関税を安くする方法

関税の多くは、従価税とよばれる「物の価格に税率を掛ける方式」をとっており、以下の計算式で算出されます。
(関税の計算方法についてはこちらの記事でも紹介しました

課税評価額(輸入しようとしている物の価格)x 関税率 = 関税額

課税評価額は、日本の場合、CIF価格が採用されているので、諸外国から日本の港・空港までの輸送費と、保険費用を正味価格に足した金額になります。

これに決められた関税率をかけて算出された関税額をCIF価格に加算し、その値に消費税率をかけます。つまり、日本に輸入する場合は、この関税と消費税(含む地方消費税)がかかります。

関税率を安くするには、課税評価額が安くなるか、関税率が下がるか、その両方かのいずれかとなります。

課税評価額については、本来の価格から意図的に高くしたり安くしたりすることは法律で禁じられています。関税率10%のもので、100万円の課税評価額のものならば10万円の関税となりますが、輸出側と示し合わせて、この課税評価額を10円とすれば、関税がわずか1円になってしまうからです。

物品の種類が多様化しているため、相場がよくわからないようなものもありますが、税関でもプライスレンジ表と呼ばれる相場表を持っていますので、これに照らして高すぎたり安すぎたりする場合は確認があります。

課税評価額を再検討する方法

製品につけられているHSコードは本当に正しいか

課税評価額の見直しを合法的に行う方法としては、HSコードの見直しがあります。関税は、物品に対してかけられますが、その物品が何かというのは、HSコード表に分類されて特定されています。これはタリフラインともいいますが、日本では9031の品目に分けられており、あらゆる物はこの中のどこかに分類され、それぞれに設定された関税率をかけられます。このHSコードは各国に荷物が入り、関税の納税手続きに入る前に、申告を行う際に付与されます。関税はこの輸入申告のときのHSコードに従って決められます。

HSコードの割り振りは、荷主(輸出・輸入の依頼者)から製品の情報を聞いて、通関業者・輸送業者が行っていますが、これが正しくないこともあります。本来、一つの品目には必ず一つのHSコードが特定されることになりますが、複数のHSコードに該当するようなケースも多く、製品に対する理解や知識がないと判断を誤るケースがあります。

関税のかかる「部分」を明確にする

通関業者は、入手した情報と、HSコードの決め方に関するルールに従っているため、厳密には誤りとはいえないのですが、より詳細に製品についての情報があれば、別のHSコードになったかもしれない、ということも少なくありません。特に工業製品のようなもので、明確な品目名がタリフラインに存在しないようなものは、要確認です。このHSコードが変わると、関税率も大きく変わることがあります。

また、ソフトウェアの関税のように、データの価値(売価)ではなく、記録メディアの価格と記録に要した費用に対して関税がかかるような国の場合、例えばデータの入っているメディアの価格と、ソフトウェアデータの価格とを分離して表記することで、メディアについてのみ関税が掛けられることがあります。

こうした場合、ソフトウェアの場合は、売価が高額であっても、そのほとんどはデータ(情報成果物)であって、メディアは数十円から数百円程度ということもあり、関税額が大きく変わります。

少額のものには関税がかからない制度

また少額のものについての限定とはなりますが、課税評価額1万円未満のものについては、関税がかかりませんので、一度にたくさん購入せずに、定期的に少額ずつで購入すると言う方法もあります。

業務用ではなく、個人用のものであれば、個人輸入での関税の扱いとなります。この場合、課税評価額は60%に下げられる特例がありますので、約16666円までは関税がかかりません。但し、物品の種類によっては例外もありますので、事前に確認が必要です。

関税率を再検討する方法

日本を含め、多くの国ではWTO協定税率と呼ばれる関税率が採用されています(WTO加盟国間の貿易で適用)。これはMFN税率ともいい、貿易協定などがないのに、一方的にある国からの物品を差別的に扱うことを禁止しているWTOのルールに則ったものです。

経済連携協定(EPA)、自由貿易協定(FTA)、特恵貿易協定(PTA)を利用した関税率を適用

多くの品目での関税率となるこの協定税率を下げるには、日本の場合は、このサイトでの主要テーマとなっている経済連携協定を利用する方法があります。これはWTOとは別に、「二国間や多国間だけで特定の品目ごと(タリフラインごと)に関税を減免しましょう」という取り決めであり、協定に参加している国の「原産品」についてのみ適用される特殊な関税率を使うことができます。日本への輸入に適用可能な経済連携協定を締結している国の一覧は日本のEPAのページで紹介しています。

GSP特恵税率やLDC特恵税率を利用する

また、EPA税率(経済連携協定を利用した関税率)のほかに、GSPと呼ばれる仕組みも存在します。これは、開発途上国から日本に物品を輸入する場合に、特別に安い関税や関税の免除を行うというもので、GSP税率が適用されます。開発途上国の中でも特に貧困等で経済発展が進んでいない国に対しては、LDC特恵税率を適用することができます。いずれも、form A(フォームA)とも呼ばれる専用の特恵原産地証明書が必要です。この発行には、この開発途上国の原産品であるという基準を満たす必要があり、税率や免税の範囲も品目とGSP、LDCそれぞれで変わります。