CIF価格

CIF価格とは、貿易条件の一つであるCIF条件による価格(売価)といった意味合いで使われる用語です。例えば、日本から米国にある企業へシアトル経由で物品を販売する場合で、CIF Seattleという売価条件を提示した場合、その売り手となる企業の工場から製品が出荷され、米国のシアトル港までの輸送費と保険費用が製品そのものの価格のほかに加算されたものがCIF価格ということになります。

CIFは国際商業会議所(ICC)によって制定されたインコタームズと呼ばれる貿易条件のひとつで、これは国境を越える取引でも揉め事が起きないよう、統一した解釈とルールを貿易条件に与えるために作られた条件でもあります。

具体的には、CIFといった場合、費用は輸出者と輸入者のどちらがどこまでを負担し、貨物の危険負担をどちらがどこまで見るかということを定めています。危険負担とは、貨物が破損したり、紛失したりした場合、どちらがその費用を負担するのか、ということです。通常は、貿易には保険をかけますので、その保険費用の支払い手続きをどちらがやるのかということでもあります。

なお、少しわかりにくいですが、貨物の危険負担と貨物の所有権とはまた別の話となります。

日本をはじめ、CIF価格は関税の計算においては関税評価額の基準としてもよく使われます。

関税の額を算出する方法としては、下記の式が成り立ちます。

「CIF価格+加算要素」× 関税率=関税額

なお、貨物に何らかの損害があったときにどちらが責を負うのかを決めた「危険負担」については、CIFの場合もFOBの場合も違いはなく、どちらも輸出港の船に積み込むまでが輸出者(売り手)がみることになります。他のインコタームズではこの危険負担と費用負担の範囲が一致するものがほとんどですが、CIFだけは違います。



評価申告とは

関税は、「課税評価額」に「関税率」をかけて算出されるものが最も多いケースですが、関税の計算間違いや誤解のほとんどがこの「課税評価額」に何を含めるのかという理解の不足が原因ともいわれています。

貿易において、もっともシンプルなケースを考えてみると、売り手(海外)から買い手(日本)への価格に、輸送費と保険費用を足したCIF価格に関税率をかける、というものになります。

ここで、例えば買い手があらかじめ、売り手に無償で金型を支給したり、部品の一部を無償で供給していた場合はどうなるでしょうか。それを使って作った製品を日本に輸入する場合、無償で支給した金型代金や部品の一部を、関税評価額に含めねばならない決まりになっています。

ところが、関税評価額はインボイスに記載されている金額に基づいてCIF価格を算出することになりますが、このインボイス価格だけでは、こうした無償で支給した分を課税評価額に含めることができません。

こうしたときに用いるのが評価申告です。これによって日本に輸入する際の本来の課税額を申告することになります。本来の課税額を正しく評価するための申告書ということになります。



TPPの重要5品目の関税率

TPP交渉において自民党が聖域として、関税率の低減を行わないとしている品目を重要5品目として挙げており、具体的にはコメ、麦(小麦)、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖・粗糖とその作物(サトウキビ等)の5つの品目となります。これら5品目での日本の関税は下表の通りになっています。関税率は、実際にはHSコードの4桁分類である「項」や6ケタの「号」だけでは決まらず、タリフラインと呼ばれる単位までブレイクダウンする必要があり、その場合、重要5品目というのは合計で、586品目になります。日本には9018品目のタリフラインがあるため、関税率もこの数だけ設定することが可能です。

日本の重要5品目の関税率

日本の重要5品目の関税
品目名 HSコード 関税のかけ方 関税率(関税額)
米(コメ) 1006項 従量税に調整金を加算する方式 kgあたり341円(WTO協定税率49円/kg+調整金292円/kg)
麦(小麦) 1001項 日本政府が行う国家貿易にて輸入し、政府が製粉会社に売却。実質、民間での輸入は不可能。従量税のもの、従価税のものがある。 種類により、WTO協定税率55円/kgもしくは20%
牛肉・豚肉 1602項 牛肉は従価税、豚肉は金額により差額関税、従価税、従量税のいずれか。 牛肉は38.5%の従価税。輸入量が急増した場合は、50%まで引き上げる緊急措置が可能。豚肉の差額関税は世界でも類を見ない特殊な関税。批判も多い。分岐点となる基準価格を定め、輸入価格がそれよりも高い場合、低い場合とで税のかけ方を変える方法だが、輸入価格を意図的に調整することで、実際の相場とは関係なく、高関税が発生しないようにすることができる。
乳製品 0401、0402、0403、0404、0405、0406 種類により関税割当制度が適用されており、国が定めた量を超えると高関税となる。バターの場合、一定の量までは国家貿易で輸入。カレントアクセス輸入とも言われる枠内の国家貿易が主体。 使用目的が限定されていないものや数量限度を超えているものについては、従価税と従量税の混合。例:ヨーグルト29.8%+915円/kg、牛乳21.3%+635円/kg
バター:国家貿易(枠内):従価税35%に調整金を加算する方式民間(枠外):従価税+従量税(29.8%+1,159円/kg)
使用目的限定の民間:従価税
砂糖、粗糖(サトウキビや甜菜から抽出)とその原料作物 1701項、1212項 WTO協定税率では甘味資源作物については無税となっているが、「砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律」により、圧倒的に高価になってしまう国産糖の生産者を守る為、外国産糖を輸入する精製糖企業等から調整金を徴収しつつ、国内農家や国産製糖企業に対しては、交付金を支給(製造コストと販売価格との差額を支給)。外国産、国産との価格差を無くしている。実質、この調整金が関税のかわりとなっている。 粗糖(71.80円/kg)や精製糖(103.10円/kg)には従量税が課せられている。

重要5品目の関税率についての参考記事・サイト



日本の関税収入

税関で徴収されている日本への輸入品に対してかけられる関税と消費税の合計は毎年おおよそ5兆円となります。日本の国税収入が43兆円(平成25年度)の現状から、決して少なくない金額が輸入品による間接税から入っていることが分かります。

輸入の際の徴収される関税よりも大きい消費税

ただし、輸入品に対しての税額である5兆円のうちの、関税によるもの自体は年間で約8742億円程度となるため、ほとんどが消費税ということになります。日本は一部の農畜産物には高関税率を課していますが、ほとんどの工業製品は無税かそれに近い低税率にしており、先進国の中でも農産物を除けばかなり関税の低減が進んでいる国です。日本の場合、輸入品に対しては関税よりも消費税のほうが大きくなっているのは、こうした事情によるものです(無関税品であっても、一部の例外を除き、すべての輸入品に消費税はかかってきます)。

ちなみに、たばこ税による歳入が年間約9900億円、酒税が約1兆3000億円となっており、純粋に関税収入だけを見ると、これらよりも少なくなっています。

消費税は全体で年間約10兆円6490億円ほどになりますので、このうちの多くが輸入の際にかけられている消費税ということにもなります。

関税収入の統計と推移

昭和25年から平成25年までの関税収入の推移と統計については、財務省のシンクタンクである財務総合政策研究所の財政金融統計月報のページにてExcelファイルでダウンロード・閲覧できます。

一般統計の項目内にある3番目の「国税の税目別収入の累年比較」のなかに、直接税、間接税の関税収入の集計も入っています。

また、国税の税目別の収入において、国際間でどのような違いがあるのかも「国税の税目別収入の国際比較」で見ることができます。ここでは、日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリアの先進諸国の比較を見ることができますが、関税収入に限っていえば、日本は国税収入全体に対してこの関税が占める割合が1.9%、アメリカは2.1%、イギリスは0.7%、ドイツは0.9%、フランスは0.1%となっています。



EUにおけるGSP

GSPとは何か

GSPとは、開発途上国からの輸入物品を無税にしたり低税率にしたりすることで、経済的に貧しい国の発展を支援する為の仕組みの一つです。Generalized System of Preferencesの頭文字をとった名称です。日本語では「一般特恵関税制度」と呼ばれます。先進国の多くでは、同様のスキームを持っていますが、EUは特にこうした途上国支援のスキームに力を入れています。2014年1月1日から新たなGSPが適用されています。EUのGSPは、EU加盟国すべてに対して有効です。

巨大な制度であり、法規や関連公式文書が多い点、変更が多い点からも紐解くのに時間と労力のかかる制度です。また、文書は欧州議会の公式サイトにて公開されますが、古い文書から改訂された文書へ必ずしもリンクがされているわけではない為、旧版と最新のものとを毎回照らし合わせる必要があります。

直接的には輸入者である先進国側の企業の関税費用が大きく下がるか、ゼロになるため、自由貿易協定や経済連携協定と並び、関税低減スキームの一つとして企業で活用されています。

WTO(世界貿易機関)
が加盟国に課しているルールの一つに、関税率について国ごとに差別的な待遇をしてはならない(ある国に対して適用している最も安い関税率を他のWTO加盟国に対しても適用する、最恵国待遇【MFN税率の適用】)、というものがありますが、FTA協定と同様、GSPもこの最恵国待遇原則の例外扱いになっています。

GSPを用いる場合も、対象国での品目ごとの原産地規則を満たしており、かつGSP専用の原産地証明書が必要になります。

多くの国で、GSPでは自由貿易協定や経済連携協定と似たルールも用いられている為、同様のものと考えられがちですが、「貿易協定」とは異なり、先進国側で認定した国に対しての免税や関税の優遇を一方的に行うものになります。したがって、本来的には自由貿易協定とは異なるスキームですが、関税の減免効果を持つ仕組みであるため、同様の使われ方をしています。

なお、GSPの対象となっている国がEUとFTA、EPAを締結すると、2年間は移行期間としてGSPを使うことができますが、それ以降はその締結した協定を用いた関税減免を行うことになります。

なお、実際の適用においてはEU側が公開しているルールの他に、一般にform A、フォームAと呼ばれるGSP用の原産地証明書を発行する輸出国側にも、国ごとに発行をめぐるルールがあります。原産性を証明するための証拠書類(エビデンス)についても、どのようなものをどのような形で保存しておくべきかは、現地で原産地証明書を発行する機関へ確認する必要があります。

EUにおけるGSPの特徴

EUのGSPを構成する三つの制度

EUでは現在3種類のGSP制度を持っており、輸出元に応じて使い分けることになります。これらすべてがGSPであり、この3つはGSPを構成する要素とも言えます。

1.標準のGSP

タリフライン全品目の66%で関税の減免。物品ごとにセンシティブ品目(S)と非センシティブ品目(NS)を設定しており、NS品は原則無税、S品には一定の関税譲許を行うというものです。

2.GSP+(GSPプラス)

標準のGSPと同じ品目についてさらなる関税の減免を行う仕組みです。

GSPを構成する制度の一部で、アルメニア、ボリビア、カーポ・ベルデ、コスタリカ、エクアドル、グルジア、モンゴル、パラグアイ、パキスタン、ペルーの10ヵ国に対し、より低い関税率の適用、卒業条項の適用対象外などの特典を設けた新制度となります。2014年1月1日から適用され、EUへの貿易依存度が高い、輸入実績等、特定の要件のもと、選ばれます。

3.EBA制度(Everything But Arms)

タリフライン全品目の99%について関税を無税、輸入割当の対象外に指定。
これは、開発途上国のなかでも特に貧しい国となる後発開発途上国(LDC)を対象としたもので、武器以外すべての物品につき、無税と、輸入割当の対象外とするという関税面で破格の待遇を行うものです。

2014年1月1日から、より強化されたEBAが有効となっていますが、受益者となるLDC(後発開発途上国)が限定される形となりました。

EUのGSPで定義されているLDCに該当する国は国連による為、2014年1月時点で49カ国となり、経済的にここから外れた場合はこのEBA制度によるLDC特恵税率(免税)が適用できなくなりますが、EUでは移行期間として3年間はEBAのフレームを使えるようにしています。

日本企業、日系企業にも関係してくるアジア圏のLDCとしては、ラオス、カンボジア、ミャンマー(協議中)、バングラデッシュ等があります。

EBAの受益者は誰か(欧州議会公式)

EUのGSP制度の対象となる国

以前は177カ国が対象となっていましたが、2014年1月1日からは、標準のGSPで90カ国、GSP+で10カ国、EBAで49カ国となります。

なお、標準のGSPというのはEUでいうところのstandard GSPになりますが、EBAの49カ国も含むカウントとなるため、厳密には41カ国ということになります。

EUにおけるGSP対象国(2014年1月1日~)
国名 英文表記 適用されるGSPの種類
アフガニスタン Afghanistan EBA
アンゴラ Angola EBA
アルメニア Armenia GSP+
アゼルバイジャン Azerbaijan GSP(2014年2月22日迄以降MFN)
バングラデッシュ Bangladesh EBA
ベニン Benin EBA
ブータン Bhutan EBA
ボリビア Bolivia GSP+
ブルキナファソ Burkina Faso EBA
ミャンマー Myanmar EBA
ブルンジ Burundi EBA
カンボジア Cambodia EBA
カーボベルデ Cape Verde GSP+
中央アフリカ Central African Republic EBA
チャド Chad EBA
中国 China GSP(品目により制限有)
コモロ諸島 Comoros Islands EBA
コンゴ共和国 Congo GSP
コンゴ民主共和国(旧ザイール) Congo (Democratic Republic) EBA
クック諸島 Cook Islands GSP
コスタリカ Costa Rica GSP+
ジブチ Djibouti EBA
東ティモール East Timor EBA
エクアドル Ecuador GSP+
赤道ギニア Equatorial Guinea EBA
エリトリア Eritrea EBA
エチオピア Ethiopia EBA
ミクロネシア連邦 Federal States of Micronesia GSP
ガンビア Gambia EBA
グルジア Georgia GSP+
ガーナ Ghana EPA
グレナダ Grenada EPA
ギニア Guinea EBA
ギニアビサウ Guinea-Bissau EBA
ガイアナ Guyana EPA
ハイチ Haiti EBA
インド India GSP(制限有)
インドネシア Indonesia GSP(制限有)
イラン Iran GSP(但し2014年2月22日迄以降はMFN)
イラク Iraq GSP
ケニア Kenya EPA
キリバス Kiribati EBA
キルギスタン Kyrgyzstan GSP
ラオス Laos EBA
レソト Lesotho EBA
リベリア Liberia EBA
マダガスカル Madagascar EBA
マラウイ Malawi EBA
モルディブ Maldives GSP
マリ Mali EBA
マーシャル諸島 Marshall Islands GSP
モーリタニア Mauritania EBA
モンゴル Mongolia GSP+
モザンビーク Mozambique EBA
ナウル Nauru GSP
ネパール Nepal EBA
ニジェール Niger EBA
ナイジェリア Nigeria GSP(制限有)
ニウエ Niue Island GSP
パキスタン Pakistan GSP+
パラグアイ Paraguay GSP+
ペルー Peru GSP+
フィリピン Philippines GSP
ルワンダ Rwanda EBA
サモア Samoa EBA
サントメ・プリンシペ Sao Tome & Principe EBA
セネガル Senegal EBA
シエラレオネ Sierra Leone EBA
ソロモン諸島 Solomon Islands EBA
ソマリア Somalia EBA
スリランカ Sri Lanka GSP
スーダン Sudan EBA
シリア Syria GSP
タンザニア Tanzania EBA
タイ Thailand GSP(制限有)
トンガ Tonga GSP
トルクメニスタン Turkmenistan GSP
ツバル Tuvalu EBA
ウガンダ Uganda EBA
ウクライナ Ukraine GSP(制限有)
ウズベキスタン Uzbekistan GSP
バヌアツ Vanuatu EBA
ベトナム Vietnam GSP(制限有)
イエメン Yemen EBA
ザンビア Zambia EBA
ジンバブエ Zimbabwe EPA

欧州議会によるGSPの適用方法

GSP-ユーザーガイド-掲載箇所(欧州議会)

3年ごとに見直しが行われていたが、10年に変更となっています。対象国から外れても、移行期間として、最低1年は設けるルールです。

対象国からの除外は、世銀による分類で、high income かupper middle incomeが3年連続で続いた場合となります。また、セーフガード等の発動要件や手順を明確にしています。

EUのGSP適用品目

通常のGSPでは、品目を非センシティブ(non-sensitive)とセンシティブ(sensitive)の二つに分け、前者は無税、後者については一定の関税率削減を行っています。

国ごとに適用対象外となる品目も定めています。(下記、卒業規定参照)

原産地規則について

EUのGSP原産地規則ガイド(JETRO日本語訳、2012年5月)

GSP原産地規則に関するガイド(欧州議会)

ほとんどの品目は、関税分類番号変更基準か、付加価値基準のどちらかを満たせばよいというものです。

ただし、EU固有のルールとして、最小限度を超える加工がなされていること、との条件付です。

付加価値基準

付加価値基準を使う場合、トレーシングと呼ばれる特殊ルールが適用されます。これは、ある部品を「原産品」とした場合でも、その中に含まれる非原産材料は別途計算する、というものです。

こうした計算方法に関する特殊なルールには、ロールアップロールダウン等がありますが、これらが一定の原産品割合(非原産品割合)に達すれば、残りの部分の特定・計算が不要になるのに比べ、トレーシングが使われている場合は、非原産品、原産品のすべての明細がないと算出ができません。

1次サプライヤーだけでなく、部品を供給する2次サプライヤー、その部品を構成する部品を供給する3次サプライヤー、その材料を供給するメーカーといった具合に、工業製品の多くの供給関係は多層構造化しています。

この付加価値基準で計算を行う場合、自社製品を構成する部品のメーカーに、それが原産品であるstatement(宣誓文)をもらうだけでなく、その部品内に含まれている非原産の割合がわからないと、計算ができないことになります。

関税分類番号変更基準

付加価値基準のかわりに使うこともできる関税分類番号変更基準は項変更(上4桁)となっているため、号変更(上6桁)基準に比べてややハードルは上がっているものの、輸出品を構成する価格の中の非原産部分のコストをトレースし、エビデンスを集めることに比べればハードルは低くなります。

その他、EUのGSPにおけるルール

EUのGSPには、自由貿易協定や経済連携協定ではあまり見られないタイプのルールもあります。手続きは必要なものの、「累積」についてかなり弾力的なルールを採用しています。

地域累積

いくつかの地域グループが設けられ、例えば、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムのグループ内で累積が使えます。例:ブルネイで1工程→インドネシア2工程→ベトナム仕上げ工程の場合、すべて原産国での加工として合算できる。

拡張累積

輸出国とFTAを締結している国の原材料を使ったり、加工を行った場合も、原産品扱いにすることができる。(ただし、別途申請が必要)。EUとのFTA締結国も同様(但し同意国のみ)。

許容限度

デミニマス規定のことで、品目にもよるが、例えばEXW価格の15%までの部材であれば、部材と完成品が同じHSコードであっても加工がなされたとみなせる(関税分類番号変更基準が成立する)

卒業規定(graduation)

卒業条項とも呼ばれます。品目別卒業と国別卒業の2パターンがあり、品目別は競争力が出てきた品目をsectionごとに除外扱いするもので(ある国からの特定の品目だけ適用しないようにする)、国別はその国自体をGSPの適用対象外にするものです。

ある品目を卒業させるかどうか、はsectionごとに決められます。これは、CNコード(EUのHSコード)ごとに近いものを大きな括りにまとめたものです。

EUのGSPで適用されない品目(国別:中国、コスタリカ、エクアドル、インド、インドネシア、ナイジェリア、ウクライナ、タイ)

日本、EU、米国におけるGSPの卒業規定の違い(JETRO)

GSPのアジア各国への適用で日米EUに差異-新・新興国への進出とGSPの活用(1)JETRO

EUのGSPで使う原産地証明書の有効期間

EUでのGSP利用の為のform A(原産地証明書)は発行から10ヶ月の間が有効期間となります。

エビデンスの保存期間

計算や申請に用いた帳票、インボイス等の書類は3年間は保存しておく義務があります。

代理人の選任

代理人にかわりに発行してもらうことが可能です。(但し、罰金等の責任は輸出者にあり)

発給機関について

form Aの発行は、輸出側の税関や商工会議所などの指定された機関となります。国によって管轄が異なりますので、個別に確認が必要です。一般的に、原産地証明書には複数の種類がありますが、種類ごとに発給機関は異なります。

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互恵関税率

互恵関税率は英語ではRTR、The Reciprocal Tariff Rateともいいます。原産地証明書の名称からフォームE(form E)とも呼ばれる中国とASEAN間で締結されているFTAであるACFTAで見られる関税率で、端的に言えば、自国側で関税を大幅に下げる約束をしている品目であっても、相手側で関税を下げないなどの措置がとられていたり、低減の約束をしていなかったりする場合、タリフスケジュール(関税をどのようなスケジュールで低減するかを書いた表)に記載されている自国側の安い関税率を適用しなくてもよいという規定です。

実務上、すべての交渉項目で妥結に至らなくとも(特に交渉が難航しそうな物品などについて)、こうした互恵関税率を設けることで、双方で主張する低減スケジュールが異なるなどの意見の不一致があっても、すぐにでも運用開始が可能となります。

同様に、枠組み協定や暫定協定などもすべての交渉内容で合意がなくとも、合意ができた部分から運用していくという実利を取った仕組みです。



EU加盟国

EU加盟国は、2013年7月にクロアチアが加盟したことで、現在、28の国になります。

  • ベルギー
  • ブルガリア
  • チェコ
  • デンマーク
  • ドイツ
  • エストニア
  • アイルランド
  • ギリシャ
  • スペイン
  • フランス
  • クロアチア
  • イタリア
  • キプロス
  • ラトビア
  • リトアニア
  • ルクセンブルク
  • ハンガリー
  • マルタ
  • オランダ
  • オーストリア
  • ポーランド
  • ポルトガル
  • ルーマニア
  • スロベニア
  • スロバキア
  • フィンランド
  • スウェーデン
  • 英国

加盟国間の貿易については、関税がかかりません。また、EU域外の国に対しては共通の関税率を設定している関税同盟の性質も持ちます。例えば、フランスが日本に対して課しているある物品の関税率は、ドイツもオーストリアもポーランドも同じ関税率を日本に課すことになります。この共通関税率のことを、TARICとも呼びます。

また、関税額や関税の適用に関するルールについてもEU加盟国では統一して運用している為、通関行政についても、統一化されています。例えば、日本からEU圏内に物品を送る場合、フランスで通関しても、ドイツで通関しても、一旦EU加盟国で通関すれば、域内で物品は自由に動かすことができるようになります。

ただし、各国の国内法も存在しているため、たとえば関税法違反に対する罰則は各国で異なる等、課題も残ります。また、実際のところ、通関行政が同じといっても、「通関のしやすさ」が異なっていたり、ある物品に対する判断(関税を決める上での関税分類番号の決定、HSコードに相当するCNコードの特定など)が国によって異なる結果になることは珍しくありません。



季節関税

日本では従価税方式のものですが、季節によって関税率そのものが変わるタイプの関税です。具体的には日付が指定されており、いつからいつまでは関税率が何十%といった課税方式がとられています。

季節によって国内の流通量が違うような農産物で、かつ国内の業者を保護する必要がある場合、国内が品薄になる時期だけ、低関税率にし、国内に品物が多く出だす時期に高関税率にすることで、生産者保護と消費者保護を同時に行おうとするものです。

但し、日付は法令で定める為、天候的な理由でも流通量が変わる物品の場合、税率に大きな差があると、市場の流通量とかけ離れてしまう可能性もありえます。
例えば、日本ではバナナ(生鮮品)の関税率を見ると、毎年4月1日から同年9月30日までは20%の関税率(MFN税率)、毎年10月1日から翌年3月31日までに輸入されるものは25%の関税率(MFN税率)となっています。



スライド関税

物品の国際的な「相場」によって、関税を上げ下げするのがスライド関税と呼ばれる課税方式です。輸入時の価格が高騰している場合は、輸入関税を無税にして購入者側の負担軽減、国内に物品を入れやすいようにし、逆に国際相場が低価格となっているような場合は、通常の関税をかけるというような方法となります。

関税割当制度
ほどに国内市場へ入る物品を直接コントロールするものではありませんが、相場の上げ下げが大きいようなもので、かつ通常の関税が高いのであれば、それなりに流通量にも影響を及ぼしますが、流通量そのものの制御というよりは、購入者保護の色合いの強いものといえます。

このスライド関税を採用している精製銅の塊と銅合金の塊はHSコードで言うと7403項となります。
6ケタの以降の日本固有のHSコード部分にて、「課税価格が1キログラムにつき485円以下」、「課税価格が1キログラムにつき485円を超え500円以下のもの」、「課税価格が1キログラムにつき500円を超えるもの」といった具合に、単価によって関税率が変えてあります。500円を超える場合は無税になっています。



自動車の関税はどれくらいか

自動車産業はその規模の大きさから関わってくる産業・企業も多くなるため、世界でもそれにまつわる制度は注目度が必然的に高くなります。

日本の基幹産業ともいえる自動車産業は国内でおおよそ20万社が関わっているともされますが、諸外国から日本に完成車を輸入する場合、関税はゼロとなります。

自動車のHSコードは第87類になりますが、この中でさらに個別に細分化され、関税率が設定されていきます。HSコードは関税分類番号でもありますが、6ケタまでは世界共通であり、それ以降の細かい分類は国ごとに定めてよいことになっています。

乗用車については、8703項の「乗用自動車その他の自動車(ステーションワゴン及びレーシングカーを含み、主として人員の輸送用に設計したもの」という分類に入り、運転手を含んで10人以上乗れる車については8702項となります。

8703項の細かい分類を見ていくと、以下のようになります。シリンダ容積とは排気量のことです。

自動車の関税を決めるための分類番号(HSコード)

自動車の関税分類番号
HSコード 内容
8703.10 雪上走行用に特に設計した車両及びゴルフカーその他これに類する車両
ピストン式火花点火内燃機関(往復動機関に限る。)を搭載したもの
8703.21 シリンダー容積が1,000立方センチメートル以下のもの
8703.22 シリンダー容積が1,000立方センチメートルを超え1,500立方センチメートル以下のもの
8703.23 シリンダー容積が1,500立方センチメートルを超え3,000立方センチメートル以下のもの
8703.24 シリンダー容積が3,000立方センチメートルを超えるもの
ピストン式圧縮点火内燃機関(ディーゼルエンジン及びセミディーゼルエンジン)を搭載したもの
8703.31 シリンダー容積が1,500立方センチメートル以下のもの
8703.32 シリンダー容積が1,500立方センチメートルを超え2,500立方センチメートル以下のもの
8703.33 シリンダー容積が2,500立方センチメートルを超えるもの
8703.90 その他のもの

トヨタ・カローラ(初代カローラアクシオ)を例として、排気量1.8リットルとすると、上記の8703.23のHSコードとなります。

国ごとにこのクラスの排気量を持つ自動車、乗用車の関税(一般的なWTO協定税率MFN税率)を見ていくと次のとおりです。

世界における自動車の関税

自動車の関税率の国別比較(排気量1800ccの乗用車とした場合)
国名 関税率(MFN税率)
日本 0%
アメリカ 2.5%(室内容積やシリンダー気筒数、車高によってさらに分類が変わる)
EU(加盟国共通) 10%(キャンピングカーと、それ以外、中古車の三分類に分けられる)
韓国 8%(2000ccを境界線とし、新車、中古車で分類が変わる)
中国 25%
タイ 80%
インドネシア 40%
インド 125%
アラブ首長国連邦 5%
マレーシア 10%
オーストラリア 5%
ブラジル 35%
メキシコ 20%
ベトナム 67%
フィリピン 30%
シンガポール 0%
ロシア 25%(但し、排気量1ccあたり1.45EURで計算した場合の額を下回らないこと)
エジプト 135%
サウジアラビア 5%
トルコ 10%
ケニア 25%
南アフリカ共和国 25%

関税の計算は従価税方式の場合は、CIF価格やFOB価格に関税率をかけて算出されます。たとえば米国ではFOBが関税評価額となり、日本ではCIFといった具合です。世界的には輸入関税にはCIF価格を用いることが多いといえます。

なお、上記は関税のみで、一般的には多くの国で輸入通関の際には、関税以外の諸税も徴収されます。日本では関税と消費税のみですが、複数の税金を課すことは珍しくありません。関税が安くとも、諸税などで障壁をつくり、自国への乗用車の流入を制限している国は多くあります。

反対に、FTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)を結んでいる国同士の貿易で、この品目が除外品に指定されていない場合は、MFN税率よりも安い税率が適用される可能性がありいます。