製造委託している場合の特定原産地証明書の生産者になれるか|生産者の定義

日本では特定原産地証明書を発行することができるのは「生産者」か「輸出者」のどちらかのみです。このあたりは、他国ではこれ以外の代理人が申請できる場合もあるため、諸外国のFTAと比べてもわりと厳しい部類になりますが、「原産品かどうかを判別できる立場にある」者が申請を行うべき、という観点でいえば、最も確実性の高い方法ではあります。

要は、日本の原産資格を持っていなかったり、日本原産かどうかもわからないもの、確証のないものを、日本原産と偽って協定相手国へ輸出しないようにする為の仕組みの一つです。

輸出者が原産資格があるかどうかの判定申請を行う場合でも、その原価構成や材料の出所など、生産者と同様に、その製品が日本原産かどうかを判別できる立場にある場合という但し書きがつきます。

この生産者と輸出者は言い換えれば、メーカーと商社(輸出商社)ということになりますが、商流においてはこれら二社の間に他の商社が入ることもあれば、メーカーからさらに製造委託先やOEM先へ製造を委託している場合もあります。

こうした場合においての生産者、輸出者の定義はどうなるのか、ということです。

輸出者については通関業者や輸送業者のことではなく、これら企業に通関業務を委任することになる企業です。定義上、疑問を挟む余地もなく、一社に確定されます。

問題は生産者のほうで、現在のルール上は製造委託先がすべて生産している場合、判定依頼の申請時にシステムへ「生産者」として入力できる企業は、この製造委託先のことになります。

自社が直接輸出者となっている場合は何の問題もありませんが、自社からさらに輸出者へ販売してEPAを適用させようとする場合に問題が起きます。

特定原産地証明書を出せると言うことは、その製品の原価構成や使用材料の構成まで理解しているということになるため、通常はメーカーがこの判定申請を行い、商社にはその利用だけをメーカーがシステム上許可する、と言う方法をとります。これを同意通知書といいますが、特定原産地証明書自体には細かい原価や材料についての情報は一切記載されておらず(製品に関わる部分は、品名とHSコードのみ記載)、同意通知を用いれば、中身や製造ノウハウに関わる部分に一切触れることなく、関税減免のための特定原産地証明書を商社(輸出者)に利用してもらうことができる仕組みです。

同意通知は生産者が輸出者に対して行うものであるため、製造委託先が生産者となっている場合は自社が仕様決定し生産指示していても輸出者扱いとなり、本当の輸出者に対して、自社から特定原産地証明書の利用許諾が出せません。具体的にはシステム上受付けない仕組みになっています。

製造委託先と客先となる輸出者が直接やり取りしても問題がないのであれば、とくに発給に問題はありませんが、実際には製造委託していることすら知られたくない場合も多く、商流にない製造委託先と客先とがコンタクトすると混乱の原因にもなります。

こうしたことから、自社を生産者として認定してもらう必要が出てくるのですが、この場合には「みなし生産者」として経済産業省の承認を得ることで、製造委託先ではなく、自社名を生産者の欄に記入して申請することができます。

これには業務委託先との契約や、生産指示書、工程フロー図、仕様書、材料選定・支給・指示にかかわる書面などの書類をあらかじめ、日本商工会議所経由で経済産業省へ送る必要があります。

ある物品の生産において、自社がみなし生産者に該当するかどうかはケースごとに判断されます。したがって、申請する物品ごとに日本商工会議所に事前に相談する必要があります。