1)2204.10から2204.29までに該当するもの、2205.10から2205.90の2に該当するもの 1リットル当たり70円の関税
(2)2208.90の1の(2)のうち、Bの(b) 1リットル当たり20円
(3)2106.90の2(2)のDの(b)、第2204.30の2、第2206.00の2の(1)若しくは(2)のA若しくはBの(b)、第2207.10号の1の(2)のB若しくは2の(2)又は第2208.90号の1の(2)のAの(b)若しくは二の(一)若しくは(三)に掲げる物品 1リットル当たり30円
2.トマトソース、氷菓、なめした毛皮(ドロップスキン)、毛皮製品 等 HSコード:2103.20、2105.00、4302.30、4303項 20%
3.コーヒー、茶(紅茶を除く)、なめした毛皮(ドロップスキンを除く) 等 0901.21、0901.22、0902.10、0902.20の2、
0902.30のうち紅茶以外、0902.40の2の(2)、3503.00の3、4302.11から4302.20まで、4302.30の2
15%
4.衣類及び衣類附属品(メリヤス編み又はクロセ編みのものを除く) 等 第1類から4類、7類、8類、0910.11の1、0910.12の1、1212.21、16類から20類、21類(先に記述した1、2に該当したものは除外)、2905.44、2918.14、2918.15の1、2922.42の1、2940.00の2、4421.90、46類、5007項、53類、60類、62類 10%
5.樹木、鉱物性燃料、有機化学品、無機化学品、ガラス、金属、家具、おもちゃ等 第6類、第27類、28類、29類(4で記述したものは除外)、32類から34類、38類、43類(2,3で述べたものは除外)、59類、66類から68類、70類(7018項を除く)、74類から76類、78類、79類、81類から83類、94類、95類 3%
6.動物性製品、塩、硫黄、石、医薬用のゲル、ゴムとその製品、紙とその製品、鉄鋼製品、錫製品 第5類、25類、3006.70、40類、48類、69類、72類、73類、80類 無税
7.そのほか 1~6になかった物品 すべて5%

注意:課税価額が10万円以下でもこの簡易税率が適用されない品目もあり、例えば下記のようなものです。この場合は、一般関税率適用となります。

  • 米などの穀物とその調製品
  • ミルク、クリームなどとその調整品
  • ハムや牛肉缶詰などの食肉調製品
  • たばこ、精製塩
  • 旅行用具、ハンドバッグなどの革製品
  • ニット製衣類
  • 履物
  • 身辺用模造細貨類(卑金属製のものを除く)

2.関税がかからないケース

1万円以下の場合

課税価格である輸入する物品の価格(本体小売価格+輸送費用+保険費用)が1万円以下の場合、関税と消費税(+含む地方消費税)がかかりません。ただし、個人的に使用されるものや、日本在住の人に送るプレゼント、ギフトではない場合、革製のバッグ、手袋や靴類、履物類、スキー靴、ニット製の衣類、パンストやタイツなどは1万円以下であっても、関税の免除はありません。

個人で使うために輸入する場合

まず、海外から輸入したものを転売などをせず、自分自身で個人的に使用するような品物である場合、関税率をかける元となる課税価格が、下がります。

具体的には、海外での小売価格となっている本体価格部分に0.6をかけた値となります。例えば10000円のものを海外ネットショップや海外のネットオークションで買った場合、この本体価格は10000円の60%となります。それに輸送費(日本の港までの輸送費)と保険料を足したものが輸入物品の価格(課税価格)となります。

凡そ16600円以下でかつ個人で使うために輸入する場合

個人で使うものの場合、本体小売価格が0.6掛けで計算されます。このため、1万以下は関税が免税されるというルールが、下記の式により、16666円となります。

海外小売価格 x 0.6(個人利用の場合、評価価格が60%) = 10000(1万円以下免税)

海外小売価格=約16666円



関税は英語で何というか

関税の英語表現については、各国の関税を検索するときにも使いますが、輸入関税であれば、duty importやimport tariffといった言い方がよく使われます。輸出関税のある国の場合は、このimportの部分がexportに変わります。

日本語でも関税のことをタリフということもありますが、輸出、輸入の区別なく「関税」を示す場合は、custom tariffやcustom dutyといった使われ方も多く見受けられます。なお、日本では関税は輸入にしかかかりませんが、国によっては輸出関税もありますので、tariffと記述する際は、それがimportなのか、exportなのか明確にしたほうがよいかもしれません。