自動車産業はその規模の大きさから関わってくる産業・企業も多くなるため、世界でもそれにまつわる制度は注目度が必然的に高くなります。
日本の基幹産業ともいえる自動車産業は国内でおおよそ20万社が関わっているともされますが、諸外国から日本に完成車を輸入する場合、関税はゼロとなります。
自動車のHSコードは第87類になりますが、この中でさらに個別に細分化され、関税率が設定されていきます。HSコードは関税分類番号でもありますが、6ケタまでは世界共通であり、それ以降の細かい分類は国ごとに定めてよいことになっています。
乗用車については、8703項の「乗用自動車その他の自動車(ステーションワゴン及びレーシングカーを含み、主として人員の輸送用に設計したもの」という分類に入り、運転手を含んで10人以上乗れる車については8702項となります。
8703項の細かい分類を見ていくと、以下のようになります。シリンダ容積とは排気量のことです。
自動車の関税を決めるための分類番号(HSコード)
HSコード | 内容 |
---|---|
8703.10 | 雪上走行用に特に設計した車両及びゴルフカーその他これに類する車両 |
ピストン式火花点火内燃機関(往復動機関に限る。)を搭載したもの | |
8703.21 | シリンダー容積が1,000立方センチメートル以下のもの |
8703.22 | シリンダー容積が1,000立方センチメートルを超え1,500立方センチメートル以下のもの |
8703.23 | シリンダー容積が1,500立方センチメートルを超え3,000立方センチメートル以下のもの |
8703.24 | シリンダー容積が3,000立方センチメートルを超えるもの |
ピストン式圧縮点火内燃機関(ディーゼルエンジン及びセミディーゼルエンジン)を搭載したもの | |
8703.31 | シリンダー容積が1,500立方センチメートル以下のもの |
8703.32 | シリンダー容積が1,500立方センチメートルを超え2,500立方センチメートル以下のもの |
8703.33 | シリンダー容積が2,500立方センチメートルを超えるもの |
8703.90 | その他のもの |
トヨタ・カローラ(初代カローラアクシオ)を例として、排気量1.8リットルとすると、上記の8703.23のHSコードとなります。
国ごとにこのクラスの排気量を持つ自動車、乗用車の関税(一般的なWTO協定税率、MFN税率)を見ていくと次のとおりです。
世界における自動車の関税
国名 | 関税率(MFN税率) |
---|---|
日本 | 0% |
アメリカ | 2.5%(室内容積やシリンダー気筒数、車高によってさらに分類が変わる) |
EU(加盟国共通) | 10%(キャンピングカーと、それ以外、中古車の三分類に分けられる) |
韓国 | 8%(2000ccを境界線とし、新車、中古車で分類が変わる) |
中国 | 25% |
タイ | 80% |
インドネシア | 40% |
インド | 125% |
アラブ首長国連邦 | 5% |
マレーシア | 10% |
オーストラリア | 5% |
ブラジル | 35% |
メキシコ | 20% |
ベトナム | 67% |
フィリピン | 30% |
シンガポール | 0% |
ロシア | 25%(但し、排気量1ccあたり1.45EURで計算した場合の額を下回らないこと) |
エジプト | 135% |
サウジアラビア | 5% |
トルコ | 10% |
ケニア | 25% |
南アフリカ共和国 | 25% |
関税の計算は従価税方式の場合は、CIF価格やFOB価格に関税率をかけて算出されます。たとえば米国ではFOBが関税評価額となり、日本ではCIFといった具合です。世界的には輸入関税にはCIF価格を用いることが多いといえます。
なお、上記は関税のみで、一般的には多くの国で輸入通関の際には、関税以外の諸税も徴収されます。日本では関税と消費税のみですが、複数の税金を課すことは珍しくありません。関税が安くとも、諸税などで障壁をつくり、自国への乗用車の流入を制限している国は多くあります。
反対に、FTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)を結んでいる国同士の貿易で、この品目が除外品に指定されていない場合は、MFN税率よりも安い税率が適用される可能性がありいます。